阿蝙怜嬢

宮廷に名高き麗人、享楽の徒。数多の男女を相手取り、数多の浮名を流した彼の彼女の名を、今は記憶する者もおりません。詩人にして博徒、歌姫にして舞手、貴婦人にして貴公子。彼は彼女は宮廷の中、誰より輝いておりました。そんな彼の彼女の最後は惨めで、痩せ衰え、醜く、汚物とうわごとにまみれておりました。老いが彼を彼女を殺したのではありませんでした。彼は彼女は秘薬を常用し、それに身と心を蝕まれたのです。夢想の翼広げ無限の精力をもたらす禁制の秘薬を、彼は彼女は愛用しておりました。醜聞は丸め捨てられ、忘れられました。けれども、彼は彼女は今も夢想の翼を広げ飛び回っているのです。美男美女美食美芸に心当たりあらばご注意を。彼は彼女は、蝙蝠とも蟷螂ともつかぬ有様で、未だ快楽を求めさまよっているのです。     illust/684284←描いてもらいました!
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2008-04-18 21:45

 神谷涼


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