「ミミズはいつも全力だ…ッ!」

色が交わる事無く歪な螺旋を描き汚れた空のパレット。
生温くも身体を侵す凍てつくような風が吹き荒れる。
向かう先は一点、白濁とした色の崩れた塔。
それは既に塔として機能をしていない、瓦礫の集まる残骸である。

あそこに、あそこに妹がいる。

馬鹿な事をすれば呆れ顔をみせつつも、温もりのある笑顔を与えてくれる妹。
頼りない姉の、お日様。

塔の中、天井が抜け屋内がさらけ出された屋外。
床の中央にはぽっかりと口を開いた大穴。
その大穴は果たしてどこまで続いているのか、見当がつかない。

そんな大穴の隣、人影が見えた。
神にそそのかされ、獣となってしまった家族。
その化け物は、こちらに視線を向けること無く、ただ頭を抱え唸り声をあげる。

「すぐに助けてあげるから、待ってて」

負けられない、そう、妹を連れて帰るんだ。

「一緒に帰ろう、エリーゼ」

止めなくてはならない。
この世界が滅びる前に。

だからこそ。

「―――わたしは」

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2018-08-05 20:15

 目黒九六(めぐろここのむ)


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