【PFSOZ】影渡りは今日も世を渡る
「・・・調子はどう?」
とある一室にてナイトシェードの影士の一人、耳なしのエルルカが目の前に居る頭部に包帯を巻いた女性影士に声を掛ける。
「身体も精神も現状良くも悪くもない・・・か な。身体の負傷は本来ならサキノハカの治癒力ですぐ治る筈だけど今回は途中からどうも治りが遅いん だ。精神に関しても、ボクの心を埋め尽くしていたあの激しい怒りは、今は鳴りを潜めてるみた い」
「平和を壊したあの連中を許せないのは今も変わらないけれど、目覚めた後に連中の殆どが壊滅したと理解してからは不思議と落ち着いていったん だ」
「・・・けれども感じるんだ、胸の奥にドス黒い何かが今も渦巻いているの は。一度受け入れてしまった以上は、収まる事はあっても決して消えはしないんだろうね"これ" は」
エルルカの問いに女性影士は、影渡りのルオリスはサキノハカの結晶の大元がある左胸に手を添えながら答えた。
「まともな状態に戻れただけまだマシだよお前は。本格的に狂気に呑まれたヤツってのはそのまま戻ってこれなくなる場合が多いからな」
「それに、胸中に抱える狂気をそう簡単に消せるのなら、俺達だって苦労はしねぇよ」
そう答えたのはエルルカの隣にいる男性影士、シドだった。
口調こそ普段と同じくやや荒いが、彼がルオリスの身を案じているのは明白だった。
「あの時心身ともに激しく消耗したあなたを見つけた時はどうなるかと思ったけど、回復して本当によかった」
「それと、今のあなたの身体の状態を報告しておく。あなたの身体を診断した影士から伝えるよう頼まれてたから」
「本来ならボクが聞きに行くべきだったのに、手間をかけさせてごめん ね。・・・それで、診断結果 は?」
ルオリスが申し訳無さそうに謝罪した後、己の身体状況を改めて問い、それに対してエルルカは静かに答えた。
「現状、あなたの身体を侵食したサキノハカの結晶はある程度は削減済み。けれど上半身の3分の1は結晶に覆われている状態で、結晶は変色したまま、今後も侵食加速の恐れあり、だって・・・」
「そうなん だ・・・流石にこの状態じゃ民間服も今のから変えたほうがよさそうか な。結構気に入っていたんだけどねあ れ」
エルルカから言い渡された自身の状態を聴き、ルオリスは無表情で答えた。
重い空気と沈黙が場を包んだがしばらくしたのち、ルオリスは改めて二人に向き合い口を開いた。
「・・・それはそうと改めてだけど、二人共ありがとう ね。キミ達が居なかったら、ボクはあそこで命散らしていただろうか ら」
「実際命散らす覚悟で全力で戦っていたんだけ ど・・・それでもキミ達があの時駆けつけてくれたおかげでこうして命を繋げる事ができ た」
「----だから、心から感謝するよ」
礼を告げたルオリスの表情は、今までのような無表情ではなく、少しではあるが優しげな笑みを浮かべていた。
「意外だな、ずっと無表情だったお前でもそんな顔ができたのか」
「感情表現はずっと苦手だったんだけど、皮肉なことにあの暴走がきっかけで、感情の表し方というのを少し理解できたから ね」
「だから、結果はどうあれ後悔はしてな い。あれはボクが覚悟を決めてやった事だから、責任は最後まで持たなきゃ ね」
「本当、バカが付くほど真面目な所は変わってねぇなお前・・・」
シドの感想に真剣な顔をして真面目な返答をしたルオリスに、やや呆れながらシドは呟いた。
「さて、ここでいつまでもお喋りをしている訳にも行かないしそろそろ動くとする よ」
「オイオイ、病み上がりだってのに本当に大丈夫か?」
「体力はまだ万全とは言えない ね。だからしばらくは戦闘を控えて裏方に回る よ。それに今回の一件で滅茶苦茶になった王都の復興にも個人的に手を貸したいし ね」
「二人はこの後どうする の?」
「俺はまぁ、今は何の予定もないし何かあった時に備えて待機してるわ」
「あたしも、このままここに残るよ」
「そ う。それじゃあ後の事は頼んだ よ。外の事はボクが情報集めて来るから ね」
そう言い終わるとルオリスはマントを羽織り、側の影から影渡りを発動し二人の前から瞬く間に姿を消した。
「本当思い切りが良いというか、行動力の塊だなルオリスのヤツ・・・」
「そうだね。けど、そこが彼女の良さでもあるよ」
ルオリスを見送った二人はルオリスの飛び込んだ影を見ながら、そう言葉をかわした。
影渡りのルオリスは、今日も世を渡る
ゼラルディアの平和の為に、仲間の為に命を懸けて頑張り続ける
いつか訪れる最期の時まで、影渡りは世を渡る-----------
-----------------------------------------------
ルオリスのエンディングです。これにてSOZ本編における彼女の物語は締めとなります。
本編期間中お世話になった方々、本当にありがとうございました。
【illust/103917455】の流れから今回の話に続いています。
ルオリスが戻ってこられた理由としては殲滅対象であった今回の騒動を引き起こした者達が殆ど壊滅した事により幸いにも狂怒状態の解除条件を満たした事もありますが、心身ともにギリギリの時にエルルカさん達が駆けつけてくれた事によりルオリスの心がどうにか保った事もあります。
薄れゆく意識の中であっても、狂気と怒りに侵された状態であっても、ルオリスは確かにあの時二人が駆けつけてくれていたことを認識できました。
それが今回の結果に繋がっています。
お借りしました
耳なしのエルルカさん【illust/102023546】
シドさん【illust/102425321】
影渡りのルオリス【illust/102115292】
とある一室にてナイトシェードの影士の一人、耳なしのエルルカが目の前に居る頭部に包帯を巻いた女性影士に声を掛ける。
「身体も精神も現状良くも悪くもない・・・か な。身体の負傷は本来ならサキノハカの治癒力ですぐ治る筈だけど今回は途中からどうも治りが遅いん だ。精神に関しても、ボクの心を埋め尽くしていたあの激しい怒りは、今は鳴りを潜めてるみた い」
「平和を壊したあの連中を許せないのは今も変わらないけれど、目覚めた後に連中の殆どが壊滅したと理解してからは不思議と落ち着いていったん だ」
「・・・けれども感じるんだ、胸の奥にドス黒い何かが今も渦巻いているの は。一度受け入れてしまった以上は、収まる事はあっても決して消えはしないんだろうね"これ" は」
エルルカの問いに女性影士は、影渡りのルオリスはサキノハカの結晶の大元がある左胸に手を添えながら答えた。
「まともな状態に戻れただけまだマシだよお前は。本格的に狂気に呑まれたヤツってのはそのまま戻ってこれなくなる場合が多いからな」
「それに、胸中に抱える狂気をそう簡単に消せるのなら、俺達だって苦労はしねぇよ」
そう答えたのはエルルカの隣にいる男性影士、シドだった。
口調こそ普段と同じくやや荒いが、彼がルオリスの身を案じているのは明白だった。
「あの時心身ともに激しく消耗したあなたを見つけた時はどうなるかと思ったけど、回復して本当によかった」
「それと、今のあなたの身体の状態を報告しておく。あなたの身体を診断した影士から伝えるよう頼まれてたから」
「本来ならボクが聞きに行くべきだったのに、手間をかけさせてごめん ね。・・・それで、診断結果 は?」
ルオリスが申し訳無さそうに謝罪した後、己の身体状況を改めて問い、それに対してエルルカは静かに答えた。
「現状、あなたの身体を侵食したサキノハカの結晶はある程度は削減済み。けれど上半身の3分の1は結晶に覆われている状態で、結晶は変色したまま、今後も侵食加速の恐れあり、だって・・・」
「そうなん だ・・・流石にこの状態じゃ民間服も今のから変えたほうがよさそうか な。結構気に入っていたんだけどねあ れ」
エルルカから言い渡された自身の状態を聴き、ルオリスは無表情で答えた。
重い空気と沈黙が場を包んだがしばらくしたのち、ルオリスは改めて二人に向き合い口を開いた。
「・・・それはそうと改めてだけど、二人共ありがとう ね。キミ達が居なかったら、ボクはあそこで命散らしていただろうか ら」
「実際命散らす覚悟で全力で戦っていたんだけ ど・・・それでもキミ達があの時駆けつけてくれたおかげでこうして命を繋げる事ができ た」
「----だから、心から感謝するよ」
礼を告げたルオリスの表情は、今までのような無表情ではなく、少しではあるが優しげな笑みを浮かべていた。
「意外だな、ずっと無表情だったお前でもそんな顔ができたのか」
「感情表現はずっと苦手だったんだけど、皮肉なことにあの暴走がきっかけで、感情の表し方というのを少し理解できたから ね」
「だから、結果はどうあれ後悔はしてな い。あれはボクが覚悟を決めてやった事だから、責任は最後まで持たなきゃ ね」
「本当、バカが付くほど真面目な所は変わってねぇなお前・・・」
シドの感想に真剣な顔をして真面目な返答をしたルオリスに、やや呆れながらシドは呟いた。
「さて、ここでいつまでもお喋りをしている訳にも行かないしそろそろ動くとする よ」
「オイオイ、病み上がりだってのに本当に大丈夫か?」
「体力はまだ万全とは言えない ね。だからしばらくは戦闘を控えて裏方に回る よ。それに今回の一件で滅茶苦茶になった王都の復興にも個人的に手を貸したいし ね」
「二人はこの後どうする の?」
「俺はまぁ、今は何の予定もないし何かあった時に備えて待機してるわ」
「あたしも、このままここに残るよ」
「そ う。それじゃあ後の事は頼んだ よ。外の事はボクが情報集めて来るから ね」
そう言い終わるとルオリスはマントを羽織り、側の影から影渡りを発動し二人の前から瞬く間に姿を消した。
「本当思い切りが良いというか、行動力の塊だなルオリスのヤツ・・・」
「そうだね。けど、そこが彼女の良さでもあるよ」
ルオリスを見送った二人はルオリスの飛び込んだ影を見ながら、そう言葉をかわした。
影渡りのルオリスは、今日も世を渡る
ゼラルディアの平和の為に、仲間の為に命を懸けて頑張り続ける
いつか訪れる最期の時まで、影渡りは世を渡る-----------
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ルオリスのエンディングです。これにてSOZ本編における彼女の物語は締めとなります。
本編期間中お世話になった方々、本当にありがとうございました。
【illust/103917455】の流れから今回の話に続いています。
ルオリスが戻ってこられた理由としては殲滅対象であった今回の騒動を引き起こした者達が殆ど壊滅した事により幸いにも狂怒状態の解除条件を満たした事もありますが、心身ともにギリギリの時にエルルカさん達が駆けつけてくれた事によりルオリスの心がどうにか保った事もあります。
薄れゆく意識の中であっても、狂気と怒りに侵された状態であっても、ルオリスは確かにあの時二人が駆けつけてくれていたことを認識できました。
それが今回の結果に繋がっています。
お借りしました
耳なしのエルルカさん【illust/102023546】
シドさん【illust/102425321】
影渡りのルオリス【illust/102115292】
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2023-01-01 12:00
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