［Main story］姉の背中（４）

エネルギーの大半を奪われて地に倒れたミリア。
「あ…くっ………あぁ…………」
立ち上がろうと藻掻くが急激にエネルギーを奪われたことによる虚脱感とめまいが彼女を襲っていた。
身体を支えようとした手が地面を滑り何度も突っ伏してしまう。
カラータイマーの光は弱々しくいつ消えてしまってもおかしくはない。
それでもなお立ち上がろうとするミリアの横腹を怪獣は蹴り上げた。
「ぐあっ！？」
あっけなく吹っ飛ばされ地面を転がる。
ようやく止まり、うつ伏せから顔を上げると自分を蹴った怪獣が一歩一歩こちらに向かっているようなシルエットが見えた。
（わたし……もうだめ……ごめんおねえちゃん）
身体も言うことをきかない。
近づいてくる怪獣を見ていることしかできない。
ミリアが諦めかけたとき、突然怪獣とミリアとの間で光が漏れた。
光は柱へ形を変え収束すると中から一人の戦士が現れる。
「おねえ……ちゃん……」
それはウルトラマリア――ミリアの姉の姿だった。
「……やあっ！」
怪獣が驚く暇もなくマリアは蹴りを叩き込む。
ひるんだ怪獣は後ずさり突如現れたもう一人の様子を窺っていた。
「おねえちゃん……たたかっちゃ、だめ……だって、おねえちゃん……」
変身した直後だというのにマリアのカラータイマーは赤く点滅している。
既に肩で息をしており癒えない傷の深さを物語っていた。
「立ってミリア。あなたもウルトラ戦士の一人でしょう？」
構えたまま妹に顔を向け厳しく……そして優しく励ますマリア。
自分も立っているのがやっとだというのにその瞳には強い力が宿っている。
「わたし、も……？」
「んっ」
マリアは小さく頷く。
「あっ――」
そこには大きな背中があった。
はぐれた少女を包み込んでいた背中。
そして今、ミリアを守っている背中。
（そうだ……わたしはいつもお姉ちゃんたちの背中を見てきた。
どんなに辛くても大切な物を一生懸命守ろうとするその背中に憧れて……ううん、憧れるだけじゃない。
肩を並べたくて……わたしは……！）
「ううっ！　うあああああああっ！」
ミリアの瞳に力が戻った。
無理にでも気合いを入れ身体を起こそうとする。
（もう大丈夫みたいね……）
マリアは妹の成長に少しだけ笑みを漏らす。
そして視線を戻し目の前の怪獣へ気を引き締めると闘いを挑んだ。