第三十八話「なか卯の自販機のあほー！」

　僕は基本、一人仕事で、そのやりとりはメールなので、ほとんど人と喋らない。
　極端な日は、一日を振り返って
「並のツユダクくれー」
　以外、喋らなかった日のもある位だ。
　ところが、そのたった一言も先日、奪い取られた。

「なか卯」だ。
　なか卯は「自動販売機」なのだ。
　
　いくらなんでも自販機に「並みのツユダクくれー」とは言えない。
　だから、とても大切な一言がここでは発せられない。
　しかし、喋れない位ならこれほど腹を立てない。
　
　取りやがったのだ！あの自販機。

　自販機にお金を入れて「和風牛丼・並」のボタンを押したら、あの自販機やろう、でかい声で、僕が言うはずの
「ギュウドン　ナミ」
　を言いやがったんだ。

　こらー！

　たった一言の僕のコミュニケーションを返せーーーー！
　心からほとばしる僕の無言の叫びを奪うなーーー！
　機械のくせに、しゃべるなーーーーー！

　なか卯の自販機の、あほー！

　店で叫ぶと変なおっさんだと思われるから、ここで叫んでやる！
　なか卯の自販機の、あほー！
　（ちょっとすっとした