泥まみれの大健闘

シーン（泥テクスチャつき）
https://mega.nz/file/oFRzXRCR#lzEBN0jeIRGeDya_QIBGcW5-K4o_yNbjdOBfW_2fKU4

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クラシック級未勝利戦。東京レース場芝2000ｍ左回り。
一緒に走る15人の分析は完璧。展開のシミュレーションも何百回とした。トレーナーが頭を捻りながら考えてくれたトレーニングメニューのおかげで、過去最高に体重をつけることだってできてる。今回こそは勝ちに行く。そう思ってたのに。バ場状態は予報外の豪雨で見たことないぐらいの不良になった。これが最悪だった。この条件下での僕の着順は良くて5着。それが何百と試行を重ねてきたデータが指し示す結果だった。

実際にレースは僕の思う通りに動いて、理想的なポジションで走れて、仕掛けどころも正しかったはずだ。でもダメだ。僕の脚はあんな田んぼみたいな地面でまともに加速できるほどいいモノじゃなかった。人並み以上にデータと向き合ったおかげで稼いだ距離は、最終直線で瞬く間に詰められていく。一人、また一人と僕の横を追い越して行く背中は、メンツも、順位も事前のシミュレーション通り。それに無性に腹が立つ。走る前からわかってるんだよ？こうなることぐらい。でも、この瞬間だけは何よりも信用足り得るはずのデータが最高に疎ましいんだよ。負けたくない。ここからは僕の思考はそれ一色になる。理性をかなぐり捨てて、闘志の赴くままひたすらに脚を動かす。そうするとデータ上では起こり得ない事象が起きたりする。それをこの身で体感するのが自分で走ることの醍醐味かな。今回であれば重馬場のシミュレーション上では一度も勝てたことのない11番の娘より先着できちゃったりね。そして大抵正気に戻った頃にはレースは終わってる。3着。事前の予想からすれば大健闘と言っていい。

「ふぅ……こんな感じかな。思い出して解説にちょっと熱が入りすぎちゃったけど。あとは……これが2回目の掲示板入りで、あのひらひらの衣装着て踊ったのは初めてのことだった、とか？……ゑ？控室に戻る前にユークちゃんと何を話したかって？……の、ノーコメントだよ。彼女には何もかも敵わないよとだけ……」　　─オラクル

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