ざしきわらしさん
ぎゅっ、てして。 わたしの爪があの子にくいこむ。わたしの、肉と爪とのあいだに、あの子の肉と、汗とがくいこむ。 んっ。 あの子の声で、手が跳ねあがる。わたしは片手をひきぬいて、小さくごめんと呟いた。あの子の肌に、わたしが刻んだ、わたしの痕はどんなだろう。あの子の肌に、わたしがのこした、あの子に手向けるわたしの爪痕。わたしのからだにのこされた、爪痕のことをおもいだす。衣服に隠れた痕をおもう。
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2015-11-09 03:05
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