【千年ノ孤独】ルーチェ・クラリッサ【魔女】
企画 【魔女と少女と千年ノ孤独(illust/65413654)】に参加いたします。
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✜ Luce Clarissa / ルーチェ・クラリッサ
「あら、だめよ……わたしのための森なのに。奪おうとしないで頂戴」
「独りぼっちで弱くて、哀れな人間の貴女。これからは千年、わたしと"同じ"よ」
700年以上生きている魔女。常に穏やかな笑みを湛えている。
薬を作ったり街へ買い物に出かけたり、人間として生きた頃の生活を部分的に続けながら
"白雪の森"と呼ばれる場所に独りで棲んでいる。ドレス蒐集が長年の趣味。
魔女狩りが存在した頃の過去もあり人間に対してそれほど好意的ではなく、
自身の棲む森に足を踏み入れた悪意ある人間に対して"悪戯"をすることもしばしば。
それによって命を落とした人間は数知れずだが、何とも思っていない。
"白雪の森"は広範囲魔法によるもの。本来は昼でも薄暗く、人食い狼のうろつくような寂れた森。
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❤ 01/09 - 素敵な少女さんとのご縁を頂きました…!
ジゼルさん【illust/66561151】
教会なんてどれほど久しぶりに来たかしら。
ずうっと昔には熱心に通いもしたけれど、今ではすっかり存在を忘れた場所になっていた。
穏やかな日差しに照らされて、小鳥の囀りだけが聞こえてくるように静かで小さな教会。
扉を開けたその先へ視線をやると、白い服を着た人物が見える。どうやら誰かがいたみたい。
「……こんにちは。貴女はこの村に住んでいるの?」
少し歩み寄って話しかけた相手の表情はとても驚いていて、のちに控えめに微笑んだ。
どこか不安の色がある表情。だけど、話す声は涼やかで心地良い。
その後彼女はわたしに村のことをいくつか教えてくれた。…わたしの棲んでいる、"白雪の森"のことも。
「丁寧な案内のお礼にひとつだけ。素性の知れない相手に、簡単に名乗ってはだめよ」
相手が貴女の怖れる魔女とも知らないで、貴女は本当に優しい子なのね。
わたしの言葉に、彼女は不思議そうな顔をして頷いた。
…目の前にいるわたしが魔女だと知ったら、この表情はどう変わるのかしら。
❄ ❄ ❄
「……あら。此処を一人で訪れるなんて、いけない子ね…」
ジゼルという名の、あの教会で出会った女の子。
彼女は闇の中、"白雪の森"に自ら足を運びこうしてわたしの前に立っていた。
…ああ、この子はきっとわたしの所為で人間たちから後ろ指を指されることになる。
哀れと思う反面、暫く忘れていた温かな時間を過ごせることになるかもしれないのを
喜ばしく思う自分がいることもまた、事実だった。
「賢いジゼル、本当は心の底でも思っていたのではないかしら。──わたしが魔女なのでは、と」
「わたしがすべて教えてあげるわ。教えには無い、貴女の知りたいことを」
幼くて、哀れで、優しくて、可愛いジゼル。
純粋な貴女が縋るべきものは、神ではないわ。…わたしだけが貴女の信じる心を救ってあげられるの。
漸く、わたしの求めていたものを持つ少女に巡り会えたのに。
このまま時が過ぎていけば、わたしの名を呼ぶこの声も、わたしを見つめる瞳も、
温もりのある清らかな身体も、いずれはわたしを置き去りにして朽ち果ててしまう。
もしこの子が"儀式"を受け入れて、わたしと同じ存在になってくれるなら。
わたしが感じてきたものを、貴女も同じように感じられる存在になってくれるなら。
「わたしには貴女の救いが必要よ。…わたしを救えるのは貴女だけ」
「共に生きることを選ぶなら、貴女に千年の命をあげる。──祈りを棄てて、魔女の血を受け容れるの」
「この身体が花の欠片となって朽ちる時、千年の孤独の終わりには…傍に居てね。ジゼル」
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✜ Luce Clarissa / ルーチェ・クラリッサ
「あら、だめよ……わたしのための森なのに。奪おうとしないで頂戴」
「独りぼっちで弱くて、哀れな人間の貴女。これからは千年、わたしと"同じ"よ」
700年以上生きている魔女。常に穏やかな笑みを湛えている。
薬を作ったり街へ買い物に出かけたり、人間として生きた頃の生活を部分的に続けながら
"白雪の森"と呼ばれる場所に独りで棲んでいる。ドレス蒐集が長年の趣味。
魔女狩りが存在した頃の過去もあり人間に対してそれほど好意的ではなく、
自身の棲む森に足を踏み入れた悪意ある人間に対して"悪戯"をすることもしばしば。
それによって命を落とした人間は数知れずだが、何とも思っていない。
"白雪の森"は広範囲魔法によるもの。本来は昼でも薄暗く、人食い狼のうろつくような寂れた森。
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❤ 01/09 - 素敵な少女さんとのご縁を頂きました…!
ジゼルさん【illust/66561151】
教会なんてどれほど久しぶりに来たかしら。
ずうっと昔には熱心に通いもしたけれど、今ではすっかり存在を忘れた場所になっていた。
穏やかな日差しに照らされて、小鳥の囀りだけが聞こえてくるように静かで小さな教会。
扉を開けたその先へ視線をやると、白い服を着た人物が見える。どうやら誰かがいたみたい。
「……こんにちは。貴女はこの村に住んでいるの?」
少し歩み寄って話しかけた相手の表情はとても驚いていて、のちに控えめに微笑んだ。
どこか不安の色がある表情。だけど、話す声は涼やかで心地良い。
その後彼女はわたしに村のことをいくつか教えてくれた。…わたしの棲んでいる、"白雪の森"のことも。
「丁寧な案内のお礼にひとつだけ。素性の知れない相手に、簡単に名乗ってはだめよ」
相手が貴女の怖れる魔女とも知らないで、貴女は本当に優しい子なのね。
わたしの言葉に、彼女は不思議そうな顔をして頷いた。
…目の前にいるわたしが魔女だと知ったら、この表情はどう変わるのかしら。
❄ ❄ ❄
「……あら。此処を一人で訪れるなんて、いけない子ね…」
ジゼルという名の、あの教会で出会った女の子。
彼女は闇の中、"白雪の森"に自ら足を運びこうしてわたしの前に立っていた。
…ああ、この子はきっとわたしの所為で人間たちから後ろ指を指されることになる。
哀れと思う反面、暫く忘れていた温かな時間を過ごせることになるかもしれないのを
喜ばしく思う自分がいることもまた、事実だった。
「賢いジゼル、本当は心の底でも思っていたのではないかしら。──わたしが魔女なのでは、と」
「わたしがすべて教えてあげるわ。教えには無い、貴女の知りたいことを」
幼くて、哀れで、優しくて、可愛いジゼル。
純粋な貴女が縋るべきものは、神ではないわ。…わたしだけが貴女の信じる心を救ってあげられるの。
漸く、わたしの求めていたものを持つ少女に巡り会えたのに。
このまま時が過ぎていけば、わたしの名を呼ぶこの声も、わたしを見つめる瞳も、
温もりのある清らかな身体も、いずれはわたしを置き去りにして朽ち果ててしまう。
もしこの子が"儀式"を受け入れて、わたしと同じ存在になってくれるなら。
わたしが感じてきたものを、貴女も同じように感じられる存在になってくれるなら。
「わたしには貴女の救いが必要よ。…わたしを救えるのは貴女だけ」
「共に生きることを選ぶなら、貴女に千年の命をあげる。──祈りを棄てて、魔女の血を受け容れるの」
「この身体が花の欠片となって朽ちる時、千年の孤独の終わりには…傍に居てね。ジゼル」
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2017-12-25 20:05
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