【ぽけリデ2】煙月に交わる香り【曙の春】

小波と共に揺れる桜に見惚れながら、コンビニで買ってきた春限定パッケージの酒を1人あおる。
夜の花見客の姿はまばらで、オレの様に仕事終わりに見にきている奴もいれば、ヒトが少ないのをいいことに桜の陰でイチャつくカップルしかいない。
独り身が辛いと思った事は無いが、こう言う時に肌恋しくなるのは、春の浮かれ陽気の所為だろうか。

テキトーにぶらついたら帰るか、そう思った甘い香りが鼻先をくすぐった。
甘い香りに混じっているのはコーヒーの香りだろうか。ちょうど良い、酔い覚ましに一杯欲しいなと視線を香りの元へ送ると、そこにはえらく色白な夢妖魔がいた。

「やぁ、そろそろ閉めようかと思っていたところだったんだよ」

そう気さくに話しかけてきたのは夢妖魔は、シーシャカフェのオーナーを名乗った。
“時隠”……そんな店がこの街にあったとは知らなかったな。
見れば机にはコーヒーのパックと……これはガチャガチャ？が並べられていて、残念ながら飲める店じゃないようだ。
まぁせっかくだから1パックくらい買って帰るか。店主に一つ頼むと真っ黒なパック一つ渡された。パックに描かれているのはこの店のロゴだろうか。

「普段どこで店やってんだ？」
「どこにも。……時隠を見つけるには『特別な目』が必要になるよ」
「…………は？」

何でも、「何かを強く求めている」あるいは「傷ついている」時の夜にのみ、時隠の扉は開かれるらしい。
……幽霊族が経営する店には特殊なものがあるとはよく聞くが、そんだけ限定した条件だと客はあんまり来ないんじゃないかと問えば「そうでもないよ」と笑い返された。

「今の貴方には必要ないかもしれない。……でも、いつか店の扉が見えたその時は、おまじないの込めたシーシャを用意するよ」

待ってるね、と優しく微笑まれると甘い香りがより濃くなった気がした。
その時はよろしくなと、コーヒー代を手渡しその場を後にする。

ほのかにライトアップされた桜を横目に、買ったドリップパックのコーヒーのパッケージに鼻を近づける。
焙煎された芳ばしい香りに混じって、あの甘い香りが微かに残っている気がした。

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時間帯的にギリギリになっちゃいますが、どうしても時隠さんの分室【illust/129262809】にお邪魔したくて……！
ブレンドのパックを一つだけ購入させて頂きました！ありがとうございました！☕️

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お借りしました！
ドロウズさん【illust/129036426】

シーシャは留学中に一度だけ体験済み【illust/128745443】

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企画元様【user/81084229】