【PFLS】黒魄ノ織 カール【アイゼンバイル】

炎を吹き、戦士達の怒号の飛び交うレッドヴァルの一角。およそ戦場に相応しくないモノがそこに居た。
「それ」は黒いドレスを纏った令嬢の形をした何か。国の存亡を賭けた戦いなど知らぬ顔でひらり、ひらりと夜会のホールに降り立った乙女の如くーーー注視すればそれは男性側のステップであったがーーー舞っていた。

だが「それ」は正しく命を蹂躙するモノであった。
「それ」に近付いた兵士は、魔物は、兵士の姿をした月の従者達は、「それ」が舞う度に黒いドレスから放たれる無数の黒い帯に乱切りにされ、魂を喰われ、絶命した。
「自ら私の贄になりに来るとは殊勝な事だ。だが、この程度ではオードブルにもならんな。」
一通り辺りに動くものが無くなると、「それ」は新たな犠牲者を求めて歩き出す。足取りはとても軽かった。有象無象の魂でも、取り込む程に自分が強化されていくのが分かる。
……今ならば、かの強化兵士達も喰らう事が出来るのではないか？
しかし、アイゼンバイル本部に行きかけた足は枷を嵌められたように動かない。
「…フン、肉体の【元】所有者の最期の抵抗か。まあいいさ。贄は他にも沢山ある。それらを食べて力を付ければ、お前の自我を完全消滅させられるだろうさ。アイゼンバイルの強化兵共を喰らい尽くすのはそれからでも遅くない。」

そしてその時こそ、古代種にも匹敵する力を得るだろうーーーー「それ」は笑みをこぼす。少女の肉体には似つかわしくない、憎しみと悪意に満ちた邪悪な微笑みだった。

「それ」はかつて目立つところのない貴族だった。優秀な兄姉達の足元にも及ばず、鬱屈した日々を過ごしていた。禁忌の恋に手を出し、一時特別感を得るも、予期しない命の誕生により9年に渡りどん底を這い回った。その果てに受けた仕打ちの事は忘れようもない。

「なあ、クロクス。お前は悪い子だ。パパ達をずっと苦しめ続けておきながら、それを忘れていたんだから。」
「それ」は自分の胸に手をあて、微かに残っているであろう娘の自我の残滓に話しかけた。

「だから今度はお前が苦しむ番だ。」

クロクスの魔法に取り込まれ、永劫の苦痛に苛まれながら織り重ねられた千を超える人と魔物と害虫害獣の魂の集合体。それは一際強い憎悪を抱く自我をベースとしてクロクスの肉体を乗っ取り、擬似魔族として変成した。
ーーその名を【黒魄ノ織 カール】と言う。

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■pixivファンタジアLS【illust/72934234】
■最終章「最後の大陸の戦い」【illust/73770102】レッドヴァルの戦い【赤】への投稿作品です！
■クロクスのパパです。娘の肉体を乗っ取りました。最終章はこの姿・人格で参戦します。
■こうなった経緯→「夕闇に染まる空蝉」【https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=10927046】

【キャラクター概要】
名前：黒魄ノ織 カール
性別：肉体:女性/精神:成人男性ベース
年齢：肉体:１２歳/精神:享年２７歳+３年
種族：擬似魔族
身長：１３３㎝
特徴：白から深緑のグラデーションの髪・黒い鱗・緑の両翼・額に三本角・左側頭部から生える二本角・深緑の目・困り眉・緑のリボンに緑のビジュー（「流れ星を拾う」【illust/73699921】での頂き物）
口調：尊大な貴族男性口調
呼称：一人称：「私」、二人称：「お前」「貴様」、三人称：名前呼び捨て

【侵蝕について】
クロクスを守る為に侵蝕を重ねながらカールの存在を忘却下に追いやっていた月ノ断片も、カールら魂魄複合体が肉体の主導権を握ったことにより、力が拮抗。現状、これ以上の侵蝕の進行は無いようだ。
「空？ああ、3年ぶりに自分の目で見る空の青さは格別だな。」

【行動指針】
レッドヴァルにて、月の従者【】やノーザリア兵を喰らい、徐々に力を付けながら前線へと移動中。
アイゼンバイル隊員と遭遇した場合、下記の行動制限により、現時点で致命傷を与えられない事から関わりを避けようとしますが、機嫌を損ねると死なない範囲で手足を切り刻みに掛かります。
「メインディッシュを目前にしながら味わえないとは不愉快だ。失せろ、青二才共め。さもなくば目の一つや二つ潰してやっても構わんぞ？」

【行動制限】
僅かに残るクロクスの自我により、行動制限有り。
①アイゼンバイル隊員への加害制限
同じギルドのメンバーを殺害・捕食しようとると身体が硬直し、思うように動けません。時間の経過とともに、黒魄ノ織でアイゼンバイル隊員を拘束したり、重めの斬撃を加えて行動を封じられるようになりますが、即死レベルの攻撃で魂を捕食する事はまだ出来ない様子。

②緑のリボンの取外し不可
肉体を乗っ取る直前までクロクスが身に付けていた物のうち、ポニーテールに結んだ緑のリボンだけは取り払う事が出来ません。カールとしては、自分の不完全さを見せつけられているようで非常に不本意。

■黒嗤のクロクス【illust/73012719】
肉体の所有権をカールに奪われ、その魂は黒魄ノ織の魂の坩堝の底に沈んだ。

■「鉄斧の誇り」【絵→illust/73980414】【本文→https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=10954919】にて力の大部分を喰われ、討伐されました。(肉体はクロクスが奪還。)魂魄複合体「黒魄ノ織 カール」は分解され、核となっていたカールの魂は虚空へと消えていきました。(4/3)