クリスタ・ナザン提督

イメリア魔導合衆国の高級将校。

カタリナ社および大魔導協会の宇宙勢力で「最強で最も血に飢えた征服者」と呼ばれ恐れられたエルフ種の提督である。近隣のカタリナ社勢力の提督たちから危険な戦いたくない提督の一人とも言わしめた提督が「クリスタ・ナザン提督」である。

元々はスヴァルト魔導帝國のイグレン魔導連合王国の西部辺境銀河を支配していたナザン伯爵家の三女で、中級エルフ貴族出身。ナザン伯爵家は上流魔族とエルフ種の混血ハーフエルフで、高い魔力を持つ大魔導協会にも出資、多くの魔導士を輩出している名門一族だった。
しかし、クリスタは魔力が低く、最初はカタリナ社ＵＳＡ局の小学校の先生として勉強中だったが、カタリナ社開拓船団の団長だった人間の夫と結婚後、当時まだ開拓中だったイメリア魔導合衆国に移民として入植した。
当時のイメリアではまだ原住宇宙国家が新興の移民星や植民宇宙都市に対して、攻撃してくる物騒な時代で、クリスタは入植地や自前の宇宙農場を防衛するためにイメリアの原住宇宙国家と激しい防衛及び侵略戦争を５０００年続けて、これを平定した。
この戦争でクリスタは本国のイグレン魔導連合王国艦隊を出撃し、多くの敵対宇宙勢力や原住の宇宙勢力を支配もしくは撃滅し、イグレンを代表する有望な提督として名を馳せていたが、この開拓戦争は「イメリア魔導宙域開拓戦争」と呼ばれ、イメリア宙域にはカタリナ社や大魔導教会とは別の宇宙勢力、宇宙人種が数多く存在し、独自の宇宙文明を持っていたが、圧倒的な軍事力と経済力、魔導技術を有するカタリナ社及び大魔導協会の宇宙で最も強大な二大超列強によって、宇宙史に残る空前絶後の大虐殺と圧倒的な破壊が行われた。
クリスタは抵抗する相手には容赦なく攻撃を加えたが、素直に服従する宇宙国家や都市には寛大に自治権限を与え、たとえ敵であっても有能な将校や提督、政治家は自勢力に雇用したりと冷酷さと寛大さを併せ持っていた。

次に、本国のイグレン魔導連合王国が、平定した土地や宇宙都市に高い貿易関税を掛ける露骨な経済干渉を行ってきた。これに対してクリスタはイメリアの議会と共同で、宗主国に対して「イメリア独立戦争」を行い、１万年もの間、独立戦争を指揮し戦った。この戦争で最愛の夫をテロで失い、イグレン魔導連合王国の西部辺境銀河を支配していた親元のナザン伯爵家とも対立し、血のつながった姉と妹の指揮する宇宙艦隊と激戦を行い両者とも打ち破り、以後、ナザン伯爵家は滅亡するが、最終的に独立を果たす。

次に独立したイメリアでは南北に分かれて大規模な内戦に突入「南北イメリア戦争」が勃発、戦争勃発の原因はイメリアの経済構成の変革、南北の経済格差だった。北部側についたクリスタは共に１０００年戦うが、息子は当時貧しく劣勢だった南部側につき、クリスタと親子での対決で激戦の末、宇宙艦隊戦で戦死。
内戦は北部側の勝利する所となる。

今度は第一次スヴァルト宇宙戦争が勃発。戦争の原因は、スヴァルト宙域の覇権を巡った大規模な宇宙戦争で孫や子孫たちと共に出兵し、旧宗主国のイグレンを支援するために奮闘するが、多くの親族が戦場でなくなっていった。
彼女の歴史はイメリアと共にあり、夫や息子、姉、妹、孫や子孫たちはほとんどが、彼女の手にかかって戦死したりテロにあって死んでいってしまった。

戦史家は「彼女は多くの敵味方の将兵、国民を殺傷し、数多の銀河を滅ぼし守りたかった自分の家族や夫、息子、子孫、祖国を自らの手で破壊した。最強で最も血に飢えた征服者と呼称されても仕方のないおぞましい血生臭い戦歴だ。
だが、彼女自身が望んで行ったわけではない、当時の宇宙情勢、彼女を取り巻く環境がそれを望んだのだ。
彼女は己の力でそのとき、必要だと思ったことを実行したに過ぎない。
彼女の敵は元は自分の祖国だったり、家族だったり、息子だったりと非常に複雑だった。

だが、彼女の元でイメリアは開拓に成功、本国から独立し、内戦があっても国家はより強く結束し、多くの宇宙戦争に参加しつつも、その都度、勝利し、強大になっていった。国民や将兵たちは、彼女を「イメリアの軍神」と呼び絶大な信頼を持って敬った。彼女なくして今のイメリアは存在しえない」と語った。

クリスタは、現在はイメリアの上級軍士官学校の名誉学長を務めており、未来のイメリアの幕僚、参謀、提督を育てる任務についている。３万年たってようやく彼女は本職でもある教師の仕事に就いたともいえる。

「最強で最も血に飢えた征服者」とは裏腹に彼女自身は、非常に温厚な性格の持ち主だったが、強い意志と信念を持つ人物で、クリスタと対面した者は「とても祖国や家族、息子を自らの手で処分したような人物には見えない、このどこにでもいる温厚な女性が、数千万の宇宙戦艦を率いて何百もの銀河を滅ぼし何千兆もの命を奪ったとは想像できない、私は今までこのような人間を見たことがない」と驚愕したという。