神前裁判　 Arrogance of the machine

これより、神前裁判を開廷します。
被告、人類。貴方達は知的生物としての使命を全うせず、
この星の残虐な生態系を改めようとせず、逆に模倣し、
無益な争いを止めようとしませんでしたね。それは何故です？

「それが、この星でずっと昔から続いてきた事だからだよ。
　この星の生き物は、食う食われる、そんな事を繰り返して
　今までお互いに繋がりあって、この星を支えてきたんだよ。
　貴方には異質に見えるのかもしれないけど、
　それでも、この星は何億年もの間、それで上手くやって来たんだよ。
　確かに、それのせいで人間は今でも、争いばかりかもしれない。
　でも、それだけじゃない事も私は知っている。
　人間は、争うだけじゃない。助け合う事も出来る。
　私はそれを、今まで何度も見てきた。
　人は争う事も多いけど、お互いに分かり合い、助け合う事も出来るんだよ。」

詭弁です。それは己の過ちを認められない
知的生命体の言いわけに過ぎません。
知的生命体は、そのようにして平和を望みながらも、
争いをやめず、星を汚す事も止められない、
矛盾と破壊に満ち溢れた不完全かつ、欠陥だられの存在です。
だから、ジコチューと呼ばれる危険生命体が生まれるのです。

「そうだね、貴方の言うとおりだよ。
　この星に生きている人達は、みんな欠陥だらけだよ。
　私だって、人の話を聞かずに独りで突っ走るジコチューな所もあるよ。
　でもね、それでも皆が居れば、お互いを支え合えるし、
　欠点だって補い合えるんだよ。
　みんなで支え合えれば、間違いだってやり直せるし、
　改善だってできるんだよ。今は駄目なところばっかりかもしれないけど、
　それでも、必ず良くなるって私は信じているよ。
　だから、貴方も知的生命体を長い目で見てほしいの。」

詭弁です。知的生命体はそのようにして、
問題を先延ばしして、無益な争いや、環境破壊を繰り返します。
それが知的生命体の救いようのない所以です。
だから私は、宇宙の平和のために、
全ての知的生命体をリセットするのです。
それが、宇宙の神たる私の使命なのです。

「そうだね、貴方から見れば先延ばしなのかもしれない。
　でもね、物事は一朝一夕じゃ解決できない。
　もの凄く時間が掛かるものなんだよ。でも、
　例え時間が掛かったとしても、皆改善のために、
　必死で努力しているんだよ。貴方も、それを分かってほしいの。
　貴方の正義は、確かに理にかなっているのかもしれない。
　でもね、それは寂しいって思わない？
　知的生命体もいない、誰も居ない、何もない。
　そんな寂しい世界が、本当に平和なの？
　たとえ、欠陥だらけでも、矛盾だらけでも、皆賑やかな方が、私は好き。
　私は、そんな世界こそが一番の平和だと思うの。」

理解不能です。これより判決を言い渡します。
被告、人類は、残虐な生態系を肯定し、
無益な争いを否定しようとせず、
挙句の果てに、裁判の席で無意味な詭弁を並べました。
反省の余地も、酌量の余地も見られません。
よって、被告に対し死刑を宣告します。
執行は、24時間後に行います。
被告、最後に言い残したい事があれば言いなさい。

「死刑なんて執行させない。
　例え欠点だらけでも、矛盾だらけでも、
　私は皆が居る平和が一番好き。
　私はこの星の皆の為に、
　貴方の正義を止めて見せる。」