【花冠】ハヤ【第五期投票】
■ハヤ・ソナ=ミラージ・ディヴィナシオン・メリクス【illust/59324693】の投票です。
花冠を戴く者【illust/55830776】こちらの企画の投票用作品となります。
「ボクは新大陸の調査を望みますヨ。だって面白そうじゃないですか!」
■ファ・ペイランさんへ【illust/59295437】
……アメリカンブルー『二人の絆』『あふれる思い』
……ブローチ『キミのためだけに作ったブローチ』『貰ってくれると嬉しい』『キミが幸いでありますように』
「たとえ新大陸で待っている未来が悲劇でも、ぺーらんと一緒なら構わないんです」
「でも、そう簡単には諦めたりなんてしませんヨ」
「……悲劇にだって、厄にだって、ボクのペイランはあげません」
------------------------------
[どうも、こんにちは]
[お話の続きが必要ですか?]
[ええ、ええ。もちろんですとも]
[さて、どこまで話しましたっけ]
[……ああ、思い出しました。 あれは――]
父や母にこの気持ちの名を問えば、おそらく悩みもせず『恋』だとのたまうに違いない。
自分だってわかっているのだ。今更誰かに問う必要も無い。
初恋は叶わないものだと、よく言う。
きっとこれは、嘘をつき続ける自分への報いだ。
道化は道化らしく、嘘つきは嘘つきらしく、生かされる。
霧の中は光との距離が曖昧になる。この国独特の湿った空気を肺に入れて、深く息をついた。
行き交う光の中には、かの屋形舟の光もあるだろうか。それとも、今は他の国まで出ているのだろうか。
最近の意図的な来店拒否だって、いい加減彼も気づいているに違いない。
覚悟を決めなければ、と意気込んで夜空へ飛び立つ。
「……ペイランさんの声が聞きたい」
霧の中でなくとも、こんな小さな声は誰にも届かないのだろう。
久しく帰っていない実家に帰る気になったのは、双子の片割れが帰郷したという報せを聞いたからだった。
帰宅の報告をして、彼がいるであろう部屋へ乗り込む。
驚くこともなく穏やかに、ゆるりと笑う彼との挨拶もそこそこに本題を切り出す。
「ハガル、お願いがあるんです。……ナイフを、ボクに刺してはくれませんか」
「その日だけ――いいえ、半日でも構いません」
「告白の時くらいは、嘘をつかないボクでいたい」
久しく見ていなかった彼の驚いた顔を見つつ、事のあらましを告げる。
しばらくして彼はなるほど、と呟いて、手元でナイフを顕現させた。
そして、そのナイフを――
いつもの道をぼんやりと歩く。
今日は霧の国には珍しく晴れていて、こんな日は何かが変わる日に相応しいと思った。
たとえば、ボクの恋を終わらせる日に。
暗くなる気分とは裏腹に笑顔を作る。
いつもどおりの笑顔、声、振る舞い。……大丈夫、騙るのは得意分野だ。
さくっと告げて、さくっと終わらせてもらって、そして出来れば、よき友として近くにいることを許して欲しい。
「こんにちは、ペイランさん」
ああ、よかった。
ボクはちゃんと笑えてる。
その後、告白の切り口を探すボクをよそに、「折角だから」と連れ出された先で彼の口から好意を……告白を聞かされたり。
理解が追いつかないボクに追撃しようとするものだから、ついぐるぐる巻きにしてしまったりした。
だって仕方ないだろう。
「ボクの! ボクの悩んで悩んで悩みぬいた時間は一体なんだったんですか?!」
「うるさいですちょっと黙っててください!」
「ああ、もう……恥ずかしい……ボク格好悪い……」
初恋が叶ってしまったんだ。
びっくりするくらいの幸せなハッピーエンドを貰って、これが嘘じゃないことをかみ締める。
「ボクに惚れちゃうなんて、困った人ですね」
「でも、ボクもそんなペイランさんのことが好きです」
嘘じゃないですヨ、と付け加えてから微笑む。
捜し求めた青い翼の小鳥がすぐ近くにいたように、幸福は存外近くにあって、手を伸ばせば届くらしい。
真っ直ぐで、優しくて、面白可笑しい、黒い瞳の、店主さん。
とびっきりの日常を、これからずっと一緒に過ごせますように。
[まだまだこのお話は続くんですけれど]
[兎にも角にも、ここで一区切り]
[続きを語るのは、またキミと会えたときにしましょう]
[なぁに、ご心配は要りませんヨ]
[このお話は、"そして二人は幸せに暮らしました"で終わるのですからね]
花冠を戴く者【illust/55830776】こちらの企画の投票用作品となります。
「ボクは新大陸の調査を望みますヨ。だって面白そうじゃないですか!」
■ファ・ペイランさんへ【illust/59295437】
……アメリカンブルー『二人の絆』『あふれる思い』
……ブローチ『キミのためだけに作ったブローチ』『貰ってくれると嬉しい』『キミが幸いでありますように』
「たとえ新大陸で待っている未来が悲劇でも、ぺーらんと一緒なら構わないんです」
「でも、そう簡単には諦めたりなんてしませんヨ」
「……悲劇にだって、厄にだって、ボクのペイランはあげません」
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[どうも、こんにちは]
[お話の続きが必要ですか?]
[ええ、ええ。もちろんですとも]
[さて、どこまで話しましたっけ]
[……ああ、思い出しました。 あれは――]
父や母にこの気持ちの名を問えば、おそらく悩みもせず『恋』だとのたまうに違いない。
自分だってわかっているのだ。今更誰かに問う必要も無い。
初恋は叶わないものだと、よく言う。
きっとこれは、嘘をつき続ける自分への報いだ。
道化は道化らしく、嘘つきは嘘つきらしく、生かされる。
霧の中は光との距離が曖昧になる。この国独特の湿った空気を肺に入れて、深く息をついた。
行き交う光の中には、かの屋形舟の光もあるだろうか。それとも、今は他の国まで出ているのだろうか。
最近の意図的な来店拒否だって、いい加減彼も気づいているに違いない。
覚悟を決めなければ、と意気込んで夜空へ飛び立つ。
「……ペイランさんの声が聞きたい」
霧の中でなくとも、こんな小さな声は誰にも届かないのだろう。
久しく帰っていない実家に帰る気になったのは、双子の片割れが帰郷したという報せを聞いたからだった。
帰宅の報告をして、彼がいるであろう部屋へ乗り込む。
驚くこともなく穏やかに、ゆるりと笑う彼との挨拶もそこそこに本題を切り出す。
「ハガル、お願いがあるんです。……ナイフを、ボクに刺してはくれませんか」
「その日だけ――いいえ、半日でも構いません」
「告白の時くらいは、嘘をつかないボクでいたい」
久しく見ていなかった彼の驚いた顔を見つつ、事のあらましを告げる。
しばらくして彼はなるほど、と呟いて、手元でナイフを顕現させた。
そして、そのナイフを――
いつもの道をぼんやりと歩く。
今日は霧の国には珍しく晴れていて、こんな日は何かが変わる日に相応しいと思った。
たとえば、ボクの恋を終わらせる日に。
暗くなる気分とは裏腹に笑顔を作る。
いつもどおりの笑顔、声、振る舞い。……大丈夫、騙るのは得意分野だ。
さくっと告げて、さくっと終わらせてもらって、そして出来れば、よき友として近くにいることを許して欲しい。
「こんにちは、ペイランさん」
ああ、よかった。
ボクはちゃんと笑えてる。
その後、告白の切り口を探すボクをよそに、「折角だから」と連れ出された先で彼の口から好意を……告白を聞かされたり。
理解が追いつかないボクに追撃しようとするものだから、ついぐるぐる巻きにしてしまったりした。
だって仕方ないだろう。
「ボクの! ボクの悩んで悩んで悩みぬいた時間は一体なんだったんですか?!」
「うるさいですちょっと黙っててください!」
「ああ、もう……恥ずかしい……ボク格好悪い……」
初恋が叶ってしまったんだ。
びっくりするくらいの幸せなハッピーエンドを貰って、これが嘘じゃないことをかみ締める。
「ボクに惚れちゃうなんて、困った人ですね」
「でも、ボクもそんなペイランさんのことが好きです」
嘘じゃないですヨ、と付け加えてから微笑む。
捜し求めた青い翼の小鳥がすぐ近くにいたように、幸福は存外近くにあって、手を伸ばせば届くらしい。
真っ直ぐで、優しくて、面白可笑しい、黒い瞳の、店主さん。
とびっきりの日常を、これからずっと一緒に過ごせますように。
[まだまだこのお話は続くんですけれど]
[兎にも角にも、ここで一区切り]
[続きを語るのは、またキミと会えたときにしましょう]
[なぁに、ご心配は要りませんヨ]
[このお話は、"そして二人は幸せに暮らしました"で終わるのですからね]
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2016-10-13 21:16
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