瓜食めば……
なめ太郎、なめすけ、なめ藤。
ぬいぐるみを依り代とするくせに、暁月のキノコ型式神はものを食べるし寝るし、椀の中で湯に浸かるのが大好きだったりする。
最初の一体である「なめ太郎」は別として、他の二体は主の好文木がチクチク裁縫して依り代を縫い上げているところを見ているだけに、蜂須賀虎徹は謎生物の生態が心底不思議だった。
今日も暁月と一緒に本丸に遊びに来たなめ藤が、しまりのない顔でオヤツの瓜を食べている。
もぐもぐ もぐもぐ ぱくん
「んふ~♪」
小さなキノコの頭部に呑み込まれていく瓜………あの小さい体のどこに入るのだろう? 歯は? 消化器官は? 排泄……しているところを見たことがないが、どうなっているのだろうか。
自分達刀剣男士も「刀」だが、今は人間と同じ肉体を持っているから、疑問を抱いたことはなかった。が、こいつらときたら……伸び縮みするし変身するし、胞子を飛ばして時々増えるし……謎すぎる。
主はおおらかで細かいことを気にしないたちだから、ほけほけ笑っているが! 少しは警戒心を抱いてほしい。なめ太郎達は可愛いだけのぬいぐるみじゃない、本性は「呪い」のキノコだぞ!
んふんふ鳴いてマヌケな顔をしているが、気を許してはいけないんだ………と蜂須賀虎徹は初期刀と真作の矜持で絆されまいと踏みとどまっているのだ。こうして見ているのだって、良くない変化にいち早く対応できるようにとっ、決して愛でているわけじゃなくてっ。
「んふ!」
縁側で「監視」している蜂須賀に気付いたなめ藤が、顔中を瓜の汁だらけにして手を振る。
「こらっ、とびつくな。着物が汚れるだろう。ったく、種も皮も丸呑みしているのは行儀が悪いぞ」
「んふ~」
何が悪いのかわかってない、きょとんとしているなめ藤に蜂須賀はふとイタズラ心を起こした。
「瓜の種を丸呑みすると、腹の中で芽を出すんだ。そしてお前の頭から瓜の双葉が生えてくるんだぞ」
「んふ!?!?!?!?!?」
小さなキノコの想像の中で、頭から双葉が生え、成長してゆく。
瓜の花に栄養を吸い取られて、シワシワの枯れキノコになった自分まで鮮明にイメージしてしまったなめ藤は、震え上がった。
「んふんふんふんふ──っ!」
その後、脱兎の如く好文木のところに走って行ったなめ藤が、鳴きながら訴えたことで、主と近侍の髭野郎に白い目で見られることになろうとは、流石の真作にも予想外のことだった。
「こんな純真で素直ななめ藤を泣かせるとは」
「言っていいことと悪いことがあるだろう」
「ち、ちがうっ、ちょっと行儀が悪いから躾けてやろうと……ただの冗談だったんだっ」
「んふ~~~~」
どうしてこうなった、と蜂須賀虎徹は焦りながら弁明する。
──やっぱりこのチビどもが居るだけで、俺の心に安寧は無い!
瓜食めば子ども思ほゆ栗食めばまして偲はゆ
いづくより来りしものそ目交にもとなかかりて安眠しなさぬ
・・・・
・・・
・・
(オマケ)
「瓜食めば子ども思ほゆ栗食めばまして偲はゆ
いづくより来りしものそ目交にもとなかかりて安眠しなさぬ」
出典:万葉集
作者:山上憶良
意訳:瓜を食べると子どものことが自然に思われる。粟を食べれば、いっそうしのばれる。
いったい子どもたちはどこから来たものなのだろうか(どのような縁で、私の子どもとしてやってきたのだろうか)。目の前にやたらと(子どもたちの姿が)ちらついて、安眠させてくれないことよ。
絵師さん曰く、夏の怪談(?)ネタです(笑)。スイカを食べてるなめ藤に、蜂須賀が「種を丸ごと呑んだら頭から芽が出ますよ」と、子供を注意させる時によくやるジョークを言ったら、信じて泣いた話。普段はなめ藤がやらかす役ですけど、たまに逆にするのもいいと思います。──というメッセージがあったので、西瓜が出てくる歌を探したのですが、……無いんですよね。近代の俳句ばっかり。なので代わりに「瓜」の有名な歌を。
蜂須賀さん、しばらくは瓜を食べる度に、なめ藤のトラウマが蘇ることでしょう。ちっちゃい子に振り回されてアタフタする蜂須賀さんって可愛いですね。( ^∀^ )ニコニコ
彼はなめ藤達のことを謎生物と思ってますが、刀剣男士もけっこう謎な存在デスヨネー。大人も昔は子どもだったのに、子どもの心は解らなくて夜も眠れぬほどに悩まされるのと似ている……かも?
ぬいぐるみを依り代とするくせに、暁月のキノコ型式神はものを食べるし寝るし、椀の中で湯に浸かるのが大好きだったりする。
最初の一体である「なめ太郎」は別として、他の二体は主の好文木がチクチク裁縫して依り代を縫い上げているところを見ているだけに、蜂須賀虎徹は謎生物の生態が心底不思議だった。
今日も暁月と一緒に本丸に遊びに来たなめ藤が、しまりのない顔でオヤツの瓜を食べている。
もぐもぐ もぐもぐ ぱくん
「んふ~♪」
小さなキノコの頭部に呑み込まれていく瓜………あの小さい体のどこに入るのだろう? 歯は? 消化器官は? 排泄……しているところを見たことがないが、どうなっているのだろうか。
自分達刀剣男士も「刀」だが、今は人間と同じ肉体を持っているから、疑問を抱いたことはなかった。が、こいつらときたら……伸び縮みするし変身するし、胞子を飛ばして時々増えるし……謎すぎる。
主はおおらかで細かいことを気にしないたちだから、ほけほけ笑っているが! 少しは警戒心を抱いてほしい。なめ太郎達は可愛いだけのぬいぐるみじゃない、本性は「呪い」のキノコだぞ!
んふんふ鳴いてマヌケな顔をしているが、気を許してはいけないんだ………と蜂須賀虎徹は初期刀と真作の矜持で絆されまいと踏みとどまっているのだ。こうして見ているのだって、良くない変化にいち早く対応できるようにとっ、決して愛でているわけじゃなくてっ。
「んふ!」
縁側で「監視」している蜂須賀に気付いたなめ藤が、顔中を瓜の汁だらけにして手を振る。
「こらっ、とびつくな。着物が汚れるだろう。ったく、種も皮も丸呑みしているのは行儀が悪いぞ」
「んふ~」
何が悪いのかわかってない、きょとんとしているなめ藤に蜂須賀はふとイタズラ心を起こした。
「瓜の種を丸呑みすると、腹の中で芽を出すんだ。そしてお前の頭から瓜の双葉が生えてくるんだぞ」
「んふ!?!?!?!?!?」
小さなキノコの想像の中で、頭から双葉が生え、成長してゆく。
瓜の花に栄養を吸い取られて、シワシワの枯れキノコになった自分まで鮮明にイメージしてしまったなめ藤は、震え上がった。
「んふんふんふんふ──っ!」
その後、脱兎の如く好文木のところに走って行ったなめ藤が、鳴きながら訴えたことで、主と近侍の髭野郎に白い目で見られることになろうとは、流石の真作にも予想外のことだった。
「こんな純真で素直ななめ藤を泣かせるとは」
「言っていいことと悪いことがあるだろう」
「ち、ちがうっ、ちょっと行儀が悪いから躾けてやろうと……ただの冗談だったんだっ」
「んふ~~~~」
どうしてこうなった、と蜂須賀虎徹は焦りながら弁明する。
──やっぱりこのチビどもが居るだけで、俺の心に安寧は無い!
瓜食めば子ども思ほゆ栗食めばまして偲はゆ
いづくより来りしものそ目交にもとなかかりて安眠しなさぬ
・・・・
・・・
・・
(オマケ)
「瓜食めば子ども思ほゆ栗食めばまして偲はゆ
いづくより来りしものそ目交にもとなかかりて安眠しなさぬ」
出典:万葉集
作者:山上憶良
意訳:瓜を食べると子どものことが自然に思われる。粟を食べれば、いっそうしのばれる。
いったい子どもたちはどこから来たものなのだろうか(どのような縁で、私の子どもとしてやってきたのだろうか)。目の前にやたらと(子どもたちの姿が)ちらついて、安眠させてくれないことよ。
絵師さん曰く、夏の怪談(?)ネタです(笑)。スイカを食べてるなめ藤に、蜂須賀が「種を丸ごと呑んだら頭から芽が出ますよ」と、子供を注意させる時によくやるジョークを言ったら、信じて泣いた話。普段はなめ藤がやらかす役ですけど、たまに逆にするのもいいと思います。──というメッセージがあったので、西瓜が出てくる歌を探したのですが、……無いんですよね。近代の俳句ばっかり。なので代わりに「瓜」の有名な歌を。
蜂須賀さん、しばらくは瓜を食べる度に、なめ藤のトラウマが蘇ることでしょう。ちっちゃい子に振り回されてアタフタする蜂須賀さんって可愛いですね。( ^∀^ )ニコニコ
彼はなめ藤達のことを謎生物と思ってますが、刀剣男士もけっこう謎な存在デスヨネー。大人も昔は子どもだったのに、子どもの心は解らなくて夜も眠れぬほどに悩まされるのと似ている……かも?
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2022-08-02 20:30
Comments (3)
はらはら、蜂須賀様,意地悪ですよ\(//∇//)\,なめ藤を虐めないでね。
更新ありがとうございます!スイカの種ネタ、どの国も似てますね。なめ藤も蜂須賀さんも、これからしばらく瓜を避けそうです(笑) でもなめこ達の生態は本当に謎ですね…