【PFFK】酒と薔薇の日【アフター】
天気雨よ 日々を飾れ
~ラサ・マグノリアの回顧録より~
長い間、私の人としての人生の大半をともに過ごした彼について想う時、
この日の出来事は特に忘れられないものだ。
生まれてからずっと母と彼の愛に包まれて育った私はこの日、初めて本当の悲しみに触れた。
八木「貴重なお話をありがとうございました。プロフェテスにもよろしくお伝えください。」
サルヴァシオン教会の入り口で信者の方に頭を下げると
私達は裏の墓地へ向い、ある十字を模った墓石の前に立った。
墓碑には「メリッサ・アルト=ハイマン」とある。
八木は私に向っていつもの様にやさしく微笑みかけるとこう言った。
「私は彼らと少しお話があるから。君は教会を見て回っておいで。」
私は黙って頷いたものの、何故かその場から動くことができなかった。
彼は手に持っていた白い薔薇の花束を供えると、酒瓶とカップを3つ取り出して並べた。
「献花に薔薇なんて・・・フフ、怒られてしまうかな?白薔薇の花言葉には尊敬なんてのもあるんだそうだよ。」
カップに安物のバーボンを注ぎながら彼は続ける。
「まぁ、花言葉なんて柄じゃないよね。単純に君達には白い薔薇がすごく似合うと思ったんだよ。」
2つのカップにバーボンを注ぎ、最後のグラスにとりかかる。
「ラサとは会ったみたいだね。私にはもう君達は見えないから、ここならば会えるんじゃないかと思ってね」
「…話、聞いてきたよ。ラサが君を見たという話からすると君は死んではいないようだが…」
グラスを傾けて2つの杯に近づける。音は鳴らさない。
「やっぱり、もう会えないんだな」
目を伏せ、しばらくの沈黙が訪れる。
「しっかし!」
唐突に顔を上げ、嬉しそうに語りだす。
「かっこよく死んだなぁ!ハハ!友を救うために自身の身を省みず神に特攻?なんとも君らしいじゃないか!」
一口酒をあおり、続ける。
「君は普段とてつもなくかっこいいから、とてつもなくカッコ悪い死に方をして欲しかったんだけどなぁ!」
教会の人が聞いたら卒倒しそうなことをさらりと言う。
「友に囲まれ、奥方に見守られ惜しまれながら暖かい寝床で安らかに眠るように。」
「荒野の悪魔と呼ばれた君がだよ?どうだい?最高にカッコ悪いだろう。」
「愛する妻を失い、友と袂を別けてそれでも妻と友のために生きてきたんだ…だからね。」
天を仰ぎ、杯を空ける。
「君と杯を交わし、語り合う日があっても、そんなカッコ悪い死に方をすることがあっても…」
私は彼と背をあわせる。表情は見えない。
「そんな幸せな日があっても、いいんじゃないかなぁ。」
力なく杯を地に置く。
「そう思ったんだよ。」
しばらく間を置いて彼は私の肩を支えながら立ち上がる。
「待たせたねラサ、さあ行こう。」
そして振り返って言った。
「安物で悪いが酒は置いていくよ。戦争中の放浪生活ですっかり忘れてたが、実は私は」
彼の表情を覗くと、実に晴れ晴れとした笑顔。
「のんべえなんだよ。持ってると飲んじまうからね」
私の憶えている限り、彼の表情は終始いつも通りの笑顔だったが、
いつも大きく頼もしく見えていたその背中がその時だけは小さく、頼りなく見えたことを私は忘れない。
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PFFKでのお話はもう終了しているのですが、私はこの二人が大好きなので、
こんな感じで番外編?的なものを時々描かせてもらえると嬉しいです。
※薔薇の献花は棘があるので基本的にNGだそうです。ただ故人が好きだったとかであれば話は別だそうです。
お借りしましたラサさん【illust/43570597】
実はのんべえだった八木【illust/41854620】
~ラサ・マグノリアの回顧録より~
長い間、私の人としての人生の大半をともに過ごした彼について想う時、
この日の出来事は特に忘れられないものだ。
生まれてからずっと母と彼の愛に包まれて育った私はこの日、初めて本当の悲しみに触れた。
八木「貴重なお話をありがとうございました。プロフェテスにもよろしくお伝えください。」
サルヴァシオン教会の入り口で信者の方に頭を下げると
私達は裏の墓地へ向い、ある十字を模った墓石の前に立った。
墓碑には「メリッサ・アルト=ハイマン」とある。
八木は私に向っていつもの様にやさしく微笑みかけるとこう言った。
「私は彼らと少しお話があるから。君は教会を見て回っておいで。」
私は黙って頷いたものの、何故かその場から動くことができなかった。
彼は手に持っていた白い薔薇の花束を供えると、酒瓶とカップを3つ取り出して並べた。
「献花に薔薇なんて・・・フフ、怒られてしまうかな?白薔薇の花言葉には尊敬なんてのもあるんだそうだよ。」
カップに安物のバーボンを注ぎながら彼は続ける。
「まぁ、花言葉なんて柄じゃないよね。単純に君達には白い薔薇がすごく似合うと思ったんだよ。」
2つのカップにバーボンを注ぎ、最後のグラスにとりかかる。
「ラサとは会ったみたいだね。私にはもう君達は見えないから、ここならば会えるんじゃないかと思ってね」
「…話、聞いてきたよ。ラサが君を見たという話からすると君は死んではいないようだが…」
グラスを傾けて2つの杯に近づける。音は鳴らさない。
「やっぱり、もう会えないんだな」
目を伏せ、しばらくの沈黙が訪れる。
「しっかし!」
唐突に顔を上げ、嬉しそうに語りだす。
「かっこよく死んだなぁ!ハハ!友を救うために自身の身を省みず神に特攻?なんとも君らしいじゃないか!」
一口酒をあおり、続ける。
「君は普段とてつもなくかっこいいから、とてつもなくカッコ悪い死に方をして欲しかったんだけどなぁ!」
教会の人が聞いたら卒倒しそうなことをさらりと言う。
「友に囲まれ、奥方に見守られ惜しまれながら暖かい寝床で安らかに眠るように。」
「荒野の悪魔と呼ばれた君がだよ?どうだい?最高にカッコ悪いだろう。」
「愛する妻を失い、友と袂を別けてそれでも妻と友のために生きてきたんだ…だからね。」
天を仰ぎ、杯を空ける。
「君と杯を交わし、語り合う日があっても、そんなカッコ悪い死に方をすることがあっても…」
私は彼と背をあわせる。表情は見えない。
「そんな幸せな日があっても、いいんじゃないかなぁ。」
力なく杯を地に置く。
「そう思ったんだよ。」
しばらく間を置いて彼は私の肩を支えながら立ち上がる。
「待たせたねラサ、さあ行こう。」
そして振り返って言った。
「安物で悪いが酒は置いていくよ。戦争中の放浪生活ですっかり忘れてたが、実は私は」
彼の表情を覗くと、実に晴れ晴れとした笑顔。
「のんべえなんだよ。持ってると飲んじまうからね」
私の憶えている限り、彼の表情は終始いつも通りの笑顔だったが、
いつも大きく頼もしく見えていたその背中がその時だけは小さく、頼りなく見えたことを私は忘れない。
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PFFKでのお話はもう終了しているのですが、私はこの二人が大好きなので、
こんな感じで番外編?的なものを時々描かせてもらえると嬉しいです。
※薔薇の献花は棘があるので基本的にNGだそうです。ただ故人が好きだったとかであれば話は別だそうです。
お借りしましたラサさん【illust/43570597】
実はのんべえだった八木【illust/41854620】
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2014-05-31 15:50
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