【PFSOZ】我々の道はまだこの先【蹄王賞】
その少年は生まれながらに乗馬の才能に恵まれていながらも、それに甘えることなく日々の努力を怠らなかった。周りの人間は彼を褒めたたえながらも、一つだけ大きな心配事があった。
「貴方は才能に恵まれているけど、一つだけ、足りないものがある。いえ、足りてないのではなく、十分過ぎている。貴方のその体躯は……騎手を目指すものとしては、大きすぎるのです」
そう、少年の体躯は若くして大きく、このまま成長を続ければ背が低いことが有利である騎手の世界では向かない、といった心配であった。でも、その度に少年はこう答えてみせたのだ。
「ご心配なく、僕の道は僕が決められます」
時は流れ、少年がその国の王として即位した最初の年。訓練学校を視察していると、施設の裏庭で泣いている生徒がいた。その少女は小さな頃から馬が大好きで、騎手の世界に憧れてこの学校に入学したのだが、周囲の生徒を見て自信を無くしてしまっていたのだ。
「背が大きいと騎手にはなれないって話を聞いて……ここの馬もみんな私を見ると怯えちゃって……私、騎手にはなれないんじゃないかって……」
それは乗馬スキルの才能とかの話ではなく、体躯の違いだ。少女はオーガの種族で、自分の田舎の村では誰よりも背が低かったのだが、生まれて初めて他種族の子たちを肩を並べたこの学校内では、その体躯は浮いてしまう程に大きかったのだ。でも、その時に王はこう答えてあげたのだ。
「大丈夫、貴方の道は貴方が決められます」
異国の地ゼラルディアの朝焼けを見ながら、王はそのことを思い出す。それが、バラリア・レース参加の切っ掛けだった。この国のこの時期にしか現れない馬、ケルベロホース。この馬を乗りこなすには高い乗馬スキルもそうだが、なにより必要なのは―――――体躯。通常の馬の3倍もある力に負けないほどの強靭な体躯だ。この世界の何処かには必ず、屈強な体躯が求められる騎手の世界が存在するということを、証明したかった。あの生徒にも、同じ悩みを抱えた未来の騎手志望の子たちにも。そうして、ここにいるのだ。
ブック、ギニン、ゲイムは毛布にくるまれて、頭を寄り添わせて眠っている。3頭とも仲がよさそうだ。ケルベロホースが解除された時、ギニンは両方を伴侶に選ぶのかもしれない。それもまた、いいだろう。朝日がさすと、3頭が一斉に目覚めた。じっと見つめるその眼をそれぞれ見つめ返し、王はこう答える。
「では行きましょうか、我々の道はまだこの先ですから」
あの日、裏庭で泣いていたあの生徒は、今は立派に大型馬専門の騎手として活躍中との便りが届いている。私も、私が決めた道の途中ですから、負けていられませんね。
フリークスダービー非公式イベント「蹄王賞」 illust/103276572 の参加作品です……! ブックギニンゲイム&ラストロンリコ illust/103420498 の話を描きました。もっと色々描いてはみたかったですが、これが最後となります。どうもありがとうございました!
【公式目録等】
pixivファンタジア Scepter of Zeraldia 企画目録 illust/101965643
PFSOZ プロローグ illust/101965958
PFSOZ 勢力紹介 illust/101966087
ゼラルディア王国の地図 illust/101966183
ゼラルディアの通貨・商品 illust/102298632
PFSOZ第三章「聖夏祭」 illust/103207230
第三章 中間結果発表 illust/103365142
「貴方は才能に恵まれているけど、一つだけ、足りないものがある。いえ、足りてないのではなく、十分過ぎている。貴方のその体躯は……騎手を目指すものとしては、大きすぎるのです」
そう、少年の体躯は若くして大きく、このまま成長を続ければ背が低いことが有利である騎手の世界では向かない、といった心配であった。でも、その度に少年はこう答えてみせたのだ。
「ご心配なく、僕の道は僕が決められます」
時は流れ、少年がその国の王として即位した最初の年。訓練学校を視察していると、施設の裏庭で泣いている生徒がいた。その少女は小さな頃から馬が大好きで、騎手の世界に憧れてこの学校に入学したのだが、周囲の生徒を見て自信を無くしてしまっていたのだ。
「背が大きいと騎手にはなれないって話を聞いて……ここの馬もみんな私を見ると怯えちゃって……私、騎手にはなれないんじゃないかって……」
それは乗馬スキルの才能とかの話ではなく、体躯の違いだ。少女はオーガの種族で、自分の田舎の村では誰よりも背が低かったのだが、生まれて初めて他種族の子たちを肩を並べたこの学校内では、その体躯は浮いてしまう程に大きかったのだ。でも、その時に王はこう答えてあげたのだ。
「大丈夫、貴方の道は貴方が決められます」
異国の地ゼラルディアの朝焼けを見ながら、王はそのことを思い出す。それが、バラリア・レース参加の切っ掛けだった。この国のこの時期にしか現れない馬、ケルベロホース。この馬を乗りこなすには高い乗馬スキルもそうだが、なにより必要なのは―――――体躯。通常の馬の3倍もある力に負けないほどの強靭な体躯だ。この世界の何処かには必ず、屈強な体躯が求められる騎手の世界が存在するということを、証明したかった。あの生徒にも、同じ悩みを抱えた未来の騎手志望の子たちにも。そうして、ここにいるのだ。
ブック、ギニン、ゲイムは毛布にくるまれて、頭を寄り添わせて眠っている。3頭とも仲がよさそうだ。ケルベロホースが解除された時、ギニンは両方を伴侶に選ぶのかもしれない。それもまた、いいだろう。朝日がさすと、3頭が一斉に目覚めた。じっと見つめるその眼をそれぞれ見つめ返し、王はこう答える。
「では行きましょうか、我々の道はまだこの先ですから」
あの日、裏庭で泣いていたあの生徒は、今は立派に大型馬専門の騎手として活躍中との便りが届いている。私も、私が決めた道の途中ですから、負けていられませんね。
フリークスダービー非公式イベント「蹄王賞」 illust/103276572 の参加作品です……! ブックギニンゲイム&ラストロンリコ illust/103420498 の話を描きました。もっと色々描いてはみたかったですが、これが最後となります。どうもありがとうございました!
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第三章 中間結果発表 illust/103365142
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2022-12-11 22:15
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