ナイスネイチャが頑張る話C+ −01 今日はなんでもない特別な日
「おいすー、ネイチャさんだよーって、うわ、どうなってるのこれ」
「ネイチャごめん、そこらへんで待っててくれるか!」
午後、出かける用事があるので早めに今日の授業をあがり、トレーナー室に入ったアタシを迎えたのは大慌てのトレーナーさんと、こんもり積もった書類の山だった。
「いいけど…どうしたのそれ?」
「一個仕事を終わらすのを忘れてて…ごめん、なるべく早く終わらせるから!今日中なんだ」
あらまあ、ネイチャさんとのデート当日に仕事に追われてるなんて。
それじゃ女の子にモテませんよ、トレーナーさんや。
アタシはトレーナー室の適当なパイプ椅子を取り出し、よいしょっと座る。
そしてじっとトレーナーさんを見つめる…トレーナーさんはアタシの存在も気にかけれないぐらい慌てて、書類の山と格闘をしていた。
「どれくらいで終わりそう?」
「多分1時間…ぐらい…多分!」
これは相当かかりそうかな?
なんの書類かは分からないが重要なものではあるらしい、机から目を離さず何か調べ物をし、書き物をし、そしてまた調べ物…と動き回ってるトレーナーさんを見て、アタシはちょっと楽しくなってきた。
なんだかリス、いやハムスターか?そんな感じでちょこまか動き回ってるトレーナーさんは結構可愛いなって思う。
「ほーい、ネイチャさん、じゃあ待ってますからねー」
「ごめん!」
そう言い、何やらブツブツ言い始めたトレーナーさんの姿をぼーとアタシは見続ける。
ーー今日はG2制覇のお祝いで、隣の市まで少し遠出をする予定だった。
勿論アタシは学生の身分だ、授業中に抜けて…なんてことはできないので、トレーナーさん同伴で。
あくまで名目は勝負服の調整の為だ…実際はもう仕上がってるんだけど。
「トレーナーさーん」
「なんだ!?」
「行けなかったらネイチャさん拗ねちゃいますからねー」
「それはない!ないから!」
せっかく待たされてるのでちょっとからかい気味に言ってやる。
トレーナーさんの大慌てっぷりはたまにみるけど毎回実は結構楽しんでいる。
普段はなるべく大人っぽく振るうので、なかなか見る機会がないからだ。
(まあ…別に明日でもいいんだけど)
実際のところ何をするわけではない、ただ隣の市…通称サトノシティへ行ってちょっと遊んで帰ってくるだけだ、トレーナーさんの奢りで。
だから今日じゃないとダメって事は別にないんだけど、なんとなくデートより仕事を優先されたのが癪なのでついつい意地悪をしたくなる。
アタシ性格悪いかな?大丈夫だよね?
「ん…?」
ふとアタシは気になったことがあって立ち上がった。
そしてトレーナーさんに近づく…トレーナーさんはアタシの事を全然気づいていないようで、作業に夢中になっていた。
「…トレーナーさんやい」
「ん、なんだネイチャ…ってうわ、ちかっ」
「あなた、もしや、徹夜してますかぁ?」
少し睨みつけるようにしてトレーナーさんをじっと見つめる。
普段より乱れた髪、少し細く、なんとなく光のない目、上気した…というより単にぼうっとした表情。
ああ、これは徹夜してるわって分かりやすい顔をトレーナーさんはしていた。
「う…外出には問題ないぞ」
「問題でーす!」
気まずそうに言い訳をするトレーナーさんの頭を近くの紙の束を適当にとってペシっと叩く。
「いいかぁ、ネイチャ。アスリートたるもの睡眠は非常に重要なんだ、よく食べて、よく寝ないとお前の体は成長しない…へんな意味じゃないぞ…だからもし何か寝れないようなことがあったら俺に言ってくれ、なんでもする」
「…俺の言ったことよく覚えてるな」
一字一句違わずトレーナーさんの言ったことを再現し、感心したような声を出すトレーナーさんの反応を見て、アタシは自慢げに胸を逸らした。
ええ、そりゃトレーナーさんの言ったことですもん、よく覚えてますよ。
「トレーナーさん、自分でそう言っていて徹夜のフラフラの状態でお出かけするつもりだったんですかぁ?」
「大丈夫だって…俺はトレーナーなんだからこれぐらい」
「その割にはあまり効率よく出来てないよね?トレーナーさん」
「うぐっ…」
図星のようだ、どうやら本当に徹夜で作業をしていたのだろう。
ところどころとり散らかっている机の上はトレーナーさんが必死にやってきたんだろうなって事だけはよく分かった。
「もう…しょうがないなぁ…トレーナーさんそれいつまでに出すの?」
「えっと、今日の夜9時までだ」
「一回寝なさい」
「えっ!」
驚いたような顔をするトレーナーさんに、アタシは腰に手を当てながら切り出す。
「まだ午後1時前だから時間は十分あるんでしょ?間違えてまた提出なんてことになるよ?トレーナーさん」
「しかし…それだと外出が…」
「そんな状態で行っても楽しくないでしょ、ほらベッドへ行った行った」
余程疲れてるのだろう、さほど抵抗なくトレーナー室の隣の寝室へトレーナーさんを押しやることができた。
「3時間ぐらいしたら起こしてあげるから」
「…悪いなネイチャ」
「明日は期待ししてますよー」
そう言って手をひらひらとさせる。
トレーナーさんは少しの間申し訳なさそうな顔をしていたが、観念して横になったと思ったらあっという間に寝てしまった。
「…凄い疲れてたんだね」
驚くような速さで寝たトレーナーさんを呆れて見つめながら、アタシはベットの端に腰掛ける。
「寝顔可愛い…」
どうして寝てる人ってこんなに可愛いんだろう。
子供とかもそうだよね、そんな事を思いながらトレーナーさんの顔をじっと見つめる。
そうしたら、アタシはちょっと悪戯心が出てきた。
「一緒にネイチャさんも寝ちゃおうかな…」
幸いにもトレーナーさんは激務でお疲れで起きる予定は全くない。
なら、今ぐらいはいいのでは?
良いのでは?
「G2も勝ったんだしいいよね」
そう自分を納得させてアタシはベッドに入り、トレーナーさんの背中に密着するように抱きつく。
それだけでアタシは心臓がドキドキしてるのが分かった、大人の男性の思ったより広い背中がアタシの目の前にある。
なんかじっと見ていると悪い事をしてる気がしてアタシは目を瞑った。
「暖かい…」
目を閉じ、他の感覚が研ぎ澄まされる…トレーナーさんの吐息、暖かさ、シャツの感触、ベットの匂い….。
なんとなく恥ずかしい、でもなんとなく特別な事をしている気分にアタシはなった。
「このままG1へアタシを連れて行ってね…」
いよいよアタシはこれからG1の世界の立つ、これまでも強敵揃いだった、ここからはもっともっと大変になる。
でも、アタシはトレーナーさんと二人で最後まで行けると信じてる。
だってアタシとトレーナーさんは、トレーナーとウマ娘だから。
二人は強い絆で結ばれてるに違いないから。
「…アタシも眠くなってきた」
アラームだけセットをして、思いっきりアタシはトレーナーさんの背中に抱きついた。
ただ、君と眠りたいだけです
だっけ、あの歌詞、なんだっけな、まあいいや。
今日はきっとなんでもない普通の日で終わると思う。
でも今日は特別な日、なんでもない特別な日。
そんな事を思いつつアタシは目を閉じた。
「ネイチャごめん、そこらへんで待っててくれるか!」
午後、出かける用事があるので早めに今日の授業をあがり、トレーナー室に入ったアタシを迎えたのは大慌てのトレーナーさんと、こんもり積もった書類の山だった。
「いいけど…どうしたのそれ?」
「一個仕事を終わらすのを忘れてて…ごめん、なるべく早く終わらせるから!今日中なんだ」
あらまあ、ネイチャさんとのデート当日に仕事に追われてるなんて。
それじゃ女の子にモテませんよ、トレーナーさんや。
アタシはトレーナー室の適当なパイプ椅子を取り出し、よいしょっと座る。
そしてじっとトレーナーさんを見つめる…トレーナーさんはアタシの存在も気にかけれないぐらい慌てて、書類の山と格闘をしていた。
「どれくらいで終わりそう?」
「多分1時間…ぐらい…多分!」
これは相当かかりそうかな?
なんの書類かは分からないが重要なものではあるらしい、机から目を離さず何か調べ物をし、書き物をし、そしてまた調べ物…と動き回ってるトレーナーさんを見て、アタシはちょっと楽しくなってきた。
なんだかリス、いやハムスターか?そんな感じでちょこまか動き回ってるトレーナーさんは結構可愛いなって思う。
「ほーい、ネイチャさん、じゃあ待ってますからねー」
「ごめん!」
そう言い、何やらブツブツ言い始めたトレーナーさんの姿をぼーとアタシは見続ける。
ーー今日はG2制覇のお祝いで、隣の市まで少し遠出をする予定だった。
勿論アタシは学生の身分だ、授業中に抜けて…なんてことはできないので、トレーナーさん同伴で。
あくまで名目は勝負服の調整の為だ…実際はもう仕上がってるんだけど。
「トレーナーさーん」
「なんだ!?」
「行けなかったらネイチャさん拗ねちゃいますからねー」
「それはない!ないから!」
せっかく待たされてるのでちょっとからかい気味に言ってやる。
トレーナーさんの大慌てっぷりはたまにみるけど毎回実は結構楽しんでいる。
普段はなるべく大人っぽく振るうので、なかなか見る機会がないからだ。
(まあ…別に明日でもいいんだけど)
実際のところ何をするわけではない、ただ隣の市…通称サトノシティへ行ってちょっと遊んで帰ってくるだけだ、トレーナーさんの奢りで。
だから今日じゃないとダメって事は別にないんだけど、なんとなくデートより仕事を優先されたのが癪なのでついつい意地悪をしたくなる。
アタシ性格悪いかな?大丈夫だよね?
「ん…?」
ふとアタシは気になったことがあって立ち上がった。
そしてトレーナーさんに近づく…トレーナーさんはアタシの事を全然気づいていないようで、作業に夢中になっていた。
「…トレーナーさんやい」
「ん、なんだネイチャ…ってうわ、ちかっ」
「あなた、もしや、徹夜してますかぁ?」
少し睨みつけるようにしてトレーナーさんをじっと見つめる。
普段より乱れた髪、少し細く、なんとなく光のない目、上気した…というより単にぼうっとした表情。
ああ、これは徹夜してるわって分かりやすい顔をトレーナーさんはしていた。
「う…外出には問題ないぞ」
「問題でーす!」
気まずそうに言い訳をするトレーナーさんの頭を近くの紙の束を適当にとってペシっと叩く。
「いいかぁ、ネイチャ。アスリートたるもの睡眠は非常に重要なんだ、よく食べて、よく寝ないとお前の体は成長しない…へんな意味じゃないぞ…だからもし何か寝れないようなことがあったら俺に言ってくれ、なんでもする」
「…俺の言ったことよく覚えてるな」
一字一句違わずトレーナーさんの言ったことを再現し、感心したような声を出すトレーナーさんの反応を見て、アタシは自慢げに胸を逸らした。
ええ、そりゃトレーナーさんの言ったことですもん、よく覚えてますよ。
「トレーナーさん、自分でそう言っていて徹夜のフラフラの状態でお出かけするつもりだったんですかぁ?」
「大丈夫だって…俺はトレーナーなんだからこれぐらい」
「その割にはあまり効率よく出来てないよね?トレーナーさん」
「うぐっ…」
図星のようだ、どうやら本当に徹夜で作業をしていたのだろう。
ところどころとり散らかっている机の上はトレーナーさんが必死にやってきたんだろうなって事だけはよく分かった。
「もう…しょうがないなぁ…トレーナーさんそれいつまでに出すの?」
「えっと、今日の夜9時までだ」
「一回寝なさい」
「えっ!」
驚いたような顔をするトレーナーさんに、アタシは腰に手を当てながら切り出す。
「まだ午後1時前だから時間は十分あるんでしょ?間違えてまた提出なんてことになるよ?トレーナーさん」
「しかし…それだと外出が…」
「そんな状態で行っても楽しくないでしょ、ほらベッドへ行った行った」
余程疲れてるのだろう、さほど抵抗なくトレーナー室の隣の寝室へトレーナーさんを押しやることができた。
「3時間ぐらいしたら起こしてあげるから」
「…悪いなネイチャ」
「明日は期待ししてますよー」
そう言って手をひらひらとさせる。
トレーナーさんは少しの間申し訳なさそうな顔をしていたが、観念して横になったと思ったらあっという間に寝てしまった。
「…凄い疲れてたんだね」
驚くような速さで寝たトレーナーさんを呆れて見つめながら、アタシはベットの端に腰掛ける。
「寝顔可愛い…」
どうして寝てる人ってこんなに可愛いんだろう。
子供とかもそうだよね、そんな事を思いながらトレーナーさんの顔をじっと見つめる。
そうしたら、アタシはちょっと悪戯心が出てきた。
「一緒にネイチャさんも寝ちゃおうかな…」
幸いにもトレーナーさんは激務でお疲れで起きる予定は全くない。
なら、今ぐらいはいいのでは?
良いのでは?
「G2も勝ったんだしいいよね」
そう自分を納得させてアタシはベッドに入り、トレーナーさんの背中に密着するように抱きつく。
それだけでアタシは心臓がドキドキしてるのが分かった、大人の男性の思ったより広い背中がアタシの目の前にある。
なんかじっと見ていると悪い事をしてる気がしてアタシは目を瞑った。
「暖かい…」
目を閉じ、他の感覚が研ぎ澄まされる…トレーナーさんの吐息、暖かさ、シャツの感触、ベットの匂い….。
なんとなく恥ずかしい、でもなんとなく特別な事をしている気分にアタシはなった。
「このままG1へアタシを連れて行ってね…」
いよいよアタシはこれからG1の世界の立つ、これまでも強敵揃いだった、ここからはもっともっと大変になる。
でも、アタシはトレーナーさんと二人で最後まで行けると信じてる。
だってアタシとトレーナーさんは、トレーナーとウマ娘だから。
二人は強い絆で結ばれてるに違いないから。
「…アタシも眠くなってきた」
アラームだけセットをして、思いっきりアタシはトレーナーさんの背中に抱きついた。
ただ、君と眠りたいだけです
だっけ、あの歌詞、なんだっけな、まあいいや。
今日はきっとなんでもない普通の日で終わると思う。
でも今日は特別な日、なんでもない特別な日。
そんな事を思いつつアタシは目を閉じた。
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2024-10-24 23:05
Comments (27)
なんかいい感じのタグありがとうございまっす
(でもG2勝ったのは俺のおかげではない…)
View Replies焼け野原の戦争屋「ところがぎっちょん! その特別な日はな、大勢のウマ娘がお前らを襲うんだぜ!」
View Replies嵐の前夜。全身を預け、鼻先で感じられた背中は、今はもう遠い彼方…。ネイチャさんの安眠顔を拝める日は、くるのか!?
View Repliesここで添い寝なんて考えない程度の距離感なら地獄を見ずに済んだのに…… ???「風紀の乱れを察知〜!」
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