【白鬼】天瞬翠夢奇譚~神獣ノ片~
~あらすじと序章(読み飛ばし可)~
その昔、天地を創造した十二支柱の神がいた。あめつちを混ぜ、風景を形作り、生命を産み、生きる物が色付く世界の中心となって繁栄する基盤を造り上げた。
生き物が進化し、未来を繋いでいける世界を整えると、十二支柱の神々は順に眠りに就いた。
一柱、また一柱。生けとし生ける者達に幸あれと少しの祝福を残し、本当の意味で世界を支える為に、ある神は大地に融け、ある神は大気に融け。岩に山に川に混ざり消えて行った。
その内の一柱は己の領分が緑繁る植物で、融けて混ざる前にひとつの葉を創り出した。
生きる物が食として口に含める、神の葉を。
後の世に『天翠』と呼ばれる植物である。
進化した生き物はやがて地上に増え、知恵を付け、ヒトに進化する。ヒトは様々な食物を搾取し、食べられる物とそうでない物を定義し、また加工して生きる為に食した。食べられる物を調理し、または嗜好品として作るようになり、その中でも葉を加工して煮出した物を『茶』と呼んで好んだ。
非常に多くの『茶』が生み出され、とりわけ伝説にまでなったのが『天翠』である。
眠り逝く神々の大いなる遺産のひとつ。
それは飲んだ者に神と同じ神通力を与えてくれると今日に伝わる。
こぽこぽと湯の沸き立つ泡沫の音が室内に響く。
沸点まで達した頃合いを見て、白澤は温めておいた茶壺に茶葉を入れ、湯を注いだ。途端に鼻腔を擽るのは深い森にいるかのような青臭い香りで。しかし湯が茶葉全体に染み渡るとその香りは趣向を変えた。微かに甘い、花のような香りに。
暫く茶葉を蒸し、用意していた茶杯に茶壺の中で出来上がった茶を注いだ。
「どうぞ」
静かな声で卓に大人しく座っていた相手に差し出す。
相手は僅かに訝しむ表情を見せてから「頂きます」と呟いて茶杯を傾けた。
その様子を固唾を飲んで見守る。相手――――鬼灯の小さな口唇が茶杯を受け入れ、咽喉がこくりと鳴る。
彼が飲んだのは『天翠』と呼ばれる茶葉から淹れた茶だ。人間界では神の作った茶葉だという伝説を持つ茶葉で、飲んだ者に神通力を与えてくれる霊験あらたかなもの。現在では人間界では自生もしておらず手には入らないだろう。
それはあの世でも同じで、滅多に手には入らないものだった。ただ、人間界の言い伝えとは効果が少々異なる。あの世では飲んだ者の願いを叶えると言われている。どこかの神龍が飛び出してくるわけではないが、白澤が存在した時にはもう潰えた神が残したものとして既に存在していた。
この度、何の因果か手に入れてしまった。そして、それを自分が飲むのではなく、恋人である鬼灯に飲ませたのは――――。
「ぐっ」
茶を体内に入れた鬼灯の手が痙攣し、茶杯を取り落とした。白い磁器が床に落ち、無残にも破片と成って万華鏡のように飛び散る。
「あ……あぁ……!」
どさりと重い音を立てて鬼灯が床に蹲る。黒い着物の裾が乱れて床に広がった。
それを痛みを堪えるように双眸を眇めて白澤は見遣る。
(お前の、望みは――――なに……?)
知りたい。
最近、仲が上手く行ってなかった。気持ちが擦れ違い、不協和音を奏でるように二人の間には不穏が漂っていた。
いつからか、鬼灯は白澤を避けるようになったのだ。始めは何か失敗をしたのかと考えたが、そうでは無く、鬼灯が何かを思い悩んでいると気付いた。夜の誘いを仕事を理由に誤魔化して厭い、休日にも心非ずと言った風にどこか違う場所を眺めている様で。
もう、関係に疲れてしまったのだろうか。
染み出すように不安が白澤の心に巣食った。
そんな折に、手に入れた遠い古の神の遺産。
(お前がもしも、もしも離れたいと言うなら、僕は)
下唇を噛み締め、眉間に皺を寄せて駆け寄りたい衝動を堪える白澤の眼下で、呻きを漏らし、己を護るように蹲っていた鬼神に変化が訪れてはっとした。
白く武骨な手の、逞しくしなやかな足の、さらりと黒髪が流れる頭の。
輪郭がぼやける。
ひとの形が崩れ、それは驚きに目を見開く白澤の前でみるみるうちに変わっていく。
やがて黒髪は黒い毛並みに、白い肌は黒い艶やかな毛並みに覆われ、一本だけあった角は大きく突出し、四肢は二本の足で立てない獣の形になった。
黒い、獣の姿になった。
唸りを低くあげる獣の姿は白澤の本性に非常に似通っていた。違うのは角が一本である事と、身体にある目は両の目だけである事と、毛並みが白では無く漆黒の輝きを持つ色である事――――。
黒い獣が伸びをするようにふるりと首を振る。そっと開かれていく瞼の奥は黒曜の色。
視線が空で交わった瞬間、白澤は鬼灯の望みを知った。
彼は、自分と同じ種に――――。
湧き上がった歓喜が、白澤の口角をゆるゆると笑みの形に吊り上げた。
という厨二的な内容では全くございません。
嘘あらすじごめんなさい。しかも長い。
*ちなみにキャプションは天霧さん作で共通ですw(というかこのキャプションの話私も読んでみたい!)
→【7/20追記】こちらのお話しをオフ本にした際天霧さんが「天瞬翠夢奇譚異聞」として書いて下さっていたのですがそちらの再録と併せて今回書き下ろしをアップしてくださってます!
リンクを貼っておきますので是非読んで見てください~ヾ(*´∀`*)ノ →【https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=9882371】
再び天霧さん(user/10216216)と企画!
サブタイトル『補佐官様の為に凛々しくお茶を淹れるかっこいい()白澤さんを見てみたい絵描きと文字書きがやらかした話』という絵描きと文字書きのやらかしシリーズ第二弾です!明言してないだけで他にもちょいちょいやらかしてますけどね!ハハッ
漢服でチャアを順にのっとって淹れる白澤さんはかっこいいよね絶対補佐官様惚れるよね!!!とヒャッハーした結果できましたやらかしました。
絵描き文字書き白鬼妄想会議(ただし二人しかいない)では『未来に恋仲になってて過去の二人が仲睦まじく鬼灯様にお茶を淹れる白澤さんをみて「ファ!?」ってなる話』にしようと結論出ました。
今回は全年齢ですほのぼの健全ですよー!
漫画と小説でリンクしている話では無いですが幾つか決め事してます。
【決め事】
・茶を淹れる時白澤さんは漢服
・中国茶を正しい手順で淹れる
・茶を淹れる白澤さんに鬼灯様が見惚れる
・白澤さんか鬼灯様のどっちかが未来へGO!
・花梨→白澤さんが未来へぶっ飛ぶ【神獣ノ片/漫画】
・天霧さん→鬼灯様が未来へぶっ飛ぶ【鬼神ノ片/小説】(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=8087654)
・お茶澤さんマジイケメン
色々と捏造はしてますがまあいつもの事ですし。
楽しんでいただけたらこれ幸い、更にお茶澤さんが広まってくれたらやらかし二人はとても喜びます!
タイトル【天瞬翠夢奇譚】を訳せば「お茶を絡めたちょっと不思議ストーリー」です。深く考えてはいけない。
*もしかしたらアダルトな後日談を書き下ろして7月に合同誌にてお目見えするかも……しれません(ただし予定
その昔、天地を創造した十二支柱の神がいた。あめつちを混ぜ、風景を形作り、生命を産み、生きる物が色付く世界の中心となって繁栄する基盤を造り上げた。
生き物が進化し、未来を繋いでいける世界を整えると、十二支柱の神々は順に眠りに就いた。
一柱、また一柱。生けとし生ける者達に幸あれと少しの祝福を残し、本当の意味で世界を支える為に、ある神は大地に融け、ある神は大気に融け。岩に山に川に混ざり消えて行った。
その内の一柱は己の領分が緑繁る植物で、融けて混ざる前にひとつの葉を創り出した。
生きる物が食として口に含める、神の葉を。
後の世に『天翠』と呼ばれる植物である。
進化した生き物はやがて地上に増え、知恵を付け、ヒトに進化する。ヒトは様々な食物を搾取し、食べられる物とそうでない物を定義し、また加工して生きる為に食した。食べられる物を調理し、または嗜好品として作るようになり、その中でも葉を加工して煮出した物を『茶』と呼んで好んだ。
非常に多くの『茶』が生み出され、とりわけ伝説にまでなったのが『天翠』である。
眠り逝く神々の大いなる遺産のひとつ。
それは飲んだ者に神と同じ神通力を与えてくれると今日に伝わる。
こぽこぽと湯の沸き立つ泡沫の音が室内に響く。
沸点まで達した頃合いを見て、白澤は温めておいた茶壺に茶葉を入れ、湯を注いだ。途端に鼻腔を擽るのは深い森にいるかのような青臭い香りで。しかし湯が茶葉全体に染み渡るとその香りは趣向を変えた。微かに甘い、花のような香りに。
暫く茶葉を蒸し、用意していた茶杯に茶壺の中で出来上がった茶を注いだ。
「どうぞ」
静かな声で卓に大人しく座っていた相手に差し出す。
相手は僅かに訝しむ表情を見せてから「頂きます」と呟いて茶杯を傾けた。
その様子を固唾を飲んで見守る。相手――――鬼灯の小さな口唇が茶杯を受け入れ、咽喉がこくりと鳴る。
彼が飲んだのは『天翠』と呼ばれる茶葉から淹れた茶だ。人間界では神の作った茶葉だという伝説を持つ茶葉で、飲んだ者に神通力を与えてくれる霊験あらたかなもの。現在では人間界では自生もしておらず手には入らないだろう。
それはあの世でも同じで、滅多に手には入らないものだった。ただ、人間界の言い伝えとは効果が少々異なる。あの世では飲んだ者の願いを叶えると言われている。どこかの神龍が飛び出してくるわけではないが、白澤が存在した時にはもう潰えた神が残したものとして既に存在していた。
この度、何の因果か手に入れてしまった。そして、それを自分が飲むのではなく、恋人である鬼灯に飲ませたのは――――。
「ぐっ」
茶を体内に入れた鬼灯の手が痙攣し、茶杯を取り落とした。白い磁器が床に落ち、無残にも破片と成って万華鏡のように飛び散る。
「あ……あぁ……!」
どさりと重い音を立てて鬼灯が床に蹲る。黒い着物の裾が乱れて床に広がった。
それを痛みを堪えるように双眸を眇めて白澤は見遣る。
(お前の、望みは――――なに……?)
知りたい。
最近、仲が上手く行ってなかった。気持ちが擦れ違い、不協和音を奏でるように二人の間には不穏が漂っていた。
いつからか、鬼灯は白澤を避けるようになったのだ。始めは何か失敗をしたのかと考えたが、そうでは無く、鬼灯が何かを思い悩んでいると気付いた。夜の誘いを仕事を理由に誤魔化して厭い、休日にも心非ずと言った風にどこか違う場所を眺めている様で。
もう、関係に疲れてしまったのだろうか。
染み出すように不安が白澤の心に巣食った。
そんな折に、手に入れた遠い古の神の遺産。
(お前がもしも、もしも離れたいと言うなら、僕は)
下唇を噛み締め、眉間に皺を寄せて駆け寄りたい衝動を堪える白澤の眼下で、呻きを漏らし、己を護るように蹲っていた鬼神に変化が訪れてはっとした。
白く武骨な手の、逞しくしなやかな足の、さらりと黒髪が流れる頭の。
輪郭がぼやける。
ひとの形が崩れ、それは驚きに目を見開く白澤の前でみるみるうちに変わっていく。
やがて黒髪は黒い毛並みに、白い肌は黒い艶やかな毛並みに覆われ、一本だけあった角は大きく突出し、四肢は二本の足で立てない獣の形になった。
黒い、獣の姿になった。
唸りを低くあげる獣の姿は白澤の本性に非常に似通っていた。違うのは角が一本である事と、身体にある目は両の目だけである事と、毛並みが白では無く漆黒の輝きを持つ色である事――――。
黒い獣が伸びをするようにふるりと首を振る。そっと開かれていく瞼の奥は黒曜の色。
視線が空で交わった瞬間、白澤は鬼灯の望みを知った。
彼は、自分と同じ種に――――。
湧き上がった歓喜が、白澤の口角をゆるゆると笑みの形に吊り上げた。
という厨二的な内容では全くございません。
嘘あらすじごめんなさい。しかも長い。
*ちなみにキャプションは天霧さん作で共通ですw(というかこのキャプションの話私も読んでみたい!)
→【7/20追記】こちらのお話しをオフ本にした際天霧さんが「天瞬翠夢奇譚異聞」として書いて下さっていたのですがそちらの再録と併せて今回書き下ろしをアップしてくださってます!
リンクを貼っておきますので是非読んで見てください~ヾ(*´∀`*)ノ →【https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=9882371】
再び天霧さん(user/10216216)と企画!
サブタイトル『補佐官様の為に凛々しくお茶を淹れるかっこいい()白澤さんを見てみたい絵描きと文字書きがやらかした話』という絵描きと文字書きのやらかしシリーズ第二弾です!明言してないだけで他にもちょいちょいやらかしてますけどね!ハハッ
漢服でチャアを順にのっとって淹れる白澤さんはかっこいいよね絶対補佐官様惚れるよね!!!とヒャッハーした結果できましたやらかしました。
絵描き文字書き白鬼妄想会議(ただし二人しかいない)では『未来に恋仲になってて過去の二人が仲睦まじく鬼灯様にお茶を淹れる白澤さんをみて「ファ!?」ってなる話』にしようと結論出ました。
今回は全年齢ですほのぼの健全ですよー!
漫画と小説でリンクしている話では無いですが幾つか決め事してます。
【決め事】
・茶を淹れる時白澤さんは漢服
・中国茶を正しい手順で淹れる
・茶を淹れる白澤さんに鬼灯様が見惚れる
・白澤さんか鬼灯様のどっちかが未来へGO!
・花梨→白澤さんが未来へぶっ飛ぶ【神獣ノ片/漫画】
・天霧さん→鬼灯様が未来へぶっ飛ぶ【鬼神ノ片/小説】(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=8087654)
・お茶澤さんマジイケメン
色々と捏造はしてますがまあいつもの事ですし。
楽しんでいただけたらこれ幸い、更にお茶澤さんが広まってくれたらやらかし二人はとても喜びます!
タイトル【天瞬翠夢奇譚】を訳せば「お茶を絡めたちょっと不思議ストーリー」です。深く考えてはいけない。
*もしかしたらアダルトな後日談を書き下ろして7月に合同誌にてお目見えするかも……しれません(ただし予定
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2017-04-24 06:30
Comments (8)
と思ったらリンク貼ってくださってたんですね……見落としすみませんでした。あとリンク先の白鬼もたいへん最高でした。
最高の白鬼をありがとうございます……ところでキャプションの続きはどこで読めますでしょうか
神作品をありがとうございました( ;∀;)
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