【PFAOS】傷跡【原初の星光石】

目が覚めた私は黒煙の斜塔での顛末をディアナから聞く。
カンフィエータ殿の謎の暴走、宝石奴隷の末路、襲撃者をディアナがあの力を使って退かせた事、皆が懸命に私の傷を治してくれたり航海遠征隊に搬送された事…
そうか、私はまた守れなかったのか…。
ディアナが呪いに掛かった時も、ギムナルースを訪れたあの時も、そして今度も…。

コンコン、とドアをノックする音が聞こえた。

「失礼する」

入室してきた男はイルド・ヨークタウン・グレイヴス、と名乗り軽く自己紹介を済ませた後、ディアナから聞き出せなかった黒煙の斜塔での出来事を分かる範囲で話してくれないかと私に訊ねてきた。

「……貴殿方には感謝しています…ですが、申し訳御座いません。私も、話す訳にはいかないのです…」

そもそも此度の襲撃に関しては謎な点が多過ぎる上に、恩人達を危険な事に巻き込む訳にはいかない。

「…そうか」

イルド殿はこれ以上聞くのは無駄かという雰囲気で眉間に皺を寄せつつ一緒に持って来たコヒーが入ってるサーバーをカップに傾けてコヒーを注ぎ始めた。

「飲むか？担当医からはもう飲食はしても大丈夫だろうという診断は聞いている」

コヒー独特のアロマの香りが広がる。

「…では、お言葉に甘えて…」

カップを受け取り、コヒーを口に含む。
口と鼻に広がるフレーバー、そして…

「…っ、濃い…ですね…」
ブレンド等に彼独自の拘りを持っているのだろうか。色もコクも苦味もかなり、濃い。

「目が覚める濃さだろ？」
「そう、ですね」

少しずつ、飲んでみる。
確かに濃いが、コヒーの風味は心を落ち着かせてくれる。

「…無理に話せ、とは言うつもりはない。ただ、これは性分でな、未知が怖い。未知を解明して不安を取り除きたい。それだけだ」
「……」

一口、コヒーを飲んで此方に視線を向けてくる。

「大分無茶をしている様だ…と治療中に身体の古傷を見た担当医が言っていた。何が有ったかはこれ以上は聞かない。が、折角助かった命だ。あまり抱え込み過ぎるな。」

イルド殿の顔の傷跡を見る。
彼も彼なりに何かを抱え込んでいるのだろうか。

常に目を見開き思考を巡らせる…淹れるコヒーが彼の人となりを表してる様だ…とそう私は思った。

身体の傷は癒えつつある。
が、心の傷は未だ癒せずにいる。

私は、どうすれば良いのだろうか。

引き続きインターバル時系列でハイペリア帝国軍 航海遠征隊様【illust/79076180】にお邪魔中です。
問題有りましたらスルー&パラレルでお願いします。

▼素敵ロゴ【illust/78953358】

●自キャラ(ディートリヒ&ディアナ)【illust/78957144】

◆キャラ等お借りしました！
(名前だけですが)カンフィエータさん(冒険者衣装)【illust/79973059】
イルドさん【illust/79226093】
コヒー【illust/79149662】