怪獣大作戦シリーズ
完全なる者 無敵怪獣ブニー
第16話「手も足も出ない」
「空蝉航空隊より報告。航空攻撃すべて通じず。要対象被害なし」
出撃の航空隊からの報告は、想定外の内容であった。
「現場の被害状況を報告せよ」
「出現点、現状・・・損害および被害は、ありません」
空虻六区(カラアブロック)は、高層ビルや商業施設の林立する副都心。繁華街でもある。
この地域で40メートルもの巨大生物が暴走でも起こすものなら被害は甚大である。
防衛軍は、直ちに航空隊を出撃させたわけなのだが・・・
「なんだと・・・、ではいったい何をしているのだ」
「映像を送信します」
映像が防衛軍本部の画面に映し出される。
「ナー・・・ナー・・・」
「・・・あたりを見渡しては、鳴いているだけじゃないか・・・」
楢場(ナラバ)作戦参謀は、不要な攻撃が思わぬ事態を招くのではとの懸念を抱く。
「長官。であるならば、攻撃を中止いたしましょう。他の地域に誘導することの方がこの場合適切では」
「うぅむ・・・如何に致すかな」
と、本部にもたらされた報告は、意外なものであった。
「報告いたします。過去の文書をあたっていたところ、興味深いものを見つけました」
資料によると、防衛軍が設立される約28年前に同種の生物が出現した記録があった。
それは、本土から南の海上300浬の孤島においての記録であった。
水軍部隊、南方方面海域においての巨大生物対処の概要。
艦砲射撃、無効。
航空攻撃、無効。
液体水素冷凍攻撃、無効。
超電圧電撃攻撃、無効。
催涙ガス及び麻酔弾投下、無効。
「何をやっても、通じなかったのか」
結局のところ、当時の戦力の粋を結集した総合攻撃でも、何も効果を得ることはできなかったのだ。
現状と同様、無害無毒の状況に似ている。
それは、経過観察を続けるうちに突如消えてなくなったのだという。
だが、今回は副都心に出現している。放っておくというわけにも行かないのだ。
「せめて、郊外に移動させる方法くらいは無いものだろうか・・・」
破壊行動や、火炎を吐くなどの事態は免れているものの、「ナー」と鳴くその声は、それだけでも相当な騒音だ。
出来る限りの方法が試され、対処が試みられたが、効果は無い。
今までに経験のない特殊な状況に、防衛軍は「無敵」という言葉を思わず漏らしていた。
全く相手にされていない。一体何をどうすれば・・・
住民は避難し、街は無人となった。
騒音がなくなり、静寂が訪れる繁華街に、奇妙な鳴き声が響く。
人類は、遠隔カメラで観察するしかない。
そんな中・・・
どこからか迷い込んだ一匹の野良犬。
生物の足元で、けたたましく吠えた。
それまで、何の反応も起こさなかった怪獣ブニーがビクッと鳥肌を立てた。
人類は、まだ気付かずにいた。
第16話「手も足も出ない」
「空蝉航空隊より報告。航空攻撃すべて通じず。要対象被害なし」
出撃の航空隊からの報告は、想定外の内容であった。
「現場の被害状況を報告せよ」
「出現点、現状・・・損害および被害は、ありません」
空虻六区(カラアブロック)は、高層ビルや商業施設の林立する副都心。繁華街でもある。
この地域で40メートルもの巨大生物が暴走でも起こすものなら被害は甚大である。
防衛軍は、直ちに航空隊を出撃させたわけなのだが・・・
「なんだと・・・、ではいったい何をしているのだ」
「映像を送信します」
映像が防衛軍本部の画面に映し出される。
「ナー・・・ナー・・・」
「・・・あたりを見渡しては、鳴いているだけじゃないか・・・」
楢場(ナラバ)作戦参謀は、不要な攻撃が思わぬ事態を招くのではとの懸念を抱く。
「長官。であるならば、攻撃を中止いたしましょう。他の地域に誘導することの方がこの場合適切では」
「うぅむ・・・如何に致すかな」
と、本部にもたらされた報告は、意外なものであった。
「報告いたします。過去の文書をあたっていたところ、興味深いものを見つけました」
資料によると、防衛軍が設立される約28年前に同種の生物が出現した記録があった。
それは、本土から南の海上300浬の孤島においての記録であった。
水軍部隊、南方方面海域においての巨大生物対処の概要。
艦砲射撃、無効。
航空攻撃、無効。
液体水素冷凍攻撃、無効。
超電圧電撃攻撃、無効。
催涙ガス及び麻酔弾投下、無効。
「何をやっても、通じなかったのか」
結局のところ、当時の戦力の粋を結集した総合攻撃でも、何も効果を得ることはできなかったのだ。
現状と同様、無害無毒の状況に似ている。
それは、経過観察を続けるうちに突如消えてなくなったのだという。
だが、今回は副都心に出現している。放っておくというわけにも行かないのだ。
「せめて、郊外に移動させる方法くらいは無いものだろうか・・・」
破壊行動や、火炎を吐くなどの事態は免れているものの、「ナー」と鳴くその声は、それだけでも相当な騒音だ。
出来る限りの方法が試され、対処が試みられたが、効果は無い。
今までに経験のない特殊な状況に、防衛軍は「無敵」という言葉を思わず漏らしていた。
全く相手にされていない。一体何をどうすれば・・・
住民は避難し、街は無人となった。
騒音がなくなり、静寂が訪れる繁華街に、奇妙な鳴き声が響く。
人類は、遠隔カメラで観察するしかない。
そんな中・・・
どこからか迷い込んだ一匹の野良犬。
生物の足元で、けたたましく吠えた。
それまで、何の反応も起こさなかった怪獣ブニーがビクッと鳥肌を立てた。
人類は、まだ気付かずにいた。
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2021-11-21 01:37
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