銀河鉄道の夜(4)
宮沢賢治の名作に挿絵をつけてゆきます。
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(1枚目)「ジョバンニの切符(5)」
もうじきサウザンクロスの駅に到着します。サウザンクロスは天上の世界への入り口であり、船旅中に遭難した少女と弟、家庭教師の青年はここで降りなければなりません。
辛い別れの時がやってきました。青年は弟の手をひいて先に出口へ向かいます。
「じゃ さよなら」
少女がふりかえってジョバンニとカムパネルラに云いました。
(2枚目)「ジョバンニの切符(6)」
少女たちが降りてゆき、汽車の中にはジョバンニとカムパネルラが残されました。
「カムパネルラ、また僕たち2人きりになったねえ、どこまでもどこまでも一緒に行こう。僕はもうあのさそりのようにほんとうにみんなの幸いのためならば僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまわない」
「うん、僕だってそうだ」
「けれどもほんとうのさいわいは一体なんだろう」
「僕わからない」
そんな会話をかわしているうちにカムパネルラが叫びました
「ああ、あすこの野原はなんてきれいだろう。・・・あっ あすこにいるのはぼくのお母さんだよ」
そっちを見たけれどもそこはぼんやり白く煙っているだけでした。
そしてジョバンニがカムパネルラの方を振り返ると、そこに彼の姿はなくただ椅子の黒いビロードが光っておりました。
ジョバンニは激しく泣き、目の前が真っ暗になりました。
(3枚目)「ジョバンニの切符(7)」
ジョバンニは眼を開きました。もとの丘の草の中につかれて眠っていたのでした。
急いで牛乳屋へ行き母のための牛乳を受け取り街へ出て川にかかる大きな橋にたどり着くと、ざわついて何か様子が変です。
同級生のマルソがジョバンニを見つけて駆け寄り告げました
「ジョバンニ、カムパネルラが川に入ったよ」
舟から川に落ちたザネリを助けようとカムパネルラは川に飛び込み、ザネリを舟の方に押してよこしたあと行方が分からないのです。
ジョバンニは河原の一番下流の洲へ走りました。カムパネルラの父はそこに真っすぐ立っていて、右手に持った時計をじっと見つめて言いました。
「もう駄目です。落ちてから45分経ちましたから」
カムパネルラの父はジョバンニを見つけて、ジョバンニの父から間もなく帰るという便りがあったと告げ、そして又銀河の映った川下の方をじっと見つめていました。
ジョバンニは色んなことに胸が一杯になり、何も言えずにその場を離れて、母の待つ家へ駆けて行きました。
(完)
最後までご覧いただき有難うございました。
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(1枚目)「ジョバンニの切符(5)」
もうじきサウザンクロスの駅に到着します。サウザンクロスは天上の世界への入り口であり、船旅中に遭難した少女と弟、家庭教師の青年はここで降りなければなりません。
辛い別れの時がやってきました。青年は弟の手をひいて先に出口へ向かいます。
「じゃ さよなら」
少女がふりかえってジョバンニとカムパネルラに云いました。
(2枚目)「ジョバンニの切符(6)」
少女たちが降りてゆき、汽車の中にはジョバンニとカムパネルラが残されました。
「カムパネルラ、また僕たち2人きりになったねえ、どこまでもどこまでも一緒に行こう。僕はもうあのさそりのようにほんとうにみんなの幸いのためならば僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまわない」
「うん、僕だってそうだ」
「けれどもほんとうのさいわいは一体なんだろう」
「僕わからない」
そんな会話をかわしているうちにカムパネルラが叫びました
「ああ、あすこの野原はなんてきれいだろう。・・・あっ あすこにいるのはぼくのお母さんだよ」
そっちを見たけれどもそこはぼんやり白く煙っているだけでした。
そしてジョバンニがカムパネルラの方を振り返ると、そこに彼の姿はなくただ椅子の黒いビロードが光っておりました。
ジョバンニは激しく泣き、目の前が真っ暗になりました。
(3枚目)「ジョバンニの切符(7)」
ジョバンニは眼を開きました。もとの丘の草の中につかれて眠っていたのでした。
急いで牛乳屋へ行き母のための牛乳を受け取り街へ出て川にかかる大きな橋にたどり着くと、ざわついて何か様子が変です。
同級生のマルソがジョバンニを見つけて駆け寄り告げました
「ジョバンニ、カムパネルラが川に入ったよ」
舟から川に落ちたザネリを助けようとカムパネルラは川に飛び込み、ザネリを舟の方に押してよこしたあと行方が分からないのです。
ジョバンニは河原の一番下流の洲へ走りました。カムパネルラの父はそこに真っすぐ立っていて、右手に持った時計をじっと見つめて言いました。
「もう駄目です。落ちてから45分経ちましたから」
カムパネルラの父はジョバンニを見つけて、ジョバンニの父から間もなく帰るという便りがあったと告げ、そして又銀河の映った川下の方をじっと見つめていました。
ジョバンニは色んなことに胸が一杯になり、何も言えずにその場を離れて、母の待つ家へ駆けて行きました。
(完)
最後までご覧いただき有難うございました。
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2018-05-20 20:18
Comments (2)
ああ・・・カムパネルラがいなくなった座席の前に茫然と立ち尽くすジョバンニの表情、いたたまれないものさえ感じます。 やっぱり名作ですね、「銀河鉄道の夜」。しおさんの叙情溢れる絵を見るなかで改めて実感しました。
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