【ポケフロ0】相見える【汝、捨てる事なかれ。】
────パラパラと雨の音が聞こえる。
ゾルチと原住民に捉えられていたボウケン者のキョウバとアム、そして2人が担いでいる蒼の花の民の一向は、暗い船内をゾルチの先導のもと歩いていた。
「雨の音が聞こえる、外に近い証拠だと思う」
そうゾルチが告げるとキョウバとアムは小さな歓声をあげる。
「この壁から雨の音が聞こえるから、壁に沿って行けばどこかに外に出られる穴があいてるかもしれない」
「ナイスだぜゾルチ、とっととこんな湿っぽいとこからトンズラしてやらぁ」
「姉ぇちゃん、あまり大きな声あげると蒼の花の子たちが…」
「おっと…すまねぇな」
蒼の花の民は相当消耗しており、一刻も早く栄養や光が必要そうに見えた。
「急がないと……────ん…?」
壁の外に意識を向けていたゾルチの耳に、雨音に混じって別の音が届く。
轟々という、まるで強烈な破壊のエネルギーに声を与えたような音だった。
それは、今まさに自分たちのいる空間にぐんぐんと近づいていた。わずかに聞こえただけだが、直感に似た何かがその音が危険なものだと知らせた気がした。
「みんな!壁から離れろ!!」
ゾルチはとっさに声を荒げる。
その切羽詰まった様子を見た蒼の花の民を抱えた2人はバッと壁から離れる、とその刹那──
ドゴン
と、先ほどまで3人が歩いていた箇所の壁が猛烈な熱を伴って吹き飛ぶ。
3人は身を伏せたり手を床につけ爆風に耐える。
「ほぉ…うまく狙ったつもりだったが、よく避けたな」
爆音による耳鳴りでうまく働かない耳に届く、地の底から響くような低い声。
目の見えないゾルチであったが、目の前の、自分たちを攻撃してきた存在が明らかな敵意を持って船の外から攻撃してきたことはわかった。
「おまえは一体……」
「何者かだと…?──俺を忘れたかゾルチ。それともあの導師の仕業か?」
ゾルチは思わず怯んだ。なぜ目の前のこいつはおれの名前を知っている?それだけではない、この言い草ではまるでゾルチ自身が知らないエイリヤに乗る以前のゾルチのことすら知っているかもしれない。
喜ぶべきことであるかもしれないが、ゾルチにはなぜかそれがとても恐ろしいことに感じられた。
「おいゾルチ、あのサザンドラはお前の知り合いか?」
「サザンドラ…?」
少なくとも、エイリヤやこれまで関わったポケの中にサザンドラはいない。静かに首を横に振る。
「まぁいい、お前が覚えていようと覚えていまいと関係はない。俺の目的はお前の中にある俺の力のみだ」
サザンドラは言い捨てると船から少し離れ、エネルギーを溜め始める。
ゾルチの心は恐怖に屈しそうになっていた。自分のしたぬ自分を知り、そして自分を殺そうとするサザンドラ。嫌な汗が吹き出し、足が震える。心臓が早鐘のように打ち、その場から逃げ出せと警告する。
しかし───
後ろにいる2人、そして2人が抱える蒼の花の民たち……このサザンドラの狙いはゾルチだ、自分と一緒に逃げればきっと彼らにも被害が起きる。それだけは……
「キョウバ、アム、おれがあいつに気を引いてるうちにあちらへ走ってくれ」
「あんだと?てめェ1人置いて逃げろってか?」
ヒメグマのキョウバが突っかかる。しかし、すでにゾルチの心は恐怖よりも勇気が少しだけ優っていた。
「おれは大丈夫、さぁ早く!」
震えの止まった足でサザンドラに向きなおる。
サザンドラによって開けられた穴から降りこんだ雨がゾルチの体を濡らす。
雨に濡れた瞬間ぞくりと身震いをするが、気を取り直してゾルチも技を繰り出そうと構える。
その様子を見ていたサザンドラはニヤリと笑い"だいもんじ"をゾルチめがけて放とうとしていた───
◇◇◇
cast
ゾルチ【illust/72599382】
謎のサザンドラ
キョウバ、アム【illust/73451636】
ゾルチと原住民に捉えられていたボウケン者のキョウバとアム、そして2人が担いでいる蒼の花の民の一向は、暗い船内をゾルチの先導のもと歩いていた。
「雨の音が聞こえる、外に近い証拠だと思う」
そうゾルチが告げるとキョウバとアムは小さな歓声をあげる。
「この壁から雨の音が聞こえるから、壁に沿って行けばどこかに外に出られる穴があいてるかもしれない」
「ナイスだぜゾルチ、とっととこんな湿っぽいとこからトンズラしてやらぁ」
「姉ぇちゃん、あまり大きな声あげると蒼の花の子たちが…」
「おっと…すまねぇな」
蒼の花の民は相当消耗しており、一刻も早く栄養や光が必要そうに見えた。
「急がないと……────ん…?」
壁の外に意識を向けていたゾルチの耳に、雨音に混じって別の音が届く。
轟々という、まるで強烈な破壊のエネルギーに声を与えたような音だった。
それは、今まさに自分たちのいる空間にぐんぐんと近づいていた。わずかに聞こえただけだが、直感に似た何かがその音が危険なものだと知らせた気がした。
「みんな!壁から離れろ!!」
ゾルチはとっさに声を荒げる。
その切羽詰まった様子を見た蒼の花の民を抱えた2人はバッと壁から離れる、とその刹那──
ドゴン
と、先ほどまで3人が歩いていた箇所の壁が猛烈な熱を伴って吹き飛ぶ。
3人は身を伏せたり手を床につけ爆風に耐える。
「ほぉ…うまく狙ったつもりだったが、よく避けたな」
爆音による耳鳴りでうまく働かない耳に届く、地の底から響くような低い声。
目の見えないゾルチであったが、目の前の、自分たちを攻撃してきた存在が明らかな敵意を持って船の外から攻撃してきたことはわかった。
「おまえは一体……」
「何者かだと…?──俺を忘れたかゾルチ。それともあの導師の仕業か?」
ゾルチは思わず怯んだ。なぜ目の前のこいつはおれの名前を知っている?それだけではない、この言い草ではまるでゾルチ自身が知らないエイリヤに乗る以前のゾルチのことすら知っているかもしれない。
喜ぶべきことであるかもしれないが、ゾルチにはなぜかそれがとても恐ろしいことに感じられた。
「おいゾルチ、あのサザンドラはお前の知り合いか?」
「サザンドラ…?」
少なくとも、エイリヤやこれまで関わったポケの中にサザンドラはいない。静かに首を横に振る。
「まぁいい、お前が覚えていようと覚えていまいと関係はない。俺の目的はお前の中にある俺の力のみだ」
サザンドラは言い捨てると船から少し離れ、エネルギーを溜め始める。
ゾルチの心は恐怖に屈しそうになっていた。自分のしたぬ自分を知り、そして自分を殺そうとするサザンドラ。嫌な汗が吹き出し、足が震える。心臓が早鐘のように打ち、その場から逃げ出せと警告する。
しかし───
後ろにいる2人、そして2人が抱える蒼の花の民たち……このサザンドラの狙いはゾルチだ、自分と一緒に逃げればきっと彼らにも被害が起きる。それだけは……
「キョウバ、アム、おれがあいつに気を引いてるうちにあちらへ走ってくれ」
「あんだと?てめェ1人置いて逃げろってか?」
ヒメグマのキョウバが突っかかる。しかし、すでにゾルチの心は恐怖よりも勇気が少しだけ優っていた。
「おれは大丈夫、さぁ早く!」
震えの止まった足でサザンドラに向きなおる。
サザンドラによって開けられた穴から降りこんだ雨がゾルチの体を濡らす。
雨に濡れた瞬間ぞくりと身震いをするが、気を取り直してゾルチも技を繰り出そうと構える。
その様子を見ていたサザンドラはニヤリと笑い"だいもんじ"をゾルチめがけて放とうとしていた───
◇◇◇
cast
ゾルチ【illust/72599382】
謎のサザンドラ
キョウバ、アム【illust/73451636】
【ポケフロ0】
Pokémon Frontier
【エイリヤ】
【返咲ツユクサ二番線】
【汝、捨てる事なかれ。:ボウケン者】
nannjisuterukotonakareboukennsha
【新大陸の生存者:ボウケン者】
shinntairikunoseizonnsha
【古の悪神:ボウケン者】
inishienoakushinnboukennsha
【剪裁された希望】
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2019-03-02 23:59
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