【ハロ敵】プリムローズ・サルヴァーレ【犯】
ハロー宿敵【illust/65697558】に参加。
プリムローズ・サルヴァーレ
一人称:私
二人称:あなた等
Job1:お土産やお祭り、演劇用の仮面を専門に作っています。
Job2:生きたまま石膏の型に顔を押し付け窒息死させてしまっています。
【彼女の始まり】
12から仮面作りの修行を始めた彼女が18になった或る日、師であり父である男の秘密のアトリエを見つけてしまった。
壁一面に飾られていたのは、人々が苦しむ顔を模った沢山のマスク。普通であれば気持ち悪いだとか、おかしいだとか、恐怖を抱くはずのその光景に、思わず口の端が釣りあがるのを感じて隠すように手を当てる。
後ろから近づく父の「見つけてしまったか」と言う声に振り返る。彼女は父を一切非難しなかった。ただ淡々と尋ねる。このマスクはどうしたのかと。
ゆっくりと話し始めた父の言葉に、彼女は表情を変えない。そう、父が今巷にまことしやかに囁かれる殺人犯「マスカレイド」だったのだ。
そうか、これは全てデスマスクだったのか。と、どこかで腑に落ちたような気になってくる。
素敵。素敵。此処にあるマスクは、全てが生きた表情。生きていた証。
そして、彼女が19になった或る日。
父のアトリエにマスクが1つ、飾られた。
それは彼女の師であり父であった男のデスマスク。
父のアトリエは彼女のアトリエとなり、「マスカレイド」は彼女の名になった。
そして、彼女は、遺族であり犯罪者となったのだった。
【遺族としての彼女】
12から修行をして10年。若手と言えどいっぱしの職人にはなれた気がする。
特定の場面でしか使わない仮面だけれど、こうして1つ1つ心を込めて作る作業はとても楽しい。
3年前に世間を騒がせていた殺人犯の手にかかって死んでしまった師であり父の腕に少しでも近づけただろうか。
彼女は今日も店であり工房でもある、この思い出が詰まった場所で仮面を作る。
いつか犯人が捕まる日を願って――
【犯罪者としての彼女】
ポットの中で茶葉が綻ぶ。お客さんに待ってもらっている間に出す紅茶選びはとても楽しい。
騒がれたら面倒。動かれても面倒。少しだけ騒がず動かないようになってくれればいい。そうでなければ型が取りにくい。
嗚呼。あの人はどんな顔を残してくれるのだろう。
出来上がるマスクが今から楽しみでならない。
芳醇な紅茶の香りが店内に広がる。
「お茶はいかが?」
もうそろそろ良いだろうと、石膏から顔を引き上げる。嗚呼、案の定この人も死んでしまった。
けれど、出来上がった型に残る最高の表情にぞくぞくとした笑みが零れる。
綺麗に石膏を洗い流し、顔の表情を整えてもう一度型に押し付ける。
作り上げた型から出来上がった綺麗なデスマスクを顔に貼り付け、動かない体を荷車に乗せて川へと捨てる。
アトリエに戻った彼女は、壁に新しいデスマスクを飾り付けた。
************
素敵な宿敵様が見つかりました!
【彼と彼女の邂逅】
彼との付き合いはもうどれくらいになっただろうか。
まだ仮面の修行を始める前、父の腕で抱かれた頃からの付き合いのような気がする。彼――クレール・マルタン【illust/66964946】は、父の友人であり今の彼女にとってはもう一人の父のような存在だった。
父を亡くした彼女を心配してか、時折店に顔を出しては一緒にお茶を飲んで、他愛のない言葉を交わす。そして買出しに出た広場で、たまに数少ない警察に捕まっている彼を見かけては、連れて帰る。
「おじ様。先日、洗濯しておいた服はどうしたの?」
「絵の具で汚すと勿体無くてね」
「そんなのまた洗濯すればいいでしょう!」
むっと口を尖らせる彼に、彼女はただ肩をすくめてやれやれと微笑むのだった。
―――そして
新月の夜。
彼女は、顔に貼り付けた綺麗なマスクに一度手を添えて、満足そうに死体を川に捨てる。
そういえば世間話のように父から話を聞いた事がある。
あと少し、もう少しで、自分に手が届きそうな警察官がいた――と。
でも大丈夫。だって“貴方”はもう死んだでしょう?
けれど、その人は気付くかしら? 犯人が“私”になったって……
************
何かミス等ありましたら、ご連絡下さいお願いします。
交流可タグを追加しましたが、pixiv上でお返しできる可能性はとてつもなく低いです。申し訳ありません。
プリムローズ・サルヴァーレ
一人称:私
二人称:あなた等
Job1:お土産やお祭り、演劇用の仮面を専門に作っています。
Job2:生きたまま石膏の型に顔を押し付け窒息死させてしまっています。
【彼女の始まり】
12から仮面作りの修行を始めた彼女が18になった或る日、師であり父である男の秘密のアトリエを見つけてしまった。
壁一面に飾られていたのは、人々が苦しむ顔を模った沢山のマスク。普通であれば気持ち悪いだとか、おかしいだとか、恐怖を抱くはずのその光景に、思わず口の端が釣りあがるのを感じて隠すように手を当てる。
後ろから近づく父の「見つけてしまったか」と言う声に振り返る。彼女は父を一切非難しなかった。ただ淡々と尋ねる。このマスクはどうしたのかと。
ゆっくりと話し始めた父の言葉に、彼女は表情を変えない。そう、父が今巷にまことしやかに囁かれる殺人犯「マスカレイド」だったのだ。
そうか、これは全てデスマスクだったのか。と、どこかで腑に落ちたような気になってくる。
素敵。素敵。此処にあるマスクは、全てが生きた表情。生きていた証。
そして、彼女が19になった或る日。
父のアトリエにマスクが1つ、飾られた。
それは彼女の師であり父であった男のデスマスク。
父のアトリエは彼女のアトリエとなり、「マスカレイド」は彼女の名になった。
そして、彼女は、遺族であり犯罪者となったのだった。
【遺族としての彼女】
12から修行をして10年。若手と言えどいっぱしの職人にはなれた気がする。
特定の場面でしか使わない仮面だけれど、こうして1つ1つ心を込めて作る作業はとても楽しい。
3年前に世間を騒がせていた殺人犯の手にかかって死んでしまった師であり父の腕に少しでも近づけただろうか。
彼女は今日も店であり工房でもある、この思い出が詰まった場所で仮面を作る。
いつか犯人が捕まる日を願って――
【犯罪者としての彼女】
ポットの中で茶葉が綻ぶ。お客さんに待ってもらっている間に出す紅茶選びはとても楽しい。
騒がれたら面倒。動かれても面倒。少しだけ騒がず動かないようになってくれればいい。そうでなければ型が取りにくい。
嗚呼。あの人はどんな顔を残してくれるのだろう。
出来上がるマスクが今から楽しみでならない。
芳醇な紅茶の香りが店内に広がる。
「お茶はいかが?」
もうそろそろ良いだろうと、石膏から顔を引き上げる。嗚呼、案の定この人も死んでしまった。
けれど、出来上がった型に残る最高の表情にぞくぞくとした笑みが零れる。
綺麗に石膏を洗い流し、顔の表情を整えてもう一度型に押し付ける。
作り上げた型から出来上がった綺麗なデスマスクを顔に貼り付け、動かない体を荷車に乗せて川へと捨てる。
アトリエに戻った彼女は、壁に新しいデスマスクを飾り付けた。
************
素敵な宿敵様が見つかりました!
【彼と彼女の邂逅】
彼との付き合いはもうどれくらいになっただろうか。
まだ仮面の修行を始める前、父の腕で抱かれた頃からの付き合いのような気がする。彼――クレール・マルタン【illust/66964946】は、父の友人であり今の彼女にとってはもう一人の父のような存在だった。
父を亡くした彼女を心配してか、時折店に顔を出しては一緒にお茶を飲んで、他愛のない言葉を交わす。そして買出しに出た広場で、たまに数少ない警察に捕まっている彼を見かけては、連れて帰る。
「おじ様。先日、洗濯しておいた服はどうしたの?」
「絵の具で汚すと勿体無くてね」
「そんなのまた洗濯すればいいでしょう!」
むっと口を尖らせる彼に、彼女はただ肩をすくめてやれやれと微笑むのだった。
―――そして
新月の夜。
彼女は、顔に貼り付けた綺麗なマスクに一度手を添えて、満足そうに死体を川に捨てる。
そういえば世間話のように父から話を聞いた事がある。
あと少し、もう少しで、自分に手が届きそうな警察官がいた――と。
でも大丈夫。だって“貴方”はもう死んだでしょう?
けれど、その人は気付くかしら? 犯人が“私”になったって……
************
何かミス等ありましたら、ご連絡下さいお願いします。
交流可タグを追加しましたが、pixiv上でお返しできる可能性はとてつもなく低いです。申し訳ありません。
45
79
1646
2018-02-01 23:05
Comments (1)