私の大切な友達を……マスターを傷つけたのは貴方なのかしら？

―――その戦況は目に分かるほどに劣勢だった。
数々の刺客を前に倒れていく仲間たち。皆が傷つき、血を流し、そして、粒子となって消えていく。
そして……マスターを守る最後の砦でもあった巨大な盾を持つ彼女でさえも地に伏せ、

『……後は貴様だけだ』

人類最後のマスターとして、数々の試練を生き残った彼女だけが生き残ってしまった。
多くの仲間をなぎ払った武器を差し向けられながらもマスターは、彼女は歯を噛みしめながら顔を上げる。
その体には、起き上がれるだけの力は残されていなかった。
その頬には、擦り傷から血がにじみ出ていた。
その瞳には、一滴の涙が溜まっていた。
だが、それでもそんな状況の中でも悲劇の言葉を口に出さなかった。

（負けて……たまるか…………っ）

何故なら、彼女の瞳の奥には――いや、まだその心は折れてはいなかったからだ。
―――――しかし、

『　　　』

現実は無慈悲にもその願いすら塗りつぶす。
敵が発した言葉の後に、向けられていたその武器は振り下ろされる。
そして、その瞬間。
人類最後のマスター―――――――彼女の命は終わりを迎え

『冥界の赤雷よ！』

――――ようとした、その時だった。
空から舞い降りた赤き赤雷が敵を襲い、それと同時にマスターである彼女を守るようにして青き炎を閉じ込めた檻籠が地面からいくつも召還される。
そして――――小さな足音と共に一人の少女の前に一人のサーヴァントがその地に降り立った。

その者の名は冥界の女主人、エレシュキガル。

彼女は顔を背け、背後に倒れた一人の少女を――――傷き、倒れ、そして、涙を流した彼女を見た。
だからこそ、彼女は眉間に力を込め―ー―――敵に向けその言葉を吐いた。

『私の大切な友達を………マスターを傷つけたのは貴方なのかしら？』