【PFAOS】幽鬼だった少年の魂

「ふぅ…冥主様の"鯨波"のおかげで、何とか私たちでも倒せたね」
「もう、本当に無茶するんだから！　でもやったね、さっそく解放した魂を…って、えぇ！？」

驚いたことに、その魂は少年だった。

いや、少年の魂と遭遇すること自体は別に珍しくない。にもかかわらず、なぜ驚いたのか。
それは倒した幽鬼"アゲナ・ケラヴノス"から解放した魂が、少年のものだったからだ。

そもそも幽鬼とは「海で漂う魂が星の影響を受けて、変質してしまったもの」である。
その幽鬼を倒すことで、変質してしまった魂を開放…つまるところ元に戻せる事があるのだが…屈強で強そうな「アゲナ・ケラヴノス」を解放して出てきた魂が、年端も行かない少年だったので思わず面食らったのだ。

「とはいえ、とにかく連れて行ってあげましょう、ここはまだ危ないし」
「まって、この子、まだ冥海には行きたくないって」

少年の魂が言うには、冥海に行く前に、せめて一目だけでもまだ生きている母親に会いたいのだという。

それを聞いたリュイは、少し言いづらそうに、こそっとソナに耳打ちする。
「気持ちはわかるけど…危ないんじゃないかな…
そのお母さんがこの子を見ちゃったら動揺しそうだし、最悪、この子のあとを追って一緒に死んじゃうかも…
それに、この子自身が一目会っただけじゃ満足できずに、悪霊になっちゃうかもしれないわよ」
「…それは…そうかもしれない」

でも、ソナはやっぱり会わせてあげたいと思った。
だってこの子は、あれほど強力な幽鬼になったからだ。
「アゲナ・ケラヴノス」は幽鬼の中でも非常に強力な部類である。それこそ冥主の支援が必要なほどに。

漂う魂の全てが、そんな強力な幽鬼になれる訳ではない。
ともすれば想いの強い魂ほど、強い幽鬼になるのではないかと、ソナは思っていた。
そんな強い強い想いを持ち、幽鬼になってまで膨らんだその想いを、どうしても放っておけなかった。

想いが強いからこそ、リュイが言うような危険性が高いのはわかる。
でも
想いが強いからこそ、その願いは報われるべきだと思う。

だから、リスクがあったとしてもその想いに報いたい。

そうリュイに伝えると、彼女は呆れたように、だが優しく笑った。

「そう言いそうな気はしてたわよ、ほんと仕方がないんだから」
「うん、ありがとうリュイ」

あなたのお母さんに会いに行こう。

そういって、少年の魂を抱きしめてあげた。

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転ばぬ先のリュイ【illust/79128550】
鯨波【illust/79950643】
鯨骨の刃【illust/79895966】
雷角の戦鬼"アゲナ・ケラヴノス"【illust/79879755】
ギルドイメージハイヒールⅥ【illust/79820573】（履き替えました）
音響霊探のソナ【illust/79170786】