【獣国】灰の予兆【第一次】
【illust/48020114】→【illust/48126650】→【illust/48207467】→イマココ!
とりあえずトアさん【illust/47102663】を振り切るor町から遠ざける方針ですが、どうやら何か天啓を得たのか、サニはカント寺【illust/47798031】が気になる様子。
*マシーさん【illust/47356179】 感じた兎【illust/47278410】
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熱風が頬をなで、火花に触れた毛が時折ちりりと音を立てる。
じとりとした空気を吹き飛ばす旋風のように、二人は燃え盛る街を駆けていた。
この速さなら凄い遠心力が体にかかっているはずなんだろうが、
今隣で汗を流しているこのメカニックの腕に包まれながらだと、不思議なくらいこの高速走行が苦にならない。
だから、今彼女自身が気を回すべきなのは、きっと自分達を狙うあの兎の方だろう。
「マシーさん、あの方は今……」
「分からない。相当飛ばして来たから、そろそろ振り切ったと思うんだけどさ」
前に進む彼女に代わり、後方を見張る目になり、陽炎がゆらめく街を見てふと思う。
…ああ、そういえば理由を聞きそびれてしまったな。なんて。
***
街並みもぬけてそろそろ樹海へ辿り着くだろうか、というころ、ふとマシーは腕に抱えた少女の様子がおかしいことに気が付いた。
何やら難しい顔を、…いや、少し苦しげなくらいの表情を浮かべ、目をぎゅっと瞑っている。
「どうした、怪我でもしたのか」
「……う、」
声に気が付いて、はっと彼女は目を開く。
速さに酔ったのか、怪我して気を失っていたのか、それとも怖かったか。
矢継ぎ早の問いに、彼女はただ首を振るばかりであった。
「じゃあどうしたんだ?少し顔色も悪いみたいだけど」
力なく垂れた耳に、ただごとではないとマシーも察してくれていたらしい。ひとまず傍の木に彼女を下ろすと、隣に座って優しく問い直した。
その気遣いに、申し訳なさそうに少女は顔を伏せて、
「確証はないのですけど、」
ぽそりと、一言、
「大切なものが壊されようとしている、そんな気がして……」
吐き出して、寒くもないのに大きく身震いをした。
「お願いです。少し救助活動が済んだら、お寺に連れて行ってもらえますでしょうか」
森を焼く炎は留まるところを知らず、戦争は何も変わらないまま、ゆっくりと人々を飲み込んでいる。
―――ああ、そういえば、翼を広げ空へと消えた鳥は、今頃どこを舞っているのだろうか。
とりあえずトアさん【illust/47102663】を振り切るor町から遠ざける方針ですが、どうやら何か天啓を得たのか、サニはカント寺【illust/47798031】が気になる様子。
*マシーさん【illust/47356179】 感じた兎【illust/47278410】
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熱風が頬をなで、火花に触れた毛が時折ちりりと音を立てる。
じとりとした空気を吹き飛ばす旋風のように、二人は燃え盛る街を駆けていた。
この速さなら凄い遠心力が体にかかっているはずなんだろうが、
今隣で汗を流しているこのメカニックの腕に包まれながらだと、不思議なくらいこの高速走行が苦にならない。
だから、今彼女自身が気を回すべきなのは、きっと自分達を狙うあの兎の方だろう。
「マシーさん、あの方は今……」
「分からない。相当飛ばして来たから、そろそろ振り切ったと思うんだけどさ」
前に進む彼女に代わり、後方を見張る目になり、陽炎がゆらめく街を見てふと思う。
…ああ、そういえば理由を聞きそびれてしまったな。なんて。
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街並みもぬけてそろそろ樹海へ辿り着くだろうか、というころ、ふとマシーは腕に抱えた少女の様子がおかしいことに気が付いた。
何やら難しい顔を、…いや、少し苦しげなくらいの表情を浮かべ、目をぎゅっと瞑っている。
「どうした、怪我でもしたのか」
「……う、」
声に気が付いて、はっと彼女は目を開く。
速さに酔ったのか、怪我して気を失っていたのか、それとも怖かったか。
矢継ぎ早の問いに、彼女はただ首を振るばかりであった。
「じゃあどうしたんだ?少し顔色も悪いみたいだけど」
力なく垂れた耳に、ただごとではないとマシーも察してくれていたらしい。ひとまず傍の木に彼女を下ろすと、隣に座って優しく問い直した。
その気遣いに、申し訳なさそうに少女は顔を伏せて、
「確証はないのですけど、」
ぽそりと、一言、
「大切なものが壊されようとしている、そんな気がして……」
吐き出して、寒くもないのに大きく身震いをした。
「お願いです。少し救助活動が済んだら、お寺に連れて行ってもらえますでしょうか」
森を焼く炎は留まるところを知らず、戦争は何も変わらないまま、ゆっくりと人々を飲み込んでいる。
―――ああ、そういえば、翼を広げ空へと消えた鳥は、今頃どこを舞っているのだろうか。
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2015-01-21 02:32
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