聖なる夜に音楽を。

ある冬の真夜中に、彼女は突然原付バイクを走らせた。

彼女の向かう先は、自販機が4つ並んだどこにでもある街の道路だ。

何故人も全く通らない真夜中にここへやってくるのか。

ここは彼女にとって歌の練習場所であり、歌手になる決心をした場所なのだ。

決心当時はよくここに来ては、つぶやくような声で歌の練習をしていた。
今では多くの人に愛されている歌手として花咲いている彼女は、歌う練習であれば自宅に思い切り歌える環境があるのにもかかわらず、思い切り声が出せないくて、ましてやリスクのあるここで真夜中歌っているのだ。

そんな彼女の表情は、とても幸せそうな笑みを浮かべて歌い続けている。そのこだわりは、彼女本人にしか分からない秘密だ。