静寂のオアシス宮廷

② アピールポイント
水と石のコントラストが際立つ中庭構成：カラリとした砂の色と、澄んだ水のブルーが絶妙に調和し、乾燥地帯における「水の奇跡」を表現しています。

イスラム建築と自然植生の融合：緻密な装飾が施されたアーチ型の柱、日陰に配されたベッド、そしてサボテンやアロエなどの植物が文化と自然の対話を感じさせます。

“音”を想像させる静けさ：風に揺れるヤシの葉、遠くから聞こえる水のせせらぎ、そして石畳に落ちる影の動きが、画面に「無音の音」を与えています。

③ 紹介文
『静寂のオアシス宮廷』は、乾いた砂漠に突如として現れる楽園のような中庭を描いた作品です。
中東や北アフリカの伝統建築を想起させるアーチと装飾、素朴な石の床、ゆるやかに日差しが差し込む寝台、そして命の水を湛える澄んだ池。
植物たちは逞しくも美しく、厳しい環境下にあってもなお生きることの美しさを象徴しています。
この空間はまさに、旅人にとっての「安息の場」。観る人の心に静けさと癒しを届ける、視覚的にも精神的にも深い作品です。

④ 物語
長い旅の果て、隊商の少年・アミールは、一枚の古い地図に描かれていた「沈黙の庭」を探していた。
それは、王も民も姿を消した砂の都に、今もひっそりと残ると言われる伝説の中庭。

ある日、彼は山間の谷を抜けた先で、砂嵐の中に一瞬だけ姿を現した建物を見つける。
近づくと、朽ちているはずの建物には温もりがあり、水音がかすかに響いていた。
アーチの下をくぐると、そこには時間が止まったような空間――枯れることのない泉、風にそよぐ葉、どこか懐かしい空気が漂っていた。

池の中央には石板があり、古代の言葉でこう記されていた。

「心を忘れし者よ、水面を覗け。そこに映るものが、お前にとって最も大切な記憶だ」

アミールが水面を見つめると、そこには幼い頃に亡くした母の笑顔が映っていた。

この場所は、迷える者の魂を癒す場所。
名もなき民たちが最後に残した、**「心を潤す、もう一つのオアシス」**だったのだ。