【PFLS】英雄に誓い、そして【英雄と魔王の戦い】

◆かつて、英雄オールトンに誓った。
　「大切なヒト達を、場所を、失いたくはない。失うわけにはいかない。だから、必ず守ってみせる」と。
　魔物と戦うことはあっても、戦争の経験は無かった。それでも、その手に風切葉の剣を握り、仲間と共に戦場を駆け、自分のできる事を探しながら、戦い抜いた。

　月光の樹海に住まう妖精たちが、崩れる骸木に寄り添うように飛ぶのが見える。
今まで自分たちを見守ってくれた大切な隣人との別れを惜しむように。命の恩人に、感謝を告げるように。

……風切葉の剣を握る手に、力が籠る。
かつての戦争で命を落とし、骸となった英雄は、再び人々を救った。
死してなお、その身の欠片を翼とし、人々を導いた。
黙してなお、その身の一部を刃とし、敵を退けるための剣となった。
そして今。英雄は迫る飛龍をその身を以て制し、崩れ落ちていく。　

そうか。英雄は、今までずっと、
「…ずっと、オレ達と一緒に戦ってくれていたんだ。」

枝葉が朽ち、最後の一振りとなった風切葉の剣を、両手で抱くように握りしめる。

――ありがとう――

伝えようとした感謝は、声に出せなかった。
目頭が熱く、頬が濡れ、うまく、話せない。

『…アレム…泣いてるの…？』

「っ……泣い、て、ない……っっ」

ずっと支えてもらった。
最後の最後まで、守ってもらった。

感謝の気持ちを伝えたいのに、胸が締め付けられるように苦しくて。

アレムは膝をつき、俯く。

『アレム。いいんだよ……オレ達も、同じ気持ちだ。だから、今はいいんだ。』
『アレム…大丈夫…大丈夫だよ……』

3人の妖精たちは、アレムに寄り添う。
「皆のために」と走り続けた友が、自身の感情に、素直に向き合えるように。
　今だけは、精霊術師ではなく、一人の「アレム」という少年でいられるように。

「―――っ！」

英雄オールトン。
あなたのおかげで、オレは最後まで戦うことができた。
あなたのおかげで、オレの大切な友人達の住む森は、守られた。
オレもいつか、あなたのように強く、皆を守れる存在になってみせると誓います。
だから、今だけは……

「っ…うああっ……！」

今だけは、あなたを失った事を嘆き、悲しむ事を、許してください。

◆「……最期を迎えてもなお……か。
本当に、本当にお主は変わらんのぅ……かつてのように勇ましく……」

アメニアはかつての戦友…ネリの隣に飛び、朽ちる骸木を仰ぐ。
過去を懐かしむように。今を労うように。

「……再び共に戦えた事…誇りに思うぞ、オールトン、ネリ。そして……」

―小僧を支えてくれた事、感謝する。

小さく、呟くように、アメニアはそう続けた。

◇お借りしました！
揺籃守のネリ【illust/72937718】
英雄オールトン【illust/72937985】

精霊術師アレム【illust/72938054】
アメニア【illust/73491730】