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青い翼 (漫画80話)

ダイナミクス豊かで力強く、それでいて女性らしいしなやかさ。千変万化とも言えるフレーズのレパートリーと彩り、ひらめきは官能的でもありながら、実は計算されているしたたかさ。けれども時折、憂いを帯びた音色は迷いがある。ねぇ、あのベースのひと。誰?智華は、十数年振りに訪れたJazzbar「ViridianBlue」のマスター、前田に尋ねた。◆◆
千瀬のことは、他の何よりも優先される。それはやっぱり、時には怒れる事も苛立つ事もたくさんあるし、日々の生活自体がいっぱいいっぱいだけれども、千瀬の喜ぶ顔や元気な姿、声に触れているだけで、それだけで、充たされる。全て報われる。世界とは、そういうものだと千瀬が教えてくれた。1度は音楽に絶望した智華を優しく癒してくれていた。10年という歳月をかけて。その、1度は手離したはずの音楽を、Jazzを、智華は再び求めている。子育てから逃げたいだけなのかもと自問もしたけれども、それは現実逃避でもなければ、もう1度高みを目指すリベンジでも、若い才能への嫉妬でもなく、純粋に音楽のJazzを歌いたいのだと。そして、もう1つ理由があった。千瀬の父親。彼が今、何処で何をしているのかは智華は知っている。知っているけれども、こちらから連絡をする事は、いくつかの理由から躊躇われた。だから、智華自身が知名度を上げ、再び音楽の表舞台で輝けば、彼にも届くと考えている。自分は、ここで元気だと。そして、彼の娘がここにいる、と。ふたりで幸せに暮らしている。と。◆◆
共にJazzを楽しんでくれる、価値観の合う仲間が、パートナーが欲しいわ。けれども…そうね。人を利用する者は必ず報いを受けるもの。だから、それはいけない。この音楽の旅の目的も、どこかで必ず伝えるわ。
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★BGM★
☆Lullaby of Birdland (たなかりか)(Sarah Vaughan)
☆Waltz For Debby (PONTA BOX meets YOSHIDA MINAKO)(Bill Evans)

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2019-11-12 00:19

 すぺ


Comments (2)

こばひろ 2019-11-14 20:36

ああ・・・智華さん本当お綺麗だ・・・。娘と音楽への愛に揺れる彼女の心象が、その後ろ姿にありありと見えるようです。 ビル・エヴァンス・トリオのWaltz For Debby!僕もよく聴くお気に入りの一枚です。

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