風立ちぬ

最後の学級裁判が終わり 日向たちはただ時間が過ぎるのを待っていた

ある日空を見上げていた日向は 空に何かの物体が飛んでいるのを見た

鳥か？・・いやそれにしては大きすぎる・・あれは・・・・

飛行機？

それは地面に着陸した

日向をはじめ 他のメンバーたちもそれに駆け寄って行く

見るとやはりそれは飛行機だった それを操縦していたのは・・

「左右田！！」

左右田は両手を挙げてガッツポーズをしながら飛び跳ねた

「いやっほーー！！どうだ 見たかよ！！俺は飛んだぜ！！」

「お、お前どうやって！？」

「ああ 実はさ 空港に初期の飛行機の模型があったんだよ それを改良したら 飛べたのさ」

「マジか！？」

「おお 今までちょっとずつ作っていって ようやく今完成したんだ！！」

「すごいですね！驚き木 桃の木 三枝の木です！！」

「なぁ、これなら島から出れるんじゃね？」

「おお！！これなら全員乗れそうだな」

他のメンバーたちも興奮を隠せずに言う

「ふふん、ざっと十人以上は乗れるぜ」

「左右田 お前ってすげえな！！」

「ああ 『リリエンタールの翼』を見てたら思い出したんだよ」

「リリエンタールって？」

「ライト兄弟が飛行機を発明する前に 空を飛んだ人だよ 最後は墜落死しちまったけど 彼の偉業はライト兄弟へ受け継がれて人類は空へ飛び立ったのさ 絶対にあきらめない『信念』と実行に移す『勇気』それがあるからリリエンタールはあんなことができたのさ・・・」

すると突然左右田の目に涙が浮かび 泣き始めた

「左右田・・！？」

「じ、実を言うとよぉ・・俺、怖かったんだ・・本当にこれ飛ぶのか？って・・・それで・・躊躇してるうちに どんどん人数が減っていってよ・・・最初・・俺たちは１６人だった・・・１６人だぜ？・・・それが 今はたったの・・これだけ・・どうなってんだよぉ！？・・・何でこんな・・あの 大嫌いだった狛枝のやつだって・・いなくなっちまったら・・妙に寂しくて・・俺のせいだ！俺がもっと・・早く完成させてれば・・今頃はみんなで・・・」

泣きじゃくる左右田の肩を日向は抱いた

「左右田・・・お前のせいじゃない！！ そして・・こうなったのは誰のせいでもないんだ・・もしかしたら殺されたり、殺したりして消えてたのは自分だったかもしれないんだ・・・誰もが絶望したこの島で 今更責任を追及したってしょうがないじゃないか・・・もうコロシアイは終わったんだ 俺たちはこれからやらなきゃいけないことがあるだろ？卒業試験を受けて卒業し、死んだ奴らの分まで生きるんだ！俺たちに命をくれたあいつらのためにも・・だから 左右田！自分を責めるな！！時折見せるお前のやさしさが俺にも何よりも救いだったんだよ・・・胸を張って前向きに生きて行こうぜ！！みんなも・・絶対に・・・卒業しような！！」

「日向・・あ、ありがとう・・！！」

左右田は号泣しながら感謝した 他のメンバーもうなずき、皆泣いていた

卒業試験は明日 いよいよ最後の試練が始まるのだった・・・

そして 島のある場所では少年が携帯電話で話していた

「ああ 俺だ どうだ？そっちの様子は・・・そうか うん ああ こっちはな どうやら風が逆向きになりやがった しくじったな・・だが 今更消すわけにもいくまい こいつはまた希望ヶ峰を一から洗い直す必要があるな あいつについても・・ああ わかってる 俺たちじゃ手が足りないな じゃあの刑事さんに頼むか 俺に会いたがってるんだろ？会おうじゃないか ちょうどよかった・・ああ またな」

少年は携帯電話を切ると 空を仰いだ

「飛行機が飛んだとしても 無事に出られる保証はないが・・・そういう夢があってもいいよな 俺だって そういうのが嫌いなわけじゃないさ・・むしろ・・俺は好きなほうだよ 好きだからこそ ここまで描く いや 描かなきゃいけないのさ アンケートありがとう まだしばらくは続けたいから 凍結はちょっと待ってくれよな 応援ありがとー！」

言うのをやめると 歌を歌いだした

「白い坂道が 空まで続いていた ゆらゆらかげろうが あの子を包む♪

誰も気づかず ただ一人 あの子は上って行く

何も恐れない そして 舞い上がる♪」

https://www.youtube.com/watch?v=ZI9PF64JTAc