「1人じゃないよ」
⚠流血注意⚠
↓ストーリー↓
半羊獣人の少年と半兎獣人の少女。
半獣人が混合する村に住んで平和な日々を過していた彼らだったが、ある日狼獣人の集団が村へ訪れた。狼獣人たちは半獣人の彼らを「食べ物」として認識していた。
半羊獣人の少年は、この村でひっそりと恋をしていた。その相手は半兎獣人である少女だった。彼は彼女へ自分の思いを伝える為に村に伝わる恋愛成就の木の実を取りに、村の周辺を散策していた。
数時間探した末にやっとの思いで見つけた、赤く輝く木の実。数個取るとポケットに忍ばせてなるだけ早く村へ向かう。
村に近付くと共に血の匂いが濃くなる。
彼は嫌な予感を感じながらも村へと戻った。
村へ帰った彼は絶望した。
半兎獣人の少女が目の前で赤い液体を纏い横たわっていたのだ。
呼吸が早くなり、視界がぼやけた。
「...どう、して...?
リジィ、早く起きてよ...
僕、君に渡したいものがあるんだ。
君の為に頑張って探したんだよ?
だから目を覚ましてよ...
お願いだから...」
彼女の骸を見つめて呟いた。
彼の中で彼女との思い出ばかり出てくる。
楽しかった思い出、悲しかった思い出、喧嘩した思い出、恋に苦しんだ思い出。
もう戻らないと思うと彼は苦しんだ。
途端、後ろから足音が聞こえた。
少食獣の足音とは違った重みのある音。
彼は全てがどうでも良くなった。
きっとこれは村を襲った狼の足音だ。
リジィを食ったヤツの足音だ。
少食獣の僕じゃ肉食獣にたった1匹で立ち向かうなんて無理だ。
ごめんね皆、リジィ。
復讐も出来なくて、ごめん。
許してくれるよね...
彼はそう心の中で嘆いて涙でグシャグシャな顔で笑った。
瞬間に目の前が黒で染まり、何も見えなくなった。まだ神経が微かに通っていた。
倒れた時、感じた。
指先から彼女の手を。
「あーあ、死んじゃったの?」
少女の声が頭に響いた。
妙にリアルな声がした。
「私と同じ狼に食べられちゃったんだね」
体が動く感覚を感じた。
少年が目を開けた。
「嬉しくないけど、また会えたから少しだけ良かったなって思っちゃったな」
少女の苦しそうな、嬉しそうな笑顔が少年の目に入ってきた。
「り、リジィ?」
「他の誰に見えるの?おバカなメルト」
「リジィ...本当に君なんだね」
「だから〜、他の誰に───────」
少年は少女を抱きしめた。
強く、強く、優しく抱きしめた。
目には涙が溢れ返っている。
少女は少年を落ち着かせるために最初は驚いていたが、背中を撫でて安心させた。
「メルトくんは相変わらず甘えん坊だなぁ」
「うるさい」
からかわれていても、少年は抱きしめることをやめはしなかった。
少女はそれがとても愛おしく感じた。
少し経ったら少年は落ち着いたらしく、少女から離れた。少女は少しだけ悲しそうにした。
「リジィ...ここってどこなの?」
「わからないけど、私は死んだから死後の世界ってことじゃないかな?」
「死後の世界...」
「こんなに綺麗な場所見たことないよ」
一面に続く青い景色、所々に焼けた家らしき痕跡が残っていた。
他の人はいないのが不思議だったが、彼にとってはまた少女に出会えたことが嬉しかった。
彼が不意にポケットの中に手を突っ込む。
彼は驚いた。
木の実がそこに入っていたのだ。
「...ねぇ、リジィ」
「?」
「僕君に伝えたいことがあったんだ」
「なぁに?」
手を出してと少年が言う。
少女が手を出すと、少年のはポケットから取り出した木の実を少女の手に乗せた。
「君が好きだよ、リジィ」
「...」
「君はどう?」
「私も...私も好きよ、メルト」
嬉しそうに少女は涙を流した。
少年も言えずに終わらずに良かったとホッとして笑った。
「でもこれは生きてる時に言われたかったなぁ」
「うっ、ごめん...」
「許してあげな〜い」
少女は少年の元から走り出した。
少し離れたところに行くと、振り返った。
そして「ほら、早く行こ!」と言った。
少年は少女の後を追って歩き出した。
END
↓ストーリー↓
半羊獣人の少年と半兎獣人の少女。
半獣人が混合する村に住んで平和な日々を過していた彼らだったが、ある日狼獣人の集団が村へ訪れた。狼獣人たちは半獣人の彼らを「食べ物」として認識していた。
半羊獣人の少年は、この村でひっそりと恋をしていた。その相手は半兎獣人である少女だった。彼は彼女へ自分の思いを伝える為に村に伝わる恋愛成就の木の実を取りに、村の周辺を散策していた。
数時間探した末にやっとの思いで見つけた、赤く輝く木の実。数個取るとポケットに忍ばせてなるだけ早く村へ向かう。
村に近付くと共に血の匂いが濃くなる。
彼は嫌な予感を感じながらも村へと戻った。
村へ帰った彼は絶望した。
半兎獣人の少女が目の前で赤い液体を纏い横たわっていたのだ。
呼吸が早くなり、視界がぼやけた。
「...どう、して...?
リジィ、早く起きてよ...
僕、君に渡したいものがあるんだ。
君の為に頑張って探したんだよ?
だから目を覚ましてよ...
お願いだから...」
彼女の骸を見つめて呟いた。
彼の中で彼女との思い出ばかり出てくる。
楽しかった思い出、悲しかった思い出、喧嘩した思い出、恋に苦しんだ思い出。
もう戻らないと思うと彼は苦しんだ。
途端、後ろから足音が聞こえた。
少食獣の足音とは違った重みのある音。
彼は全てがどうでも良くなった。
きっとこれは村を襲った狼の足音だ。
リジィを食ったヤツの足音だ。
少食獣の僕じゃ肉食獣にたった1匹で立ち向かうなんて無理だ。
ごめんね皆、リジィ。
復讐も出来なくて、ごめん。
許してくれるよね...
彼はそう心の中で嘆いて涙でグシャグシャな顔で笑った。
瞬間に目の前が黒で染まり、何も見えなくなった。まだ神経が微かに通っていた。
倒れた時、感じた。
指先から彼女の手を。
「あーあ、死んじゃったの?」
少女の声が頭に響いた。
妙にリアルな声がした。
「私と同じ狼に食べられちゃったんだね」
体が動く感覚を感じた。
少年が目を開けた。
「嬉しくないけど、また会えたから少しだけ良かったなって思っちゃったな」
少女の苦しそうな、嬉しそうな笑顔が少年の目に入ってきた。
「り、リジィ?」
「他の誰に見えるの?おバカなメルト」
「リジィ...本当に君なんだね」
「だから〜、他の誰に───────」
少年は少女を抱きしめた。
強く、強く、優しく抱きしめた。
目には涙が溢れ返っている。
少女は少年を落ち着かせるために最初は驚いていたが、背中を撫でて安心させた。
「メルトくんは相変わらず甘えん坊だなぁ」
「うるさい」
からかわれていても、少年は抱きしめることをやめはしなかった。
少女はそれがとても愛おしく感じた。
少し経ったら少年は落ち着いたらしく、少女から離れた。少女は少しだけ悲しそうにした。
「リジィ...ここってどこなの?」
「わからないけど、私は死んだから死後の世界ってことじゃないかな?」
「死後の世界...」
「こんなに綺麗な場所見たことないよ」
一面に続く青い景色、所々に焼けた家らしき痕跡が残っていた。
他の人はいないのが不思議だったが、彼にとってはまた少女に出会えたことが嬉しかった。
彼が不意にポケットの中に手を突っ込む。
彼は驚いた。
木の実がそこに入っていたのだ。
「...ねぇ、リジィ」
「?」
「僕君に伝えたいことがあったんだ」
「なぁに?」
手を出してと少年が言う。
少女が手を出すと、少年のはポケットから取り出した木の実を少女の手に乗せた。
「君が好きだよ、リジィ」
「...」
「君はどう?」
「私も...私も好きよ、メルト」
嬉しそうに少女は涙を流した。
少年も言えずに終わらずに良かったとホッとして笑った。
「でもこれは生きてる時に言われたかったなぁ」
「うっ、ごめん...」
「許してあげな〜い」
少女は少年の元から走り出した。
少し離れたところに行くと、振り返った。
そして「ほら、早く行こ!」と言った。
少年は少女の後を追って歩き出した。
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2021-10-16 22:11
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