一つの巣にいない家族
フクロウillust/66399597
ミナミillust/66387113
ハゲタカillust/66385334
アオイillust/66383366
二人の子供を通して、お互いが嘗て側にいた愛であったことを忘れないでいようとする番。
それとも二人の子供が番を縛り、今でも番でいさせているのか。
今や嘗ての番は同じ巣にはいなかったが
巣は今だ空っぽではない。
・ミナミは当初フクロウの後ろを歩いていた。猛禽の産まれであるフクロウは後ろに立たれると落ち着かないようだ。まるで背後を恐れるかのように振り返るフクロウの姿に、ミナミは恐る恐る、フクロウの隣を歩くために一歩前に踏み出す。
「こっちのほうが良いですか?」ミナミは恐る恐る、笑顔を作り尋ねた。
「ほう、そうだね」 フクロウは安心したように囁いて、ミナミのほうを少し見た。
ミナミはそうして、自分の位置がここであると確認した。
ミナミはいつもより、ぴょんぴょんと軽快に足を運ぶ。
長身の憂いのある美しい人の、その隣を歩く資格があると誇らしく思った。
・アオイはいつも自分一つの肉体では足りないような気がしていた。もともと一つであったもう一方の肉体であるミナミが遠く離れては一つの生命としても堂々としていられない気がする。それでも、ハゲタカはアオイを不完全なものとして廃棄はしなかった。
アオイは、こう思うこともあった。ハゲタカはミナミというものをフクロウに贈りたくて、そうした余りものがアオイであると。そうしてぼうっとしていると、ハゲタカはアオイの頬をつねってくる。
「俺の話を聞いてるか?それともこうしたほうがいいか?・・ほう、君はたいそう私に興味がないと見える」ハゲタカはフクロウの声真似をとてもうまくしながら、アオイの返答を求める。
「ごめんなさい、ハゲタカさん」
「分かればいいんだよ、俺は話相手が欲しいんだから」
アオイは、どうしようもないこの欠けた気持ちも、ハゲタカの側にいることで埋め合わせることが出来ると思った。ハゲタカがどうしようもなく愚かでも、この鳥の側にいるしか出来ないと思った。そうして欠けた場所を埋めようとした。
アオイはこうして自分がハゲタカの側にようとも、ハゲタカが自分の先に別の鳥を見ているのを知っていた。だが、それゆえにアオイはアオイであることが出来た。アオイはただそこにあればいいのだ。自分には、自分がここにいることでハゲタカにフクロウやミナミの存在を忘れないようにさせる役目があるのだと、アオイは自分自身に言い聞かせて勇気付けた。自分が自分であるために、自分の愛するものが、自分ではない者を深く愛していることを信じる必要があった。アオイは自分が本当は何を一番愛そうとしていたのか、そう思うことがとても罪深く思えた。ハゲタカが自分の先に見るものに執着するのを見ながら、自分は自分の片割れを愛そうなどとは思えなかった。ハゲタカの愚かな目に自分を少しでも、映してもらうように、ハゲタカが少しでもアオイ自身を愛そうとするのを信じたいから。アオイはハゲタカへの報復として、服従として、ハゲタカの側にい続けた。。
ミナミillust/66387113
ハゲタカillust/66385334
アオイillust/66383366
二人の子供を通して、お互いが嘗て側にいた愛であったことを忘れないでいようとする番。
それとも二人の子供が番を縛り、今でも番でいさせているのか。
今や嘗ての番は同じ巣にはいなかったが
巣は今だ空っぽではない。
・ミナミは当初フクロウの後ろを歩いていた。猛禽の産まれであるフクロウは後ろに立たれると落ち着かないようだ。まるで背後を恐れるかのように振り返るフクロウの姿に、ミナミは恐る恐る、フクロウの隣を歩くために一歩前に踏み出す。
「こっちのほうが良いですか?」ミナミは恐る恐る、笑顔を作り尋ねた。
「ほう、そうだね」 フクロウは安心したように囁いて、ミナミのほうを少し見た。
ミナミはそうして、自分の位置がここであると確認した。
ミナミはいつもより、ぴょんぴょんと軽快に足を運ぶ。
長身の憂いのある美しい人の、その隣を歩く資格があると誇らしく思った。
・アオイはいつも自分一つの肉体では足りないような気がしていた。もともと一つであったもう一方の肉体であるミナミが遠く離れては一つの生命としても堂々としていられない気がする。それでも、ハゲタカはアオイを不完全なものとして廃棄はしなかった。
アオイは、こう思うこともあった。ハゲタカはミナミというものをフクロウに贈りたくて、そうした余りものがアオイであると。そうしてぼうっとしていると、ハゲタカはアオイの頬をつねってくる。
「俺の話を聞いてるか?それともこうしたほうがいいか?・・ほう、君はたいそう私に興味がないと見える」ハゲタカはフクロウの声真似をとてもうまくしながら、アオイの返答を求める。
「ごめんなさい、ハゲタカさん」
「分かればいいんだよ、俺は話相手が欲しいんだから」
アオイは、どうしようもないこの欠けた気持ちも、ハゲタカの側にいることで埋め合わせることが出来ると思った。ハゲタカがどうしようもなく愚かでも、この鳥の側にいるしか出来ないと思った。そうして欠けた場所を埋めようとした。
アオイはこうして自分がハゲタカの側にようとも、ハゲタカが自分の先に別の鳥を見ているのを知っていた。だが、それゆえにアオイはアオイであることが出来た。アオイはただそこにあればいいのだ。自分には、自分がここにいることでハゲタカにフクロウやミナミの存在を忘れないようにさせる役目があるのだと、アオイは自分自身に言い聞かせて勇気付けた。自分が自分であるために、自分の愛するものが、自分ではない者を深く愛していることを信じる必要があった。アオイは自分が本当は何を一番愛そうとしていたのか、そう思うことがとても罪深く思えた。ハゲタカが自分の先に見るものに執着するのを見ながら、自分は自分の片割れを愛そうなどとは思えなかった。ハゲタカの愚かな目に自分を少しでも、映してもらうように、ハゲタカが少しでもアオイ自身を愛そうとするのを信じたいから。アオイはハゲタカへの報復として、服従として、ハゲタカの側にい続けた。。
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2017-12-23 02:16
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