【PFLS】捕らえる事敵わず【アンダーリアの乱】

企画元様・pixivファンタジア Last Saga【illust/72286886】
第一章 戦いの火【illust/72934367】

月光の樹海に着いた頃には、戦いは随分と激化していた。
俺はなるべく戦火の少ない、負傷者が逃げてきそうな場所に糸を張る事にした。
有刺の糸は束ねればさながら茨の様に素肌に食い込み、容易くは千切れぬ障害になる。
手負いの兵士くらいは引っかかるかもしれないという心づもりだ。

糸を一通り張り終わり、後は戦線から引いてしまおうと思っていた所
重量感のある足音が近づいている事に気付いた。
馬だろうか？…いや、足音のリズムが馬のそれとは違う。
予想以上の速さで駆けて来たそいつは敵国の同胞のようだった。
八つ足で金属の鎧を纏うその男は、大きな馬上槍で俺の張った糸を
事も無げに薙ぎ掃う、突貫工事だったとはいえ丈夫な俺の糸を。

一瞬、目が合ってすぐさま悟った。俺じゃ敵う相手じゃない。
俺は威嚇しているチェルをひっ掴んで、エルダーグランの方面へ即座に逃げ出した。
俺は傭兵なんかじゃない、美味い飯にありつけずに死ぬなんて真っ平御免なのだ。
残った糸に少しでも敵が足踏みしてくれる事を願うだけである。

ロズニエルさんがこちら【illust/73010994】の後、時雨平原の戦いへ向かう前の話だと思ってください。
八脚槍のロズニエルさん【illust/72956975】
蟲喰らいのトゥイグ【illust/73127914】