【ＰＦＴ】我ら誇り高き者【アデリアの決戦】

戦場にふとできた空白の場所に男は立っていた。戦場の音が少しだけ遠ざかったような錯覚を覚える。
僅かばかり静かになった世界の中で、男は目の前に動く影を見つけた。

カラドアの兵士らしき憂いを帯びた青年は、男の格好を見て眉を顰めた。

こういう作戦で、自分はその部隊長なのだと説明すると、青年は更に険しい表情になる。
男は実直な青年の人柄を思って笑った。そして少しだけ付け加える事にした。

上からこの事を任命されたのは自分だが、この作戦に参加した兵士は皆自分の意思でこの地に立っている。
その事を、決して忘れないのだと男は語った。

「俺ァ、そんなに大きな器を持ち合わせてなくてなぁ。覚えておく位しかできんのさ。
この先あいつらが歴史に語られる事は無くても、どれだけ恨まれ蔑まれても、俺だけは、彼らは祖国を愛し、尽くした、誇り高き者だったと、覚えておかなければならん。
それだけは、決して忘れない。それが、この作戦の指揮をするものの義務だからだ。」

まるで自分に言い聞かせるようにそう言って、男は止めていた足をまた動かし始めた。

青年の声も姿ももう目の前には無い。彼は何か言っていただろうか。彼は何処に行くのだろうか。
生きてくれる事を願うが、自分がそれを口にする資格は無い事も分かっていた。

ああ、それにしても失態だったと男はズタ袋のような足を前に引き摺りながら思った。

ザイリク師団の兵士を首尾よく奇襲し、留めをさそうとしたあの瞬間、どこにそんな力を隠していたのか、それとも本当に最後の力を振り絞ったのか、倒れ伏していた男が突如起き上がり、切りかかって来たのだ。

お陰で右腕一本飛んでしまった。

ククク、と口から笑いがこぼれるのを、男は他人事のように聞いていた。

戦はいつか終わる。
どうかその終わりの先が、カラドアが生きる道である事を願う。

◆こちらの流れをお借りしています。時系列やら場所やらはパラレル扱いでお願いします…！
陽炎【illust/50079049】
戦場に蒼き焔をともせ【illust/50081332】
追いかける背中【illust/50081750】
緋魂の一撃【illust/50093463】

※緋魂の一撃にて、奇襲をしかけて重傷を負わせたとの事だったので、折角なので反撃を頂いてみました。
ヴィクトルさんに留めを刺したかどうかについては、もしも援軍や助けがこなかった場合、恐らく留めを刺して進軍しているだろうなあとは思います。援軍が来た場合は深追いはしないかと。（勿論強制などではありませんので参考までにお考えください。）

◆お借りしました。本当に有難うございました。
《皇帝仮設親衛隊》より
ネルガルさん【illust/49974834】
シ―フォンさん【illust/49981511】
《アリオッテ人形士部隊》より
ヴァニタスさん【illust/50066321】
《ザイリク近衛師団》より
ヴィクトルさん【illust/49876006】
《カラドア帝国眷属軍》より
ヤマブキさん【illust/49706918】

▼またまた非公式イベントと、タグの方参加させて頂きます。

◆猛き者達の剣閃【illust/49964913】
◆炎天朱地【illust/50041128】

◆pixivファンタジアT【illust/49662235】

※何か重大な問題などありましたらお手数ですがご一報下さると幸いです。