【PFMOH】欲喰いの鎮魂歌【アフター交流】
病に苦しみながらも自らの願いに従って地図を描き続けるレコルドと出会ったデコイ。
それぞれの歩いた旅路を語り合う内に、気がつけば既に日が傾き始めていた。
「わ、もう日が暮れますね」
「楽しい時間は早く過ぎ去るものサ」
運良く洞窟を見つけ、交代で眠りにつく。
「チミは先に休むと良いよ、ボクはこいつを仕上げたいからね」
そう言いながらペンを走らせるレコルドは、子供のように無邪気な笑みを浮かべる。
カリカリと小気味良い音を聞きながら、やがてデコイは眠りについた。
...どれ程の時間がたっただろうか?
空には既に星が輝いていた。
「おや、起こしてしまったかい?」
「ごめんなさい、寝過ごしました?」
交代の時間を過ぎたかと焦るデコイだったが、レコルドのぼんやりとした瞳は、咎める事もなくゆっくりと空を見上げる。
「チミの分の地図ができたところだから、丁度良いくらいサ」
そう言うと、レコルドは綺麗に写された真新しい地図をデコイに手渡す。
「ありがとうございます」
「お安い御用サ」
少し疲れ気味に目をこするレコルドだったが、何故か眠ろうとはしない。
「レコルドさんは、眠らないんですか?」
デコイの問いかけに、レコルドは深く刻まれたクマを指先で撫でる。
「情けない話だけどね、眠るのが少し怖いのサ」
「眠るのが、怖い?」
睡眠は生きていく上で欠かせない。
それを怖がるとはどういう事なのか?
デコイの疑問を見透かしたように、レコルドは苦笑する。
「ボクは、ヘヴンへ残りの命をかけて挑む覚悟を持っていたつもりだった...たとえ、途中で力尽きたとしても悔いはないとね...」
岩の隙間から流れ込む風に吹き消されそうな声は、地図を描いていた時とは別人のように弱々しい。
「だけど、地図が埋っていくほどに、ここまで作り上げた地図を完成させる前に死ぬんじゃないか、眠ったらそのまま目が覚めないんじゃないか...そう考えてしまうのサ」
生きたいと願う事は、時として過剰な恐怖心を産み出すことがある。
自らの死期を悟った者ならば、尚更だろう。
「レコルドさん、その欲を私にくれませんか?」
突然の提案にレコルドが首をかしげたのは言うまでもない。
「生きたいと思う欲を私が貰えば、きっと眠る事ができます、このままじゃ病気の前に寝不足で死んじゃいますよ?」
呆気に取られていたレコルドではあったが、彼とてヘヴンを目指し、ここまで登ってきた挑戦者である。
目の前にいる少女が冗談や狂言を吐いていない事くらいは理解できる。
「チミの話してくれた、イヤーカフの力かい?」
レコルドの確認するような声に、デコイはしっかりと頷いた。
「なるほど...それじゃあ、ひとつ子守唄をリクエストしようかな?」
「私、子守唄なんて知らないですよ?」
困惑するデコイが面白いのか、レコルドは瞳を閉じて、静かに笑う。
「チミの知ってる歌なら何でも良いサ」
冷たい岩肌を背中に感じながら、デコイも瞳を閉じて、唯一の歌を口ずさむ。
「る~♪るらる~♪るらる~♪」
歌に呼応するように、欲喰いのイヤーカフが淡く輝き、レコルドを深紅の光が包み込む。
やがて、風に乗った歌声が夜空に溶けて消えた時、夜空に輝く小さな星がひとつ、落涙のように燃え尽きた。
――――――――――
⚫メタ
レコルドさんの親御さんから許可をいただいて、レコルドさんの生への欲求を奪いました。
レコルドさんの描いた途中までの地図(写し)をいただきました。
どうかレコルドさんが安らかに眠れますように。
不穏な終わり方ですが、解釈はレコルドさんのご自由です。
レコルドさんの行動や方針を制限する意図はございません。
ご都合が悪ければ、パラレルスルーいただけますと幸いです。
―――――――――――
○お借りした方
薄命の記録者レコルドさん【illust/87876623】
⚫使用アイテム
欲喰い竜のイヤーカフ【illust/88034094】
―――――――――――
名無しのデコイ(アフター版)【illust/90162700】
参加させていただいた企画(終了済)
PixivファンタジアMOH【illust/87556705】
それぞれの歩いた旅路を語り合う内に、気がつけば既に日が傾き始めていた。
「わ、もう日が暮れますね」
「楽しい時間は早く過ぎ去るものサ」
運良く洞窟を見つけ、交代で眠りにつく。
「チミは先に休むと良いよ、ボクはこいつを仕上げたいからね」
そう言いながらペンを走らせるレコルドは、子供のように無邪気な笑みを浮かべる。
カリカリと小気味良い音を聞きながら、やがてデコイは眠りについた。
...どれ程の時間がたっただろうか?
空には既に星が輝いていた。
「おや、起こしてしまったかい?」
「ごめんなさい、寝過ごしました?」
交代の時間を過ぎたかと焦るデコイだったが、レコルドのぼんやりとした瞳は、咎める事もなくゆっくりと空を見上げる。
「チミの分の地図ができたところだから、丁度良いくらいサ」
そう言うと、レコルドは綺麗に写された真新しい地図をデコイに手渡す。
「ありがとうございます」
「お安い御用サ」
少し疲れ気味に目をこするレコルドだったが、何故か眠ろうとはしない。
「レコルドさんは、眠らないんですか?」
デコイの問いかけに、レコルドは深く刻まれたクマを指先で撫でる。
「情けない話だけどね、眠るのが少し怖いのサ」
「眠るのが、怖い?」
睡眠は生きていく上で欠かせない。
それを怖がるとはどういう事なのか?
デコイの疑問を見透かしたように、レコルドは苦笑する。
「ボクは、ヘヴンへ残りの命をかけて挑む覚悟を持っていたつもりだった...たとえ、途中で力尽きたとしても悔いはないとね...」
岩の隙間から流れ込む風に吹き消されそうな声は、地図を描いていた時とは別人のように弱々しい。
「だけど、地図が埋っていくほどに、ここまで作り上げた地図を完成させる前に死ぬんじゃないか、眠ったらそのまま目が覚めないんじゃないか...そう考えてしまうのサ」
生きたいと願う事は、時として過剰な恐怖心を産み出すことがある。
自らの死期を悟った者ならば、尚更だろう。
「レコルドさん、その欲を私にくれませんか?」
突然の提案にレコルドが首をかしげたのは言うまでもない。
「生きたいと思う欲を私が貰えば、きっと眠る事ができます、このままじゃ病気の前に寝不足で死んじゃいますよ?」
呆気に取られていたレコルドではあったが、彼とてヘヴンを目指し、ここまで登ってきた挑戦者である。
目の前にいる少女が冗談や狂言を吐いていない事くらいは理解できる。
「チミの話してくれた、イヤーカフの力かい?」
レコルドの確認するような声に、デコイはしっかりと頷いた。
「なるほど...それじゃあ、ひとつ子守唄をリクエストしようかな?」
「私、子守唄なんて知らないですよ?」
困惑するデコイが面白いのか、レコルドは瞳を閉じて、静かに笑う。
「チミの知ってる歌なら何でも良いサ」
冷たい岩肌を背中に感じながら、デコイも瞳を閉じて、唯一の歌を口ずさむ。
「る~♪るらる~♪るらる~♪」
歌に呼応するように、欲喰いのイヤーカフが淡く輝き、レコルドを深紅の光が包み込む。
やがて、風に乗った歌声が夜空に溶けて消えた時、夜空に輝く小さな星がひとつ、落涙のように燃え尽きた。
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⚫メタ
レコルドさんの親御さんから許可をいただいて、レコルドさんの生への欲求を奪いました。
レコルドさんの描いた途中までの地図(写し)をいただきました。
どうかレコルドさんが安らかに眠れますように。
不穏な終わり方ですが、解釈はレコルドさんのご自由です。
レコルドさんの行動や方針を制限する意図はございません。
ご都合が悪ければ、パラレルスルーいただけますと幸いです。
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○お借りした方
薄命の記録者レコルドさん【illust/87876623】
⚫使用アイテム
欲喰い竜のイヤーカフ【illust/88034094】
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名無しのデコイ(アフター版)【illust/90162700】
参加させていただいた企画(終了済)
PixivファンタジアMOH【illust/87556705】
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2021-06-10 23:45
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