【彩絵巻】裏葉【第六世代】
「あっはっは、仰々しい角でしょう。似合ってる?」
「人間なんてお客さん以外は美味しそうに見えていけないなあ
…冗談だよ?まあ、私の血筋にはそういう人が多いんだってこと。気を付けてね」
❁彩世絵巻【illust/47101565】
三条 裏葉(サンジョウ ウラバ) 見た目:18歳 171+7cm 半妖
一人称:私 二人称:君、お前
❁父の親族が営む食事所「美好屋」にたまに顔を出しては働いている無職。
母から継いだ店は双子の姉に任せっぱなしだが、たまに接客だけは請け負っている。
黒髪から覗く眸は母似のもので、他人を呪ってしまうことはない。
厄はほとんど表に出ることはないものの、感情に連動しているようで、怒るとたまに人に害を与えることも。
長く伸ばした髪を自由に動かし、火鼠やくらげ火の炎を揺らめかせることが出来るが、だいたい夜の提灯代わりにしかならない様子。
二口女の口は後頭部にあり、大喰いでもあるためどちらの口でもよく食べる。
他人に優しく自分に優しくで、人に何かを強要するようなことはなく、のほほんとした母に似た性格。
嫉妬も独占欲もきちんとあるが、相手が幸せならそれでいいと思っている節がある。
角で頭が重いものの、そこまで弊害はない。
腹がすくと何でも食べるが、調理された食事の方が好き。
どうか気付いてほしい 三条 照葉さん【illust/50692024】
ふらふら、夜道を歩いていた時のこと。
闇に紛れる長く艶やかな髪、ツンと立った狐の耳に、赤い紅いシャツの女がふらり、目の前を通っていく。
一目で同じ血だって分かった。父さんと同じ、管狐のものだろう。
ぞっとするほどの存在感を感じるその女は、私と同じだとは思えないほど随分と妖らしく見えた。
きっと自分が危うくなってしまうとわかるというのに、誘われるように翻る黒髪を追って、手が伸びる。
肩に手が届いた瞬間、一体何が起こってしまったのか分からなかった。
飛び散ったそれは自分の血で、それを引き起こしたのは目の前の妖。
死をこんなに間近に感じたのも、自分の血を見たのも、随分と久しぶりの事だ。
ぞくぞくとしたものが背筋を震わせるのが分かって、未だ伸びてくる女の腕を掴んで引き寄せた。
女だというのに私の腕など付け根から振り払ってしまいそうな強い力に、長く伸ばした髪まで使って押さえつける。
うつくしい、と思った。
鬱金と葡萄の双眸には、妖艶に羽根を翻しそうな蝶。
聞いたことがある。
薬師である毒島の家の血を引く者に顕れる眸には、蝶が舞っているのだという。
薬や毒に大変耐性を持つというそれを見開いて、女は私を見た。
欲しいと思った、喰いたいと思った、この女のすべてを。
髪を引き千切られそうになり、引き際に勘付く。
さっと押さえつけていた体を放して距離を取る。
自分が妖としてあまりに非力なのだと思い知らされたようで、あまり気持ちのいいものではなかった。
だけど、こんなにも欲しいと思ったのは初めてだ。
玩具を見つけた子供の様、私にとって、それは好物でしかない。
自分の身可愛さに、また女に会うために、身を翻して逃げ帰る。
女は、追ってはこなかった。
それが逆に腹立たしい、私はこんなにも執着してしまいそうなのに。
朽葉の仕事を手伝うも、あまりにも身が入らない。
欲しいものが出来てしまったのだ。
姉の声も耳を擦り抜けていく。
それからは毎日夜の町を捜し歩いた。
見つける度、食事と摂っている女の横に居座っては、それを眺める。
うつくしいだけではなく、どこか可愛らしさを感じるその姿は、私の心を温かくした。
あまり幸せそうではないにせよ、食事をする女の姿は一先ず満たされていっているように見える。
食べ終わってしまえば、次は私の番になってしまうから、ほくそ笑みながらそこを去ることにしているのだ。
食べている彼女を好きだと思った。
隙でも見つければ食ってやろうと思っていたのに、幸せにしてやるにはどうしたらいいかと思ってしまった。
ふいに思いついて、やっとの思いで昼間に見つけた女を捕まえ、口説き、家族の働く美好屋へ連れていった。
並べられた食事に、奇妙なものを見るような顔をして、それでも手を付けてくれる。
ぺろりと食べてしまう様を、横で見ていた。
やはりいいな、と思う。
美味そうだし、好きだ。
側にいることを、勝手に当たり前だととらえていた。
母さんを食べなかった父さんの気持ちも分かる。
側にいたい、ずっと、側に。
簡単には死なない妖だからこそ、そう思う。
そんな風に思う頃には女の名前を知れた。
三条照葉。まるで、きょうだいのような響き。
好きだと思った。愛しいと思った。そして自分のものにしたいとも。
照葉は死にたいのだ。
わかってしまうと、あまりにすとんと胸に落ちてくる。
長く生きて、ずっと苦しんでいるのだろう。
ころしてくれと、唇が紡ぐのがわかる。
辛くて仕方がなかった。
そんな風に思いながら後ろから抱きすくめれば、見た目よりずっと小さく感じる。
抵抗も、攻撃もなかった。
それがあまりに辛くて、これからしようとしていることを躊躇う。
それでも、こうしなくてはならなかった。
食らいついた首はあまりに華奢で、大きな口にすっぽりと入ってしまいそうで。
無心で喰った。
好きだと、愛しいのだと、一口ずつに刻み付けるように。
それでは足りなかった、哀しかった、苦しかった、恋しかった。
髪の一筋も残さぬよう腹に入れると、押し寄せるような寂しさに襲われた。
ただ、「愛している」と泣き叫んだ。
❁両親:三条 好流さん illust/50080766 花緑青
「やや、父さんってば母さんがいないのが寂しいの?
母さんもこないだ言ってたよ、やだやだ、夫婦っていってもいつまでも恋人みたいだね」
妹:好魅さん illust/51192221
「好魅は今日も可愛らしいよ。無理に女性らしくしなくたって、十分さ」
弟:好壱さんillust/52386113
「今日は朽葉のところかな。好壱が私といたいなんて可愛いこと言ってくれるんなら、こっちでもいいよ?」
兄:好明
「死ぬまで、そこにいるつもり?」
姉:朽葉
「酷いなあ朽葉。君はお客さんにキツすぎるんだって」
随分と力が強くなってしまった。
照葉のそばにいるうち、いつの間にか朽葉と分かち合っていた厄を自分だけのものにしていたらしい。
自衛の為の本能だろう。
神にも等しい照葉の血肉が身体に馴染むのは、どこか悲しかった。
居なくなってしまった、私が、喰ってしまったのだ。
こんな世の中で、ずっと生きていられるわけがないだろう。
みんなごめんね、先にいかせて。
私には、耐えられない。
「人間なんてお客さん以外は美味しそうに見えていけないなあ
…冗談だよ?まあ、私の血筋にはそういう人が多いんだってこと。気を付けてね」
❁彩世絵巻【illust/47101565】
三条 裏葉(サンジョウ ウラバ) 見た目:18歳 171+7cm 半妖
一人称:私 二人称:君、お前
❁父の親族が営む食事所「美好屋」にたまに顔を出しては働いている無職。
母から継いだ店は双子の姉に任せっぱなしだが、たまに接客だけは請け負っている。
黒髪から覗く眸は母似のもので、他人を呪ってしまうことはない。
厄はほとんど表に出ることはないものの、感情に連動しているようで、怒るとたまに人に害を与えることも。
長く伸ばした髪を自由に動かし、火鼠やくらげ火の炎を揺らめかせることが出来るが、だいたい夜の提灯代わりにしかならない様子。
二口女の口は後頭部にあり、大喰いでもあるためどちらの口でもよく食べる。
他人に優しく自分に優しくで、人に何かを強要するようなことはなく、のほほんとした母に似た性格。
嫉妬も独占欲もきちんとあるが、相手が幸せならそれでいいと思っている節がある。
角で頭が重いものの、そこまで弊害はない。
腹がすくと何でも食べるが、調理された食事の方が好き。
どうか気付いてほしい 三条 照葉さん【illust/50692024】
ふらふら、夜道を歩いていた時のこと。
闇に紛れる長く艶やかな髪、ツンと立った狐の耳に、赤い紅いシャツの女がふらり、目の前を通っていく。
一目で同じ血だって分かった。父さんと同じ、管狐のものだろう。
ぞっとするほどの存在感を感じるその女は、私と同じだとは思えないほど随分と妖らしく見えた。
きっと自分が危うくなってしまうとわかるというのに、誘われるように翻る黒髪を追って、手が伸びる。
肩に手が届いた瞬間、一体何が起こってしまったのか分からなかった。
飛び散ったそれは自分の血で、それを引き起こしたのは目の前の妖。
死をこんなに間近に感じたのも、自分の血を見たのも、随分と久しぶりの事だ。
ぞくぞくとしたものが背筋を震わせるのが分かって、未だ伸びてくる女の腕を掴んで引き寄せた。
女だというのに私の腕など付け根から振り払ってしまいそうな強い力に、長く伸ばした髪まで使って押さえつける。
うつくしい、と思った。
鬱金と葡萄の双眸には、妖艶に羽根を翻しそうな蝶。
聞いたことがある。
薬師である毒島の家の血を引く者に顕れる眸には、蝶が舞っているのだという。
薬や毒に大変耐性を持つというそれを見開いて、女は私を見た。
欲しいと思った、喰いたいと思った、この女のすべてを。
髪を引き千切られそうになり、引き際に勘付く。
さっと押さえつけていた体を放して距離を取る。
自分が妖としてあまりに非力なのだと思い知らされたようで、あまり気持ちのいいものではなかった。
だけど、こんなにも欲しいと思ったのは初めてだ。
玩具を見つけた子供の様、私にとって、それは好物でしかない。
自分の身可愛さに、また女に会うために、身を翻して逃げ帰る。
女は、追ってはこなかった。
それが逆に腹立たしい、私はこんなにも執着してしまいそうなのに。
朽葉の仕事を手伝うも、あまりにも身が入らない。
欲しいものが出来てしまったのだ。
姉の声も耳を擦り抜けていく。
それからは毎日夜の町を捜し歩いた。
見つける度、食事と摂っている女の横に居座っては、それを眺める。
うつくしいだけではなく、どこか可愛らしさを感じるその姿は、私の心を温かくした。
あまり幸せそうではないにせよ、食事をする女の姿は一先ず満たされていっているように見える。
食べ終わってしまえば、次は私の番になってしまうから、ほくそ笑みながらそこを去ることにしているのだ。
食べている彼女を好きだと思った。
隙でも見つければ食ってやろうと思っていたのに、幸せにしてやるにはどうしたらいいかと思ってしまった。
ふいに思いついて、やっとの思いで昼間に見つけた女を捕まえ、口説き、家族の働く美好屋へ連れていった。
並べられた食事に、奇妙なものを見るような顔をして、それでも手を付けてくれる。
ぺろりと食べてしまう様を、横で見ていた。
やはりいいな、と思う。
美味そうだし、好きだ。
側にいることを、勝手に当たり前だととらえていた。
母さんを食べなかった父さんの気持ちも分かる。
側にいたい、ずっと、側に。
簡単には死なない妖だからこそ、そう思う。
そんな風に思う頃には女の名前を知れた。
三条照葉。まるで、きょうだいのような響き。
好きだと思った。愛しいと思った。そして自分のものにしたいとも。
照葉は死にたいのだ。
わかってしまうと、あまりにすとんと胸に落ちてくる。
長く生きて、ずっと苦しんでいるのだろう。
ころしてくれと、唇が紡ぐのがわかる。
辛くて仕方がなかった。
そんな風に思いながら後ろから抱きすくめれば、見た目よりずっと小さく感じる。
抵抗も、攻撃もなかった。
それがあまりに辛くて、これからしようとしていることを躊躇う。
それでも、こうしなくてはならなかった。
食らいついた首はあまりに華奢で、大きな口にすっぽりと入ってしまいそうで。
無心で喰った。
好きだと、愛しいのだと、一口ずつに刻み付けるように。
それでは足りなかった、哀しかった、苦しかった、恋しかった。
髪の一筋も残さぬよう腹に入れると、押し寄せるような寂しさに襲われた。
ただ、「愛している」と泣き叫んだ。
❁両親:三条 好流さん illust/50080766 花緑青
「やや、父さんってば母さんがいないのが寂しいの?
母さんもこないだ言ってたよ、やだやだ、夫婦っていってもいつまでも恋人みたいだね」
妹:好魅さん illust/51192221
「好魅は今日も可愛らしいよ。無理に女性らしくしなくたって、十分さ」
弟:好壱さんillust/52386113
「今日は朽葉のところかな。好壱が私といたいなんて可愛いこと言ってくれるんなら、こっちでもいいよ?」
兄:好明
「死ぬまで、そこにいるつもり?」
姉:朽葉
「酷いなあ朽葉。君はお客さんにキツすぎるんだって」
随分と力が強くなってしまった。
照葉のそばにいるうち、いつの間にか朽葉と分かち合っていた厄を自分だけのものにしていたらしい。
自衛の為の本能だろう。
神にも等しい照葉の血肉が身体に馴染むのは、どこか悲しかった。
居なくなってしまった、私が、喰ってしまったのだ。
こんな世の中で、ずっと生きていられるわけがないだろう。
みんなごめんね、先にいかせて。
私には、耐えられない。
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2015-07-08 02:41
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