スクタリ、星の海

クリミア戦争中、英陸軍の病院はトルコのコンスタンティノープル（現イスタンブール）のアジア側のスクタリ（現ユズキュダル）にあり、ナイチンゲールはトルコ領内における英陸軍病院総看護師長の肩書だった。これが黒海対岸にあるクリミア半島側の病院との対立や軋轢をもたらすのだが・・。
スクタリから見えるボスポラス海峡対岸にあるコンスタンティノープルの街がどう見えるかは、筆者の想像である。夜、そこから見える星空がどう見えるかは、さらにその想像である。
スクタリの病院から宿舎に移動する途中、ナイチンゲールはペットのフクロウだったアテネちゃんが現れたと手紙に書いている。この時点でアテネちゃんは既に死んでしまっていたのだが、そこで見たアテネちゃんはナイチンゲールの「幻覚」だったのかどうかは分からない。ヒュー・スモール著「ナイチンゲール　神話と事実」（みすず書房）にその手紙が書かれている。
コンスタンティノープルの明るい夜景とは裏腹にスクタリの人気のない夜空の下で、アテネちゃんがナイチンゲールを背後からそっと見守っている。