「１０００万の命の光を浴びる」

宇宙世紀0079年1月3日、ジオン公国は地球連邦政府に対して突如宣戦を布告する。
ジオン独立戦争、後に一年戦争と呼ばれる戦争である。

ジオン軍の艦隊及びモビルスーツ部隊は、各サイドに駐留する地球連邦軍艦隊を強襲。地球連邦側に立ったサイド1、2、4の各スペースコロニーに対してジオン軍は核兵器及び致死性の毒ガスを使った大量破壊兵器による無差別攻撃を行い、何十億もの一般市民を殺戮した。
ジオン軍の新型兵器であるＭＳ、ザクの性能は地球連邦の旧態依然とした兵器群を圧倒し、同時に大量破壊兵器を効率よく運用可能なＭＳの力は凄まじかった。

この1月10日までに行われた戦い及び殺戮行為は特に一週間戦争と呼ばれ、全人類110億人のうち28億人が死亡した。

スペースコロニーは全長32キロ、直径6キロの円筒の中に1000万人を収容する人工の宇宙都市であり、ザクの放った核弾頭の攻撃でコロニーは崩壊、1000万の命が一瞬にして消えていった。

写真は、核攻撃によって爆発するコロニーの光を浴びるザクＩ、一つ目の単眼が光っている。

というわけで開戦当初の一週間戦争をイメージしたザクＩのイラストです。

一般市民、１０００万人を殺害するザクに乗るジオン兵の心境を、このイラストを描いているときにいろいろ考えたんですが・・・私にはまったく想像できませんでした。

そこで過去の人類の戦争の歴史、現在進行形で行われている戦争や問題となっていることを下地に考察してみました。

『笑う者もいた。泣く者もいた。ほとんどの者は黙り込んだ。
ヒンドゥー教の聖典『バガヴァッド・ギーター』の一節を思い出した。
ヴィシュヌが王子に自らの任務を完遂すべく説得するために４本腕の姿を見せ、こう言う。
「今や我は死なり、世界を破壊する者なり」
多少なりとも私たち全員はそう感じたでしょう』
（トリニティ実験　オッペンハイマーの言葉）

上記は1945年7月16日にアメリカで行なわれた人類最初の核実験の研究者の言葉ですが・・・おそらくジオンの一般兵士たちは、自分たちのやっている行為やそれがどういう結果をもたらすのか想像できなかったのではないかとも思います。

米国の無人爆撃機を操縦していたゲーム好きの若い兵士はテレビゲームの感覚でテロリストを攻撃していくんですが、それが人だということを忘れてしまうというのを聞いたことがあります。でも後になってそれが本当にテロリストだったのか、無関係な一般市民だったのか分からなくなって不安になる。たとえ倒すべきテロリストであったとしても、一方的に安全な場所から攻撃して殺害することに強いストレスを覚えて精神を病んでしまうといった話を聞いたことがあります。

上記の史上初の核実験を行った科学者も無人機を操縦して安全な場所から一方的に攻撃、殺害した若い兵士も、同じようにまさか自分のやった行為がこんなに自分にとって憎んでもいない多くの人の命を勝手に奪う行為だと分からなかったのではなかったのでしょうか？

人間には「想像する」という考える力があります。しかし、余りにも大きすぎる力や一方的過ぎる力を手に入れてしまうと「想像する」ことが困難になることがあると思います。

ジオン公国の多くの人はＭＳという強い力を手に入れてしまって、それを使って戦争をすることがどういうことになるのか想像できなかったのではないかと思います。

私が今、考えている宇宙世紀を題材にしたオリジナルの話では、現実で起きた戦争や、戦争で被害にあった人たちやそれを実行した兵士たちの心情を考慮して描いていきたいですね。

皆さんもこのザクのパイロットの心境を、１０００万人もの無関係な人の命を奪う、戦争をする兵士の立場で考えてみて欲しいです。何か思いついたことがあれば教えて欲しいです。

私には残念ながら想像することが出来ませんでした。