N.G.トレイン

「私、一駅前から乗ってるんです。そちらの駅の街は、どんなトコロだったんです?」
向かいに座っていた女性が、そう話しかけてきた。

…少し奇抜な風貌したヒトだな。

レトロチックな服装・薄い前髪・赤い口紅が映える厚化粧は、最近の流行りなのか、
どんな所でも見てきた。

だが、その上辺りがまるでトサカのように盛られているのは、見たことがなかった。

"一駅前"の街ってどんなトコロだったのか気になりつつも、問いに答える。

「…とても、いいトコロでしたよ。」

ああ、ホントにいろいろあった。
様々なモノに溢れ、人と人が繋がれることが身近になった。
社会を生きる上での問題や改革が増えてはまた増えてを繰り返して…。

僕の街は、そうやって作られてきた。
その中で、いろんな人間がそれぞれの人生を謳歌している。

想像できるだろうか。目の前の彼女にも、その前の駅から乗った人達にも…。

「まぁ、私の街と同じ。次はどんな街だと思いますか?」

この列車が行く先には何が待つのか、誰も知らない。
これまでの駅やその街のコトは聞いてはいても、これからの駅や街のコトは耳に入らない。

只々、先に向かうだけ。

「…さあ。でも、次の行先もいい街だったらいいなって、僕は思ってます。」

そう会話をしているウチに、列車中には次の駅の到着を告げるアナウンスが響いた・・・―。

『令和、令和です。お降りの際は、足元にご注意ください…。』

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2019-05-02 14:41

 unknow


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