【PFSOZ】Right Eyed
「この区間、どのチームが山岳賞獲ると思う?」
中間地点の休憩所に設けられた天幕の下で、アルバートはブランデーの炭酸割りをひと息に呷った。不審人物の報せが入り急遽足を止める羽目になったが、冷えた飲み物を飲むことが出来るのは非常に有難かった。
「賭けは駄目よ」
エイスが答えるよりも早く、シヴィラが止めに入る。
「レースで賭けなんて、皆やってるだろ。頭の固い女だな」
「今回は主催なのよ。公平性に欠けると批判されるだけだわ。あと頭が固いは余計なお世話ね」
「まあ、そういうことだから、別の機会にしよう」
「そうかあ……俺が負けたら、ウチにある一番いい酒奢ろうと思ってたんだけどなあ」
別の機会はいくらでもあることだし、シヴィラの言うことも最後のものを除けばもっともだったが、取り成す様に振る舞うエイスの言葉に、アルバートは殊更残念そうに返した。
「えっ」
「駄目よエイス。悪魔の誘惑に乗らないで」
気を引かれたエイスの様子に、シヴィラが焦った様子で割って入る。
「誰が悪魔だ、悪魔に失礼だろうが」
王子は軽く噴き出し、グラスをテーブルに置いた。
「しかし、フォークナー家所蔵の一番いい酒か……惜しいな……」
「本当に駄目よエイス。自制心を保って」
賑やかに言い合う二人を眺めていると、不意に頭の中に声が響いた。
『アルバート様、少々お時間よろしいでしょうか』
『ああ』
念話は音を介さず頭に直接伝わるのに、方向がなんとなくわかるのが不思議だ。警戒させない為、わざとわかるようにしているのかもしれない。
そう思いながら短く返すと、見知った顔の男が近付いてきた。護衛と連絡役を兼ねてこちらに随伴している、保安局の特殊部隊の男だ。確かドゥルーヴ といっただろうか。
男は膝をつき落し物を拾ったふりをして、アルバートに何かを渡そうとしてくる。鎖に通された金の指輪。それには見覚えが、いや、込められた魔術の波長に覚えがあった。父サイラスのものだ。
「おっと、すまねえな」
アルバートは椅子から身を乗り出し、男の方に顔を寄せ、声と頭で別の言葉を返した。
『何かあったのか?』
漠然と、嫌な予感がした。普段、父が息子に直接ではなく、この様に人を介して物を渡してくることはない。
「いえ」
『閣下よりアルバート様にと』
男の返答は、アルバートの期待した内容ではなかった。
『親父に何かあったのかと聞いている』
『閣下は現在、御自宅で采配を振っておられます。「連絡が必要な時はその指輪を使うように」とのことです』
「質問の答えになっていない」
アルバートは思わず、直接声に出した。大きい声ではなかったが、エイスとシヴィラにも聞こえてしまっただろう。従者の失敗を責めているように見えるかもしれない。
「申し訳ございません」
ドゥルーヴ・ファウラーは逡巡してうつむき、低い声で囁くように言った。
『……閣下は体調を崩され、本日より御自宅で「最低限の業務のみ行なう」とのことです』
----
基本強めの幻覚です。
本当はもっと早くに出したかったんですが無理でしたね……
□アルバート・フォークナー illust/102015015
□ドゥルーヴ・ファウラー シクステン ・ブロムダール illust/102295215
中間地点の休憩所に設けられた天幕の下で、アルバートはブランデーの炭酸割りをひと息に呷った。不審人物の報せが入り急遽足を止める羽目になったが、冷えた飲み物を飲むことが出来るのは非常に有難かった。
「賭けは駄目よ」
エイスが答えるよりも早く、シヴィラが止めに入る。
「レースで賭けなんて、皆やってるだろ。頭の固い女だな」
「今回は主催なのよ。公平性に欠けると批判されるだけだわ。あと頭が固いは余計なお世話ね」
「まあ、そういうことだから、別の機会にしよう」
「そうかあ……俺が負けたら、ウチにある一番いい酒奢ろうと思ってたんだけどなあ」
別の機会はいくらでもあることだし、シヴィラの言うことも最後のものを除けばもっともだったが、取り成す様に振る舞うエイスの言葉に、アルバートは殊更残念そうに返した。
「えっ」
「駄目よエイス。悪魔の誘惑に乗らないで」
気を引かれたエイスの様子に、シヴィラが焦った様子で割って入る。
「誰が悪魔だ、悪魔に失礼だろうが」
王子は軽く噴き出し、グラスをテーブルに置いた。
「しかし、フォークナー家所蔵の一番いい酒か……惜しいな……」
「本当に駄目よエイス。自制心を保って」
賑やかに言い合う二人を眺めていると、不意に頭の中に声が響いた。
『アルバート様、少々お時間よろしいでしょうか』
『ああ』
念話は音を介さず頭に直接伝わるのに、方向がなんとなくわかるのが不思議だ。警戒させない為、わざとわかるようにしているのかもしれない。
そう思いながら短く返すと、見知った顔の男が近付いてきた。護衛と連絡役を兼ねてこちらに随伴している、保安局の特殊部隊の男だ。確かドゥルーヴ といっただろうか。
男は膝をつき落し物を拾ったふりをして、アルバートに何かを渡そうとしてくる。鎖に通された金の指輪。それには見覚えが、いや、込められた魔術の波長に覚えがあった。父サイラスのものだ。
「おっと、すまねえな」
アルバートは椅子から身を乗り出し、男の方に顔を寄せ、声と頭で別の言葉を返した。
『何かあったのか?』
漠然と、嫌な予感がした。普段、父が息子に直接ではなく、この様に人を介して物を渡してくることはない。
「いえ」
『閣下よりアルバート様にと』
男の返答は、アルバートの期待した内容ではなかった。
『親父に何かあったのかと聞いている』
『閣下は現在、御自宅で采配を振っておられます。「連絡が必要な時はその指輪を使うように」とのことです』
「質問の答えになっていない」
アルバートは思わず、直接声に出した。大きい声ではなかったが、エイスとシヴィラにも聞こえてしまっただろう。従者の失敗を責めているように見えるかもしれない。
「申し訳ございません」
ドゥルーヴ・ファウラーは逡巡してうつむき、低い声で囁くように言った。
『……閣下は体調を崩され、本日より御自宅で「最低限の業務のみ行なう」とのことです』
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基本強めの幻覚です。
本当はもっと早くに出したかったんですが無理でしたね……
□アルバート・フォークナー illust/102015015
□ドゥルーヴ・ファウラー シクステン ・ブロムダール illust/102295215
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2022-12-10 11:16
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