【ポケサガ】あたたかな【救国の聖戦】
「落ち着いたら、またカロンと一緒に挨拶に行くから!だから… どうか気を付けて!」
カロンを抱き抱えたチラーme───件の守りたい相手であろうシアはそう言って頭を下げた。本当なら彼女たちのことを最後まで見届けなくてはいけないのだろうけど、時がそれを許してはくれないだろう。互いに歯痒いのはきっと同じだ。
「……ノウ、手を出してください」
「…?はい、ヘザー様」
傍に立つPlusルへ歩み寄りその手を握る。先の行動で僅かながらに判った《詩》の力で、もう一度“いやしのすず“を詩う。ぽう、と照らされた掌から伝う光がノウの身体をそっと包み込んだ。彼女の赤晶石は既に砕けているようだが、この力ならば助けになるかもしれない。そう願って。
ノウ自身も何かを感じたようで、少し目を見開いてヘザーの顔を覗いてくる。それにふっと笑みを返すだけに留めておいた。するりと手を離し、その顔色が幾分か良くなっていることを確認して満足そうに頷いてみせる。カロンを支えるシアやその後ろにいる男女の人間たちとミジュ丸達にも頭を下げた。
「改めて感謝を。貴方たちの助力により、まだ手を伸ばすことが出来ました」
だがこれで終わりではない。だからこそ足を止めてはならない。
「行きましょう。互いに、成すべきことを成すために」
***
彼らと別れヘザーは再びマルクトを伴って事の中心部へと向かう。歩みを進める度に勢いを増す《黒い炎》を殴りつけるように鎮火しながら、二人は無言のまま走り続けていた。
(これだけ鎮火してもまだ炎の勢いが止まらない……それだけセラ様の怨念が強いということか)
マルクトがまた一つ塊になっていた炎を“がんせきふうじ“で消し潰した。ガラガラと飛び散る破片を避けてその炎がちゃんと消えていることを確認し、再び走り出そうとして。
ひらひら、と不意に空から蒼が降ってきた。
「……あれ、これって」
目の前に降り積もったそれに見覚えがある気がして、ヘザーは落ちてきたであろう空を見上げた。すると、この戦場にいるのがとても不思議に思える彼らの姿があった。
「オージャック、ですか?彼らは」
「そうでしょうね。これは昔日草…の花弁ですか」
「あ、黄色いルカrioさんだ!」
ふわり、と花籠を持つ彼らのうちのひとりがこちらへやって来る。何処となくよく庭園で会ってきたバケッ茶とは違いハキハキと『個』を持って話しかけている印象を受けた。あの憂いの顔を見せることが多かったバケッ茶──ニワトコとはまた違うようだがきっと近しい者なんだろうと思う。
「こんにちは。君は?」
「トコはね、トコハナっていうの!……ん?あれ、前にもあった気がする…?」
「マルクトと言います。……ヘザー」
「僕はヘザー。よろしくね、トコハナ。にしてもやっぱり庭園の子かぁ。ここ暫くは顔を出せてなかったから分からないかもね」
マルクトの問いかけに無邪気に答えたバケッ茶──トコハナはにっこりと人懐っこい笑顔を見せた。戦場とはあまりにも不釣り合いなそれに、少しだけヘザーも笑顔が溢れる。一方のトコハナは続くヘザーの言葉にきょとりと首を傾げた。
「んー?来てたの?」
「5年前からね、年に数回お邪魔してたんだ。ユキノさんに無理を言って小さなお墓を作ってもらって。僕の育ての親の」
向こうも詳しくは知らないが色々と事件があったらしいし。それに今年は生憎と行く暇を作る余裕すらなかった。彼女が覚えていなくて当然だろう。
ユキノ、という名前を口にしたからかトコハナは嬉しそうにヘザーたちの周りを飛び回った。勢いに負けて溢れた花弁の一つにそっと触れる。それが起因するように、ヘザーの脳裏に一つの光景が走馬灯のように浮かび上がっていく。
.
.
墓を前に静かに手を合わせるヘザーと、それに付き従うかつてのネテュケル。
『墓は教会にもあるのになぜこちらにも?』
確かに墓はある。遺体も納められた、立派な象徴が。
『……ここの風景が大好きだと言っていました。ここの、昔日草が、大好きなんだと。だから』
でもそこにあの人はいる気がしなかった。まるで動かない石像のようにただ崇められるだけのもののような気がして、それが何となく嫌だった。それならば、いつか彼が言っていた好きなものが溢れる場所に居られた方が喜ぶと思った。
だから。
.
.
「───ヘザー?」
「……ん。大丈夫だよ」
トコハナの声に意識が現実に引き戻される。あれは、かつての記憶か。
花に触れた瞬間だった。きっとこれは沢山の魂と共に咲いてきた昔日草の想いなんだろうと思った。
「トコハナ。向こうはあの《黒い炎》が沢山燃えているはずです。他に行くところがあるのならあちらは避けて行ってください」
「ヘザーたちはそこに行くの?危ないんでしょ?」
大丈夫?と真っ直ぐに問いかけられて。マルクトもそれを判ってくれているようだった。
「ちゃんと戦いを終わらせたいんだ。そうしたら、君たちの守る場所にまた会いにいくよ」
さあ、とトコハナたちを促し、彼女たちを火の手が届かない空へと逃す。
呼応するように花籠から沢山の花弁が、ざあ、と舞って。
「だから、見守っててね。シルバー(父さん)」
◆───
こちら【https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=22556145】の展開から続かせていただきました。この後ヘザーとマルクトはギルイベボス【illust/120341249】の元へ向かうべく主戦場の方へと進軍します。その道中沢山のオージャックさんたちに出会ったようです。【illust/119939412】
*ユキノさんニワトコさんと面識があることは親御様より許可をいただいております。改めて感謝を!
何かありましたらお気軽にご連絡下さい。
◆───
お借りしました!
カロンさん【illust/115730221】
シアさん【illust/115801795】
(姿だけ)
ライトさん【illust/117956602】
カメリアさん【illust/115734934】
シオドアさん【illust/118663658】
トコハナちゃん【illust/117613635】
(お名前だけ)
ニワトコさん【illust/117613635】
ユキノさん【illust/115766194】
マルクト【illust/115850144】
ヘザー【illust/115768068】
カロンを抱き抱えたチラーme───件の守りたい相手であろうシアはそう言って頭を下げた。本当なら彼女たちのことを最後まで見届けなくてはいけないのだろうけど、時がそれを許してはくれないだろう。互いに歯痒いのはきっと同じだ。
「……ノウ、手を出してください」
「…?はい、ヘザー様」
傍に立つPlusルへ歩み寄りその手を握る。先の行動で僅かながらに判った《詩》の力で、もう一度“いやしのすず“を詩う。ぽう、と照らされた掌から伝う光がノウの身体をそっと包み込んだ。彼女の赤晶石は既に砕けているようだが、この力ならば助けになるかもしれない。そう願って。
ノウ自身も何かを感じたようで、少し目を見開いてヘザーの顔を覗いてくる。それにふっと笑みを返すだけに留めておいた。するりと手を離し、その顔色が幾分か良くなっていることを確認して満足そうに頷いてみせる。カロンを支えるシアやその後ろにいる男女の人間たちとミジュ丸達にも頭を下げた。
「改めて感謝を。貴方たちの助力により、まだ手を伸ばすことが出来ました」
だがこれで終わりではない。だからこそ足を止めてはならない。
「行きましょう。互いに、成すべきことを成すために」
***
彼らと別れヘザーは再びマルクトを伴って事の中心部へと向かう。歩みを進める度に勢いを増す《黒い炎》を殴りつけるように鎮火しながら、二人は無言のまま走り続けていた。
(これだけ鎮火してもまだ炎の勢いが止まらない……それだけセラ様の怨念が強いということか)
マルクトがまた一つ塊になっていた炎を“がんせきふうじ“で消し潰した。ガラガラと飛び散る破片を避けてその炎がちゃんと消えていることを確認し、再び走り出そうとして。
ひらひら、と不意に空から蒼が降ってきた。
「……あれ、これって」
目の前に降り積もったそれに見覚えがある気がして、ヘザーは落ちてきたであろう空を見上げた。すると、この戦場にいるのがとても不思議に思える彼らの姿があった。
「オージャック、ですか?彼らは」
「そうでしょうね。これは昔日草…の花弁ですか」
「あ、黄色いルカrioさんだ!」
ふわり、と花籠を持つ彼らのうちのひとりがこちらへやって来る。何処となくよく庭園で会ってきたバケッ茶とは違いハキハキと『個』を持って話しかけている印象を受けた。あの憂いの顔を見せることが多かったバケッ茶──ニワトコとはまた違うようだがきっと近しい者なんだろうと思う。
「こんにちは。君は?」
「トコはね、トコハナっていうの!……ん?あれ、前にもあった気がする…?」
「マルクトと言います。……ヘザー」
「僕はヘザー。よろしくね、トコハナ。にしてもやっぱり庭園の子かぁ。ここ暫くは顔を出せてなかったから分からないかもね」
マルクトの問いかけに無邪気に答えたバケッ茶──トコハナはにっこりと人懐っこい笑顔を見せた。戦場とはあまりにも不釣り合いなそれに、少しだけヘザーも笑顔が溢れる。一方のトコハナは続くヘザーの言葉にきょとりと首を傾げた。
「んー?来てたの?」
「5年前からね、年に数回お邪魔してたんだ。ユキノさんに無理を言って小さなお墓を作ってもらって。僕の育ての親の」
向こうも詳しくは知らないが色々と事件があったらしいし。それに今年は生憎と行く暇を作る余裕すらなかった。彼女が覚えていなくて当然だろう。
ユキノ、という名前を口にしたからかトコハナは嬉しそうにヘザーたちの周りを飛び回った。勢いに負けて溢れた花弁の一つにそっと触れる。それが起因するように、ヘザーの脳裏に一つの光景が走馬灯のように浮かび上がっていく。
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墓を前に静かに手を合わせるヘザーと、それに付き従うかつてのネテュケル。
『墓は教会にもあるのになぜこちらにも?』
確かに墓はある。遺体も納められた、立派な象徴が。
『……ここの風景が大好きだと言っていました。ここの、昔日草が、大好きなんだと。だから』
でもそこにあの人はいる気がしなかった。まるで動かない石像のようにただ崇められるだけのもののような気がして、それが何となく嫌だった。それならば、いつか彼が言っていた好きなものが溢れる場所に居られた方が喜ぶと思った。
だから。
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「───ヘザー?」
「……ん。大丈夫だよ」
トコハナの声に意識が現実に引き戻される。あれは、かつての記憶か。
花に触れた瞬間だった。きっとこれは沢山の魂と共に咲いてきた昔日草の想いなんだろうと思った。
「トコハナ。向こうはあの《黒い炎》が沢山燃えているはずです。他に行くところがあるのならあちらは避けて行ってください」
「ヘザーたちはそこに行くの?危ないんでしょ?」
大丈夫?と真っ直ぐに問いかけられて。マルクトもそれを判ってくれているようだった。
「ちゃんと戦いを終わらせたいんだ。そうしたら、君たちの守る場所にまた会いにいくよ」
さあ、とトコハナたちを促し、彼女たちを火の手が届かない空へと逃す。
呼応するように花籠から沢山の花弁が、ざあ、と舞って。
「だから、見守っててね。シルバー(父さん)」
◆───
こちら【https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=22556145】の展開から続かせていただきました。この後ヘザーとマルクトはギルイベボス【illust/120341249】の元へ向かうべく主戦場の方へと進軍します。その道中沢山のオージャックさんたちに出会ったようです。【illust/119939412】
*ユキノさんニワトコさんと面識があることは親御様より許可をいただいております。改めて感謝を!
何かありましたらお気軽にご連絡下さい。
◆───
お借りしました!
カロンさん【illust/115730221】
シアさん【illust/115801795】
(姿だけ)
ライトさん【illust/117956602】
カメリアさん【illust/115734934】
シオドアさん【illust/118663658】
トコハナちゃん【illust/117613635】
(お名前だけ)
ニワトコさん【illust/117613635】
ユキノさん【illust/115766194】
マルクト【illust/115850144】
ヘザー【illust/115768068】
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2024-07-21 03:40
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