「私は戦うことしか知らないのよ」

炎が空を焦がし、体のあちこちを損壊した深海棲艦が海面に浮かぶツキジめいた光景の中で、加賀は空母弓「ヤキトリ」の弦を引き絞り実験機を発艦させる。放たれた実験機が、いまだこの惨状の中でわけもわからぬまま混乱する深海棲艦、計四隻を、素早く轟沈させた。　１

「ナムアミダブツ」加賀は呟き、戻ってきた実験機を飛行甲板に着艦させる。まさに一方的殺戮……！　帝国海軍の闇に恐るべき艦娘あり。サイバー防人、あるいはテクノ防人と呼ばれるそれだ。新型の兵装、実験機、時には毒素や病原菌を深海棲艦相手に実戦にて実験する戦士。　２

当然ながら、使い物になるかわからない新兵器を実戦で用いる以上、その危険性は計り知れない。そのため、サキモリストになれるのは他の艦娘を圧して余りあるワザマエの者だけ。それが今の加賀の任務である。　３

「ドーモ、シルバーケバブです。実験機『モルガン』のポテンシャル……凄まじいの一言ですね。もっとも製造費で予算が吹っ飛ぶ点に目を瞑ればの話ですが。大事な予算でふざけたものを作るなと伝えてください」加賀は無線でうんざりと実験機の報告をした。　４

「どれだけ強力な艦載機でも数が用意出来なければ深海棲艦には勝て無いわ。イクサバに必要なのは、一人の英雄ではなく百人の戦士」加賀はぼやき、ダルマの意匠が施された叺を腰から抜き、煙管を取り出した。「そんなに高いんですか？」加賀の妖精が彼女に問う。　５

「ええ高いわ。費用対効果がまるでダメ。しかも製造は優秀な技術者じゃないと出来ない、製造にかかる時間も長い、整備出来るのも熟練の整備員だけ。仮に予算があっても量産不可能な上に運用も難しい」「いけませんね」「大概にして欲しいものだわ」　６

加賀は片手でマッチを擦り、煙管を吸うと、しばし物思いに沈んだ。彼女の脳裏に赤城の笑顔がおぼろげに揺らぐ。「心配しないで、赤城＝サン。私は片翼だけでも飛んでみせるわ。どこまでも飛んでみせる」　７

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◆艦◆
ニンジャ型録
【シルバーケバブ】
赤城とともに轟沈し、深海棲艦化するもドロップ現象により復活した加賀。憑依したニンジャソウルの影響で口調がややおかしい。また、何故か部屋の片付けも出来なくなった。
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