アナトリ

 美味い。

 香りが鼻から脳へ、苦みが口から全身へ染み渡る。
 フルーティーなアロマとまろやかなコク。酸味のきいた繊細で芳醇なテイスト。

 体に染み渡るカフェインが余計な思考を軽く洗い流し、脳内活動を再び促進する。体を機械に喩えるならば、コーヒーは僕にとって潤滑油に他ならなかった。
 しかしコーヒーほど同じ品が千変万化の味に変転する食品はない。喫茶店のそれが、バーなど足元にも及ばないほど歴然たる格差で店ごとに味に個性の等級が開くように、作る人の淹れ方一つでいくらでもその味や風味は変容するのだ。
 その点、ミットライトのそれは老舗の喫茶店で客に出せるほどの味わいだった。

    ―――アナトリ

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2018-07-27 18:25

 R氏。


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