君はいない
黒い狐の友人にとある1本の桜の木がおりました。『ソメイヨシノ』という品種にしてはとても長生きしている大きな木です。
昔はその桜を見に人間達が来てお花見をしたりしておりました。
しかし時が経つにつれ忘れ去られてしまったのか人間達は誰も来ずツルが絡みついたり、他の植物に寄生されたりしてしまっています。
それでもその木は人間達が好きだったので『またいつか自分を見に人間達が来るかもしれない』と思い毎年美しい桜を咲かせておりました。
そんなひたむきに美しい桜の木のことを黒い狐は好きでした。
けれども桜の木が想っているのは人間達のことだったのでそのことは打ち明けず、いつも桜の木の前に現れては他愛もない話相手をしていました。
ある春のこと1人の人間が度々桜の木の前に現れるようになりました。
桜の木はその人間のことが好きになりました。
桜の木はそのことをとても嬉しそうに黒い狐に語っていました。
桜の木の願いが叶って嬉しかったのですがその姿が辛くて黒い狐は桜の木の前から姿を消しました。
何度目かの春、黒い狐はそれでも桜の木が好きだったので一目見ようと桜の木の元へ向かいました。
桜の木があったところには建物が建っていました。
あの人間は桜の木を見に来ていたのではなかったのです。
『ソメイヨシノ』という品種の桜は人間が1本の木から作られたクローンの木です。
黒い狐は桜を見る度にあの桜の木を思い出すのでした。
昔はその桜を見に人間達が来てお花見をしたりしておりました。
しかし時が経つにつれ忘れ去られてしまったのか人間達は誰も来ずツルが絡みついたり、他の植物に寄生されたりしてしまっています。
それでもその木は人間達が好きだったので『またいつか自分を見に人間達が来るかもしれない』と思い毎年美しい桜を咲かせておりました。
そんなひたむきに美しい桜の木のことを黒い狐は好きでした。
けれども桜の木が想っているのは人間達のことだったのでそのことは打ち明けず、いつも桜の木の前に現れては他愛もない話相手をしていました。
ある春のこと1人の人間が度々桜の木の前に現れるようになりました。
桜の木はその人間のことが好きになりました。
桜の木はそのことをとても嬉しそうに黒い狐に語っていました。
桜の木の願いが叶って嬉しかったのですがその姿が辛くて黒い狐は桜の木の前から姿を消しました。
何度目かの春、黒い狐はそれでも桜の木が好きだったので一目見ようと桜の木の元へ向かいました。
桜の木があったところには建物が建っていました。
あの人間は桜の木を見に来ていたのではなかったのです。
『ソメイヨシノ』という品種の桜は人間が1本の木から作られたクローンの木です。
黒い狐は桜を見る度にあの桜の木を思い出すのでした。
5
9
363
2022-04-07 21:55
Comments (1)