ひと夏のメモリー

「プールっていいよなぁ……。」
「なんだい真司、藪から棒に。」

今日は夏のプールの時間。
言ってしまえば体育の時間だが。

「ほら鷹士、あれ見てみろよ。」
「あれ？」

真司が指さす先には、鷹士もよく見知った「幼なじみ」が映る。
奈海はちょうど、一旦プールから上がっていたところだった。

「水も滴る髪！程よく揺れるバスト！そして……日ごろから戦いで鍛えてるであろう大腿部！！」
「・・・。」

そりゃあ、真司も鷹士も思春期真っ只中の男子高校生だ。
あんなものを見せられれば何かしら反応したくなるものだが。

「お前はいいよなぁ……あのボディを好き放題できるんだから。」
「お前の言っていることを1ミリも理解したくないんだが。」

となりでぶつぶつ言ってる奴のテンションの落差が激しすぎて、鷹士のテンションは氷点下だ。
真夏だからちょうどいい。
が、そろそろうるさいと思い始めたころ。

「50m競争で負けたからって絡まないの。」
「……。」

親友の援護で、この会話は打ち切られた。
が、新たな火種がすぐ横でパシャパシャと音を立てている。
水の音じゃない、パシャパシャだ。

「で、カンナ。そっちは何してるのさ。」
「むふふふー、盗撮ですよぉ盗撮ゥー。」

明言したら盗撮にはならないのではないか、なんて思ってると、

「むふふふ、中身は野獣ですが見た目はそれなりに需要があるようですからねぇ……この水着写真を一枚2500円ほどで売り出せば私の研究費もガッポガッポってうっきゃあああああああああああああああ！！！？」

・・・おかしいね。
カンナのオデコに、見事にホイッスルが突き刺さってるよ。
その異常事態にビビってスッ転んだ真司と肩をすくめる吼介はともかく、

「……。」
「―――わわわ！？」

真司にあれこれ言われたせいか、鷹士は奈海の体から目が離せなくなったとかそうじゃないとかで、一切リアクションしてなかったそうな。
この数日後にプールでの事件でまた一波乱あるのだが、それはまた別の話だ。

＊＊＊
なんとなく思いついたので描いてみた短編です。
本編中では水泳の授業してなかったしね。

カンナと真司がいるとオチが作りやすくていいですね。
4枚目はちょっとしたネタです。
風呂入る時と寝るとき以外はずっとつけてます。
彼からの視線の意図に気付けないのもそれはそれで初々しいんじゃないですかね（