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その声は優しく…

「なぁ、シンヤ。終わりにするか?」

困惑するでもなく、怯えるでもなく…ただ、はっきりと聞こえた言葉が
見えない瞳の代わりに、手探りで俺の輪郭を辿るその手も

スベテが、俺を引き戻す。

引き止めないと
足掻かないと

それは、確かに近いのに
それは、確かに遠いのに

溢れる氷に埋まることは許されないと
それを受け入れることは消すことだと
その信号を、叫びをあげているのは俺だと

今ここで、
今その名を呼ばなければ

目の前の僅かな光も失われると

「…まだ、お前と…アオイと生きていたい」
「そっか」

絞りだした声に返され
背に回った腕に、安堵した。

(今日もお前を殺さずに済んだ)

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2019-09-09 04:57

 葵@のんびり活動


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