【九十九路】ハウ【第二期】
◆九十九路の羅針盤【illust/60865485】
『はる』を探す道は続く。道はいつだって雪でいっぱいだったけれど、2人での旅は、ひどく居心地がよかった。
◆ハウ
前期:【illust/61215474】
絆相手:シャヴィくん 第一期【illust/61215245】 第二期【illust/61712370】
「シャヴィくんばっかり大きくかっこよくなってずるい!僕もはやく大きくなりたい〜〜!」
「じゃじゃーん!はい、これシャヴィくんにあげるよ。一緒に食べよう!え?こんなものどうしたのって、えーと、んーっと…………、拾った!」
『はる』を探して旅をしている少年。
見た目も精神年齢も10歳程度だが、もっと長いあいだ生きている。
無邪気で天真爛漫。最近は友達にばれないように盗みを働くこともしばしば。
友達からもらった小さな花が宝物。
◆『冬を呼ぶ小さな獣』
冬の精の一種。雪の中から生まれる。この獣の住む地には、雪が降り積もり、冷たい風が吹き続ける。
その特性上、ひとところに留まる者は少ないと言われている。
見た目は人と変わらないが、成長スピードは非常に遅く、体は少しひんやりしている。
◆絆を結んでいただきました!
医術国家アーシュダナム エリウ・アインダハラ・ダナンさん【illust/61753096】
一緒に旅を続けてきた友達と吹雪ではぐれ、小さな冬の獣は一人で歩を進め続けた。
いつも隣で手を引いてくれた友達は今はいない。一面の銀世界はひどく心細かった。このままいつまでたっても誰にも会えなかったらどうしよう、なんて考えて。
雪は降り続き、自身のつけた足跡もすぐに消えた。だんだんと足は重く呼吸は荒くなっていった。たどり着いた森の中、雪に足をとられてバランスを崩す。
忌々しい冷たい雪が心地よかった。遠いいつかの生まれた日と同じように、雪の中で目を閉じる。
そして再び目を覚ましたとき、彼を迎えたのはアーシュダナムの人々とその地の皇帝の代理だった。
「えっ。違うよ、だってぼくずっと『はる』を探して旅を続けてたんだよ!たしかに、どこに行っても雪が降ってたけど、アーシュダナムもだけど、でも、そんなこと、……。そんなこと、あるはずない!違うよ!」
「あっ、待って待って!こないだはありがとう、えーっと、エリウくん!……あれ、名前違うの?どうしてみんなびっくりしてるの?」
「また難しい顔してる。笑ってるエリウくんの方がみんなきっと好きだよ。ぼくは好き!ほら、にこーってしよう!にこーっ!」
「エリウくんも旅するんだ!じゃあ一緒に旅できたらきっと楽しいね。おいしいもの食べたり、綺麗なもの見たりしたいなあ。
でもやっぱり難しいかな、王様だもんね。ちぇーっ」
アーシュダナムには雪が降り続いていた。口ではずっと否定していたけれど、彼は薄々気づいていた。
長い旅の中で彼は白い世界しか知らなかった。青々と茂る木の葉にも色鮮やかな草花にも一度だって出会えなかった。寒気に耐えられず枯れてしまった植物を悲しむ人を見た。
それは偶然ではない。
「ぼく、……ぼく、こんなことになるなんて知らなかった。知らなかったんだよ。
今まで、ずっと、気づかなかった……。ごめんなさい。きっとすぐ出ていくから。
うーん……、行くあてもないし、シャヴィくんともはぐれちゃったけど、でも大丈夫。
エリウくんにもたくさんのこと教えてもらったし!だってずっと前もそうだったんだよ。心配しないでいいよ、大丈夫!」
彼を拒絶する人もいたけれど、それと同じぐらい優しい人たちもいた。
そしてなにより大切な友達がいた。本を読んでくれる声も、ときおり頭を撫でてくれるあたたかい手も大好きだった。
いつかくる旅立ちのときにはきっと一人だろうと、そう思っていた。
だからこそずるずると長い間アーシュダナムにいてしまった。本当はもっと早くに立ち去らなければならなかったのに。
そうして、冬を呼ぶ小さな獣はその地を食い荒らすこととなった。
(ぼくとは違って、エリウくんには帰る場所もあった。大事な家族もいた。なのに、なのにぼくがめちゃくちゃにしたんだ!)
枯れてしまった草花が戻らないように、奪ってしまったものはもう元の形には戻らない。
けれど有翼の青年は間違っていないと言った。
これからも旅を続けていけば誰かを悲しませるだろう。それでもたった一人で凍てつく寒さの中では生きていけないから。
だから、せめてこれからの二人での旅路が幸せなものになるように。
春を見つけ、これまでの長い道にはたしかに意味があったのだと、出会った人たちみんなに言えるように。
彼はふたたび春を探す旅に出る。足を止めそうになったときは青年の言葉をくり返し思い出す。
冬の獣だって、あたたかい優しい場所に憧れたって、いいじゃないか。
「こう見えてエリウくんより旅のプロだからね!おいしいものもたくさん知ってるし、絶対、絶対楽しい旅になるよ。ぼくが楽しい旅にするよ!……それで、一緒にはるを見ようね」
そう言いながら自分より大きな手を強く握りしめて。ふり返った先、霧の向こうのアーシュダナムの門は今はかたく閉ざされていた。
◇今後もキャラクターを成長させていく形で投稿していく予定です。
訪れた場所の季節が冬になってしまう体質ですが、それでもよければどうぞよろしくお願いします!
◇メッセージのお返事には5日程度時間をいただく場合があります。
『はる』を探す道は続く。道はいつだって雪でいっぱいだったけれど、2人での旅は、ひどく居心地がよかった。
◆ハウ
前期:【illust/61215474】
絆相手:シャヴィくん 第一期【illust/61215245】 第二期【illust/61712370】
「シャヴィくんばっかり大きくかっこよくなってずるい!僕もはやく大きくなりたい〜〜!」
「じゃじゃーん!はい、これシャヴィくんにあげるよ。一緒に食べよう!え?こんなものどうしたのって、えーと、んーっと…………、拾った!」
『はる』を探して旅をしている少年。
見た目も精神年齢も10歳程度だが、もっと長いあいだ生きている。
無邪気で天真爛漫。最近は友達にばれないように盗みを働くこともしばしば。
友達からもらった小さな花が宝物。
◆『冬を呼ぶ小さな獣』
冬の精の一種。雪の中から生まれる。この獣の住む地には、雪が降り積もり、冷たい風が吹き続ける。
その特性上、ひとところに留まる者は少ないと言われている。
見た目は人と変わらないが、成長スピードは非常に遅く、体は少しひんやりしている。
◆絆を結んでいただきました!
医術国家アーシュダナム エリウ・アインダハラ・ダナンさん【illust/61753096】
一緒に旅を続けてきた友達と吹雪ではぐれ、小さな冬の獣は一人で歩を進め続けた。
いつも隣で手を引いてくれた友達は今はいない。一面の銀世界はひどく心細かった。このままいつまでたっても誰にも会えなかったらどうしよう、なんて考えて。
雪は降り続き、自身のつけた足跡もすぐに消えた。だんだんと足は重く呼吸は荒くなっていった。たどり着いた森の中、雪に足をとられてバランスを崩す。
忌々しい冷たい雪が心地よかった。遠いいつかの生まれた日と同じように、雪の中で目を閉じる。
そして再び目を覚ましたとき、彼を迎えたのはアーシュダナムの人々とその地の皇帝の代理だった。
「えっ。違うよ、だってぼくずっと『はる』を探して旅を続けてたんだよ!たしかに、どこに行っても雪が降ってたけど、アーシュダナムもだけど、でも、そんなこと、……。そんなこと、あるはずない!違うよ!」
「あっ、待って待って!こないだはありがとう、えーっと、エリウくん!……あれ、名前違うの?どうしてみんなびっくりしてるの?」
「また難しい顔してる。笑ってるエリウくんの方がみんなきっと好きだよ。ぼくは好き!ほら、にこーってしよう!にこーっ!」
「エリウくんも旅するんだ!じゃあ一緒に旅できたらきっと楽しいね。おいしいもの食べたり、綺麗なもの見たりしたいなあ。
でもやっぱり難しいかな、王様だもんね。ちぇーっ」
アーシュダナムには雪が降り続いていた。口ではずっと否定していたけれど、彼は薄々気づいていた。
長い旅の中で彼は白い世界しか知らなかった。青々と茂る木の葉にも色鮮やかな草花にも一度だって出会えなかった。寒気に耐えられず枯れてしまった植物を悲しむ人を見た。
それは偶然ではない。
「ぼく、……ぼく、こんなことになるなんて知らなかった。知らなかったんだよ。
今まで、ずっと、気づかなかった……。ごめんなさい。きっとすぐ出ていくから。
うーん……、行くあてもないし、シャヴィくんともはぐれちゃったけど、でも大丈夫。
エリウくんにもたくさんのこと教えてもらったし!だってずっと前もそうだったんだよ。心配しないでいいよ、大丈夫!」
彼を拒絶する人もいたけれど、それと同じぐらい優しい人たちもいた。
そしてなにより大切な友達がいた。本を読んでくれる声も、ときおり頭を撫でてくれるあたたかい手も大好きだった。
いつかくる旅立ちのときにはきっと一人だろうと、そう思っていた。
だからこそずるずると長い間アーシュダナムにいてしまった。本当はもっと早くに立ち去らなければならなかったのに。
そうして、冬を呼ぶ小さな獣はその地を食い荒らすこととなった。
(ぼくとは違って、エリウくんには帰る場所もあった。大事な家族もいた。なのに、なのにぼくがめちゃくちゃにしたんだ!)
枯れてしまった草花が戻らないように、奪ってしまったものはもう元の形には戻らない。
けれど有翼の青年は間違っていないと言った。
これからも旅を続けていけば誰かを悲しませるだろう。それでもたった一人で凍てつく寒さの中では生きていけないから。
だから、せめてこれからの二人での旅路が幸せなものになるように。
春を見つけ、これまでの長い道にはたしかに意味があったのだと、出会った人たちみんなに言えるように。
彼はふたたび春を探す旅に出る。足を止めそうになったときは青年の言葉をくり返し思い出す。
冬の獣だって、あたたかい優しい場所に憧れたって、いいじゃないか。
「こう見えてエリウくんより旅のプロだからね!おいしいものもたくさん知ってるし、絶対、絶対楽しい旅になるよ。ぼくが楽しい旅にするよ!……それで、一緒にはるを見ようね」
そう言いながら自分より大きな手を強く握りしめて。ふり返った先、霧の向こうのアーシュダナムの門は今はかたく閉ざされていた。
◇今後もキャラクターを成長させていく形で投稿していく予定です。
訪れた場所の季節が冬になってしまう体質ですが、それでもよければどうぞよろしくお願いします!
◇メッセージのお返事には5日程度時間をいただく場合があります。
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2017-03-04 17:13
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