【ポケサガ】刻まれた言葉【救国の聖戦】
ある探究者は家族の記憶を見た。
まだ全てが失われる前、この幸福がずっと続くものと信じて疑わなかった頃の日常の一幕。大好きな両親と妹とで、同じ時を共有しながら笑い合った暖かな時間。
けれど、その記憶を幸せだと思っていたのは自分だけだったのかもしれない。
今度はちゃんと話し合おう。愚直に目の前の景色だけを信じるのではなく、相手の本心に向き合って。
そのためにも自分は、絶対に彼女を取り戻さなければならない。
(必ず僕が助けて、幸せにしてあげるから)
待ってて、と、決意を新たにした探究者は今一度大切な妹の名を心で呼んだ。
*
ある亡命者は愛する者の記憶を見た。
かつて自身の素性を偽っていた頃に過ごした記憶。あるいは彼女の心の歪みに気付かないまま上辺だけの幸福に浸っていた、再会後の思い出。
思えば彼女とはこれほどまでに想い合っていたのに、二人ともがありのままの自分でいられたことは終ぞ無かった。
今度こそお互い本当の自分として話せるように、彼女と共に生きて帰る。
それだけを夢見て、彼は死地を生き抜くことを誓う。
「感謝する。細やかではあるが、せめてお前も無事に生き延びることが出来るよう祈ろう」
そして、大切な記憶を見せてくれた花の運び手に幸運を。
彼が祈りを捧げれば、運び手の周囲を星型の光が舞い踊った。
*
そして。
かつての居場所を離れ、何者でもなくなった人間は。
*
「だから何で俺がわざわざ……」
勧めを受けた人間、シャジンは気乗りしない様子で顔を顰める。
戦場を訪れるなり偶然目の前を花籠を持つバヶッチャが横切ったのが始まりだった。バヶッチャのしていることにひどく興味を持ったらしいラクスはシャジンが止めるのも聞かずに駆け寄り、続いて様子を見に行ったコクウが何やらはしゃいだ様子でシャジンをバヶッチャの下まで連れてきたのだ。
曰く、オージャックの一族と名乗るバヶッチャが持つこの花弁には、触れると前向きになれる記憶を思い出す効果があるのだとか。ただし完全に失われた記憶を取り戻すことは出来ないらしいのだが。
「お前の腹の中に消えた記憶は思い出せねえってことだろ? それって意味あるのかよ」
「意味が無いということは無いだろう! それにほら、まだ喰い切れなかった記憶が残っているかもしれんし」
「人の記憶を喰い残しみてえに言うな」
意味が見いだせないのもそうだが、こんなところで油を売っている場合ではないのでさっさと事を終わらせたいというのもある。まあ、直前までこのゴースト義兄弟が何度目かもわからない喧嘩に発展しピリついていたことを思えば、二人に笑顔が戻っただけありがたいのかもしれないが。
「……はあ。わかった、触るだけで良いんだな?」
結局言うことを聞いた方が早いと判断したシャジンはオージャックから花弁を受け取る。と、シャジンの中に微かに浮かぶ声があった。
――生きて――
ただ一言、それだけの言葉が女性の声で脳裏に響く。
かつて吹雪の中救ってくれた恩人のものではない。聞こえた瞬間、胸の内に湧き上がる感覚から直感した。きっと、これが自分の忘れてしまった「大切な人」の声なのだろう。
声を胸に刻むように、しばらくの間花弁を握りしめ。
「……まあ、礼は言っておく。世話になったな」
花弁がすっかり空気に溶けて消えてしまった頃、シャジンはそれだけオージャックに告げると向かうべき戦場へ足を進めた。
***
ラクス、シャジン、コクウの最終章ログインです。同時にイベントNPCのオージャックさんに遭遇しました。
思い出を見せてくださったお礼に、オージャックさんの無事を祈ってコクウから“おまじない”の技をかけさせていただきました。
この後は新生セラ・ヒーズン教団との対決に向かいます。
◆ログイン中のイベント
公式最終章【illust/119916431】【illust/120335659】
約定の輪廻【illust/120341249】
昔日にうたうもの【illust/119939412】
アラブレタカブレ【illust/120314128】
※コクウはブローチ、シャジンはマントの留め具が若干変化してます(キャラシ差替え中)
◆お借りした方(NPC)
オージャックさん【illust/115765928】
ラクス【illust/115815840】
コクウ【illust/118232143】
シャジン【illust/115738486】
まだ全てが失われる前、この幸福がずっと続くものと信じて疑わなかった頃の日常の一幕。大好きな両親と妹とで、同じ時を共有しながら笑い合った暖かな時間。
けれど、その記憶を幸せだと思っていたのは自分だけだったのかもしれない。
今度はちゃんと話し合おう。愚直に目の前の景色だけを信じるのではなく、相手の本心に向き合って。
そのためにも自分は、絶対に彼女を取り戻さなければならない。
(必ず僕が助けて、幸せにしてあげるから)
待ってて、と、決意を新たにした探究者は今一度大切な妹の名を心で呼んだ。
*
ある亡命者は愛する者の記憶を見た。
かつて自身の素性を偽っていた頃に過ごした記憶。あるいは彼女の心の歪みに気付かないまま上辺だけの幸福に浸っていた、再会後の思い出。
思えば彼女とはこれほどまでに想い合っていたのに、二人ともがありのままの自分でいられたことは終ぞ無かった。
今度こそお互い本当の自分として話せるように、彼女と共に生きて帰る。
それだけを夢見て、彼は死地を生き抜くことを誓う。
「感謝する。細やかではあるが、せめてお前も無事に生き延びることが出来るよう祈ろう」
そして、大切な記憶を見せてくれた花の運び手に幸運を。
彼が祈りを捧げれば、運び手の周囲を星型の光が舞い踊った。
*
そして。
かつての居場所を離れ、何者でもなくなった人間は。
*
「だから何で俺がわざわざ……」
勧めを受けた人間、シャジンは気乗りしない様子で顔を顰める。
戦場を訪れるなり偶然目の前を花籠を持つバヶッチャが横切ったのが始まりだった。バヶッチャのしていることにひどく興味を持ったらしいラクスはシャジンが止めるのも聞かずに駆け寄り、続いて様子を見に行ったコクウが何やらはしゃいだ様子でシャジンをバヶッチャの下まで連れてきたのだ。
曰く、オージャックの一族と名乗るバヶッチャが持つこの花弁には、触れると前向きになれる記憶を思い出す効果があるのだとか。ただし完全に失われた記憶を取り戻すことは出来ないらしいのだが。
「お前の腹の中に消えた記憶は思い出せねえってことだろ? それって意味あるのかよ」
「意味が無いということは無いだろう! それにほら、まだ喰い切れなかった記憶が残っているかもしれんし」
「人の記憶を喰い残しみてえに言うな」
意味が見いだせないのもそうだが、こんなところで油を売っている場合ではないのでさっさと事を終わらせたいというのもある。まあ、直前までこのゴースト義兄弟が何度目かもわからない喧嘩に発展しピリついていたことを思えば、二人に笑顔が戻っただけありがたいのかもしれないが。
「……はあ。わかった、触るだけで良いんだな?」
結局言うことを聞いた方が早いと判断したシャジンはオージャックから花弁を受け取る。と、シャジンの中に微かに浮かぶ声があった。
――生きて――
ただ一言、それだけの言葉が女性の声で脳裏に響く。
かつて吹雪の中救ってくれた恩人のものではない。聞こえた瞬間、胸の内に湧き上がる感覚から直感した。きっと、これが自分の忘れてしまった「大切な人」の声なのだろう。
声を胸に刻むように、しばらくの間花弁を握りしめ。
「……まあ、礼は言っておく。世話になったな」
花弁がすっかり空気に溶けて消えてしまった頃、シャジンはそれだけオージャックに告げると向かうべき戦場へ足を進めた。
***
ラクス、シャジン、コクウの最終章ログインです。同時にイベントNPCのオージャックさんに遭遇しました。
思い出を見せてくださったお礼に、オージャックさんの無事を祈ってコクウから“おまじない”の技をかけさせていただきました。
この後は新生セラ・ヒーズン教団との対決に向かいます。
◆ログイン中のイベント
公式最終章【illust/119916431】【illust/120335659】
約定の輪廻【illust/120341249】
昔日にうたうもの【illust/119939412】
アラブレタカブレ【illust/120314128】
※コクウはブローチ、シャジンはマントの留め具が若干変化してます(キャラシ差替え中)
◆お借りした方(NPC)
オージャックさん【illust/115765928】
ラクス【illust/115815840】
コクウ【illust/118232143】
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2024-07-20 22:55
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