【PFLS】長い独白と暇乞い
「こんな夜分に申し訳ございません、協会長。聴いていただきたいお話がございます。少々長くなりますがお時間よろしいでしょうか…?」
「実は私はある名門貴族の生まれなのです。なにぶん幼かったものですから、国は何処だか憶えていませんがエルダーグランではない事は確かです」
「私は物心ついた頃から、次期当主として何不自由無く育てられていたのですが、ある時不慮の事故で右足を失ってしまいました。…それからが地獄の始まりでしたよ……」
「…そして終いには、エルダーグランの森に連れてこられ、そこで全ての記憶を封じられて置き去りにされたのです…」
「今にして思えばあれは事故ではなかったのかも知れません…。何しろ私は酷い落ちこぼれでしたから。何か切り捨てる口実が欲しかったのでしょうね」
「その後、近くに住む高名な魔術師…義父に拾われましてね…私はよく憶えていないのですが、義父によれば保護した当時、私は柊の木の根元に座り込んで泣いていたそうです。
そう、それが私の名『柊』の由来です」
「そして私は義父の元で暮らす事になったのですが、なにぶん多忙な方でしたから何かと留守がちでしてね、使い魔である雌の黒猫が実質私の母親代わりでしたよ、ふふ…」
「それから数カ月は慎ましくも幸せに暮らしていたのですが、またしても事件が起きましてね…。
ええ、義父の留守中に、母親代わりだった黒猫が、私の記憶が魔法で封じられている事に気付いて、解除してしまったのです…。
もちろん彼女は善意でした。記憶が無いのは不安だろう、本当の親に会いたいだろうと、常々心配していましたから」
「私は過去の悪夢……家族や友だと思っていた人々に、侮辱され、迫害され、そして裏切られ捨てられた怒りや悲しみ、さらに過去の栄華への未練にまで飲み込まれてしまいました…。
ええ、あっと言う間に精神を病んでしまいましたよ」
「日に日にやつれていく私を目の当たりにした彼女は、罪悪感に苛まれ、ついにとんでもない行動に出てしまいました…。
……自分の身を犠牲にして私の『生身』の義足になったのです」
「これは、ある魔猫の一族に伝わる秘術で、本来は普通の獣を使用して主の身体の欠損を補う、といったものです。
しかし、彼女はよりによって自分自身、しかも高い魔力を持つ魔猫を使用したものですから、特異な効果が現れたようです…。
彼女の様々な技術や知識、魔力や特殊能力が私に受けつがれたのです。
…ええ、そうです。私の義肢製作魔法や臓器移植魔法、麻酔魔法などは彼女からもたらされたものなのです。
ついでに獣と意を通じ合う力も得ましたが、魔術の素養はあまり受け継がなかったようですね…。基本的な治癒魔法の修得が精一杯でしたよ、ははは…」
「……………………」
「協会長、お願いがございます。暫しの間、お暇をいただけないでしょうか。
今までの私は、この弱さや愚かさ故に過去に囚われる余り、様々なものを見失っていました。
ですが、今こうして誰にも話せなかった事を聴いていただいて、ようやく気持ちの整理がつきました。
私は、本当に護るべき、救うべき存在を、護りたいし救いたい。その為の活動に重きを置きたいのです。
…ご安心ください、別に医術師を辞める訳ではございませんよ、今までやっていた事のメインとサブを入れ替えるというだけですから」
「…ありがとうございます。協会長ならそう仰って下さると思っておりました。
…私のつまらない話に長々と付き合わせて申し訳ございませんでした。それでは自室に戻ります…
…はい?
解っております。協会長もご無理をなさらずご自愛下さい。
…では、失礼いたします…」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
キャラお借りしました
ヴェント協会長【illust/72967498】
うちの愚息 柊【illust/73101698】
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協会長のお部屋、私の画力不足のせいで貧相にしてしまって申し訳ございません…
「実は私はある名門貴族の生まれなのです。なにぶん幼かったものですから、国は何処だか憶えていませんがエルダーグランではない事は確かです」
「私は物心ついた頃から、次期当主として何不自由無く育てられていたのですが、ある時不慮の事故で右足を失ってしまいました。…それからが地獄の始まりでしたよ……」
「…そして終いには、エルダーグランの森に連れてこられ、そこで全ての記憶を封じられて置き去りにされたのです…」
「今にして思えばあれは事故ではなかったのかも知れません…。何しろ私は酷い落ちこぼれでしたから。何か切り捨てる口実が欲しかったのでしょうね」
「その後、近くに住む高名な魔術師…義父に拾われましてね…私はよく憶えていないのですが、義父によれば保護した当時、私は柊の木の根元に座り込んで泣いていたそうです。
そう、それが私の名『柊』の由来です」
「そして私は義父の元で暮らす事になったのですが、なにぶん多忙な方でしたから何かと留守がちでしてね、使い魔である雌の黒猫が実質私の母親代わりでしたよ、ふふ…」
「それから数カ月は慎ましくも幸せに暮らしていたのですが、またしても事件が起きましてね…。
ええ、義父の留守中に、母親代わりだった黒猫が、私の記憶が魔法で封じられている事に気付いて、解除してしまったのです…。
もちろん彼女は善意でした。記憶が無いのは不安だろう、本当の親に会いたいだろうと、常々心配していましたから」
「私は過去の悪夢……家族や友だと思っていた人々に、侮辱され、迫害され、そして裏切られ捨てられた怒りや悲しみ、さらに過去の栄華への未練にまで飲み込まれてしまいました…。
ええ、あっと言う間に精神を病んでしまいましたよ」
「日に日にやつれていく私を目の当たりにした彼女は、罪悪感に苛まれ、ついにとんでもない行動に出てしまいました…。
……自分の身を犠牲にして私の『生身』の義足になったのです」
「これは、ある魔猫の一族に伝わる秘術で、本来は普通の獣を使用して主の身体の欠損を補う、といったものです。
しかし、彼女はよりによって自分自身、しかも高い魔力を持つ魔猫を使用したものですから、特異な効果が現れたようです…。
彼女の様々な技術や知識、魔力や特殊能力が私に受けつがれたのです。
…ええ、そうです。私の義肢製作魔法や臓器移植魔法、麻酔魔法などは彼女からもたらされたものなのです。
ついでに獣と意を通じ合う力も得ましたが、魔術の素養はあまり受け継がなかったようですね…。基本的な治癒魔法の修得が精一杯でしたよ、ははは…」
「……………………」
「協会長、お願いがございます。暫しの間、お暇をいただけないでしょうか。
今までの私は、この弱さや愚かさ故に過去に囚われる余り、様々なものを見失っていました。
ですが、今こうして誰にも話せなかった事を聴いていただいて、ようやく気持ちの整理がつきました。
私は、本当に護るべき、救うべき存在を、護りたいし救いたい。その為の活動に重きを置きたいのです。
…ご安心ください、別に医術師を辞める訳ではございませんよ、今までやっていた事のメインとサブを入れ替えるというだけですから」
「…ありがとうございます。協会長ならそう仰って下さると思っておりました。
…私のつまらない話に長々と付き合わせて申し訳ございませんでした。それでは自室に戻ります…
…はい?
解っております。協会長もご無理をなさらずご自愛下さい。
…では、失礼いたします…」
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キャラお借りしました
ヴェント協会長【illust/72967498】
うちの愚息 柊【illust/73101698】
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協会長のお部屋、私の画力不足のせいで貧相にしてしまって申し訳ございません…
pixivファンタジアLS
pixiv Fantasia: Last Saga
エルダーグラン
Eldergran
【エルダーグラン医療協会】
アナログ
traditional
灰色熊の戦い【緑】
The Battle of Grizzly Bear【green】
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2019-02-20 09:14
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